「京大化学」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…1科目90分、2科目180分)

  • 全体としては2020年度と同程度の難易度であり、難関大化学入試の中ではトップクラスの難度であった。ただし、大問間の難易度差はかなり大きかった。
  • 大問4題構成であるのはこれまでと同じである。ただし、2020年度は理論・無機分野の化学問題I・IIが中問に分かれていたが、2021年度は有機分野の化学問題III・IVが中問に分かれていた。
  • 問題ページ数は18→15に減少したものの、負担感としては2020年度と同程度であった。思考力が必要な内容が多く、時間的な余裕はほとんどなかっただろう。

2021年度入試の特記事項

  • 2020年度に引き続き、難度の高い設問が多かった。
  • 長い問題文を読み解き、高校知識をフル活用して考えさせるような、思考力・応用力が必要な出題が目立った。
  • 無機分野の知識を必要とする問題はほぼなかった。
  • 2020年度は見られなかった論述問題が1題出された(40字以内での説明問題)。
  • これまで毎年数題は出題されていた導出過程を書かせる計算問題は、2021年度は出されなかった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 解答方針が比較的立ちやすい、化学問題I、化学問題III(b)、化学問題IV(a)あたりは、手際よく解答を進め、確実に得点したい。さらに他の大問に含まれる平易な小問は押さえたい。
  • その上で、読解力・思考力が必要な問題でどれだけ正解できたかが合否の分かれ目になったであろう。また、すべての問題を解答するには時間が非常に厳しく、解くべき問題の見極め力もカギを握っていた
  • 化学問題III(a)や化学問題IV(b)の構造決定問題は、有機の実力によってはっきりと得点差が出たのではないだろうか。
  • 化学問題IIで誘導にうまくのって考えることができなかった場合は、ある程度のところで割り切りも必要だったかもしれない。
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大問別のポイント

 化学問題 I  

<理論・無機> 硫酸銅(II)水溶液の電気分解、酸化還元滴定(ヨウ素滴定)、緩衝液

  • 問題文で扱われている内容や登場する物質など、いずれも見慣れたものが多く、2021年度の京大化学の中では最も取り組みやすかっただろう。
  • 問1の空欄補充をとおして手順(1)で起こる反応について理解できるようになっている。そのうえで、京大受験生であれば取り組んだことがあると思われるヨウ素滴定の知識を適用すればよい。
  • 雪崩式に失点しないようにある程度配慮されているので、問6など平易な小問は取りこぼさないようにしたい
  • 問2や問3で反応式を記述する際は、題意に沿って三ヨウ化物イオンで表すことに注意すること。

     化学問題 II  

    <理論> 硫酸に関する電離平衡と反応熱

    • 「化学平衡に関する問題文の誘導に従いながら数式の空欄補充をしていく」という京大化学頻出の形式であるが、熱化学と融合させて考える必要がある点は珍しい。
    • ただし、硫酸の2段階電離と中和にともなう量的関係についての本質的理解が問われており、要求水準は非常に高く時間内で解くのはかなり厳しかったと思われる。
    • 問2以降はほぼすべてが連動している形になっているので、問題文の意図を理解しきれていないと全滅になってしまったかもしれない。

     化学問題 III  

    (a) <有機> リグニンを題材にした有機化合物の構造決定

    • 天然の高分子化合物であるリグニンをテーマにした、有機の構造決定問題。
    • 最初に与えられている複雑な図1で戸惑ってしまったかもしれないが、その後の化合物A〜Eについての実験の説明文だけからでもおおよその構造は決まる。図1から置換基の位置関係のみ読み取れれば大丈夫なので、固執してしまわないようにしたい。
    • 個々の反応自体は見慣れたものが多いと思われるので、構造決定の演習を積み重ねているであろう京大受験生であれば、何とか完答を目指したい

    (b) <有機> バニリンの合成経路の化合物推定

    • 反応条件および生成物の構造式を参考にして、化合物を推定していく必要がある。化合物Iではクメン法、Kではフェノール樹脂あたりをイメージできれば考えやすかっただろう。
    • 問4の量的関係の計算も平易なので、この中問(b)は確実に得点しておくこと。

