「京大理系国語」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

2020年度に比べ現代文はやや易化したが、全体の分量・難易度に大きな変化はなく、京大入試として標準的な難度の出題であった。

2021年度入試の特記事項

  • 例年通り、現代文・現代文・古文の三題の出題。(一)の現代文のみ文理共通の文章からの出題。(理系は一問設問数が少ない)
  • 2017~2020年度同様、(一)での漢字書き取り問題の出題はなかった。
  • (二)は短歌について論じる文章で、理系受験生には馴染みの薄いジャンルかもしれないが、論理展開は明確で読み取りやすい
  • (三)は歌論からの出題だが、和歌は含まれていない文章なので、展開を正確に押さえて逐語訳できればよい

合否の分かれ目はここだ!

(三)の古文は中世の歌論からの出題。歌論は京大頻出のジャンルであり、論理展開が明確な文章なので、しっかり対策してきた受験生であれば、大意をとらえることはそこまで難しくはなかっただろう。
記述解答作成に当たっては、〈傍線部の一字一句に至るまで注意を払い、精密に訳語を選択する力〉が求められる。京大に照準を合わせた問題演習を積んできたかどうかで差がつく出題であった。

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大問別のポイント

 (一):現代文  出典:西谷啓治「忘れ得ぬ言葉」

京大出身の哲学者が、学生時代の友人からの言葉を回想し、人と人の関係性について考察する随筆からの出題。受験生にとっても身近に感じられる文章で、内容は読み取りやすかっただろう。ただ、解答をまとめるにあたっては、各設問で問われていることを押さえ、要素が重複しないように工夫して表現を選ぶ必要があり、高度な記述力が要求される。

  • 問一は解答の中心要素はつかみやすいが、「忘れ得ぬ言葉」という文章のタイトルにもなる表現について問われているので、