     化学問題 IV  

    (a) <有機> アスパルテームの合成経路の化合物推定

    • 化学問題III(b)と同様、目的物の合成経路における化合物を決定していく問題である。出発物質のアスパラギン酸の構造も問題で与えられているので、記述に沿って手際よく各化合物を決定していきたい。
    • 酸無水物Xとフェニルアラニンメチルエステルにより2種類の化合物Y・Zが生じる反応では、アスパラギン酸がもつ2つのカルボキシ基に着目する必要がある。
    • 2020年度の[本科]京大コース・化学11月号で、アスパルテームを題材にした有機化学の添削問題を扱っていたので、Z会の教材ですでに構造式に触れていた受講生は本問にも安心して取り組めたであろう。

    (b) <有機> ペプチド由来の構造をもつ有機化合物の構造決定

    • 3種類のアミノ酸からなるペプチドの誘導体に関する構造決定の問題。それぞれの反応は標準的であるものの、ヒスチジンやプロリンなどあまり問題で触れたことがないであろうアミノ酸が扱われており、戸惑ったかもしれない。
    • ニンヒドリン反応の仕組みを押さえられていれば、実験(ウ)からプロリンの含有を推定できる。また、実験(エ)の電気泳動の結果と与えられている化合物Aの分子量の値より、残りのアミノ酸も決定できる。
    • 問4や問5 i)は、ある程度独立した設問として解答できるので、得点しておきたい。
    • 問題文から条件を適切に汲み取る「読解力」「状況把握力」、高校化学の知識をフル活用して考察していく「応用力」、それらを総合して最終的な化合物の構造にたどり着く「思考力」すべてが高度な水準で要求された難度の高い構造決定問題である。問6・問7まで時間内に完全に解き切るのは非常に厳しかっただろう。

     攻略のためのアドバイス

    2021年度の京大化学は、比較的馴染みのある反応や化合物を扱いながらも、長いリード文を正しく読解し知識を応用させて思考する必要がある、難度の高い設問が目立った。ただ、このような出題はかつての「京大化学」らしい出題であり、思考力・読解力といった力を試す内容であるという根本的な特徴は、今後も変わらないと考えられる。

    京大化学を攻略するために、高校化学の内容を完全に理解したうえで、それを応用する問題に意欲的に取り組んでほしい。また、出題範囲の約半分を占める有機化学は重点的に学習し、幅広い知識とその活用力を養成してほしい

    京大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。

    ●要求1● 思考力

    高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力、またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り、合格を手にすることはできない。

    ●要求2● 読解力

    京大化学の大きな一角を占めるのが、空欄補充形式の問題である。また、受験生が目にすることの少ない題材を取り上げ、それを理解した上で解答する問題も出題される。初見の題材であっても、限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に内容を理解する力が要求される。

    要求3● 有機化学分野の幅広い知識と活用力

    京大化学では、出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが、読解や思考の前提となる幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また、天然有機化合物の分野は、基本知識に穴がないように早めに対策をしておくこと。

    対策の進め方

    まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。Z会の通信教育、Z会の教室、Z会の映像などで、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めていこう。

    高校化学の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、Z会の通信教育、Z会の本などで、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。また、●要求3●を満たすため、有機化学の補強も重点的に行っておきたい。

    空欄補充形式の中には数値計算を要するものもあるので、計算力も必要である。そのため、普段の問題演習では、実際に手を動かして計算し、計算自体にしっかり慣れておこう。また、論述対策として、日頃の学習から現象や操作、それらの理由を理解し短い字数でまとめる訓練を積み重ねておこう。

    Z会で京大対策をしよう

    Z会京大化学担当者からのメッセージ

    繰り返しにはなりますが、今年度の京大化学は、長いリード文を正しく読解し知識を応用させて思考する必要がある、難度の高い設問が目立ったセットでした。ただ、難しい問題が多くても、平易な小問は含まれています。これらの小問をミスなく手際よく解き進める得点力も備えている必要がありました。

    読解力・思考力・有機化学の幅広い知識などといった、京大化学攻略に必須の力は、今後も求められることに変わりはありません。Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、対策が遅れがちな天然有機化合物や高分子化合物の範囲も扱いますし、長いリード文をとおして読解力を養う問題も出題しますので、京大化学攻略に必要な力を養うのに最適です。

    また、京大は結果重視の採点のため、自己採点ではついつい単なる答え合わせにとどまりがちですが、Z会の通信教育[本科]「京大コース」では添削指導をとおして結論に至る過程のミスも分析し、得点力を高めます。Z会で学習を積み重ね、京大合格を勝ち取りましょう!

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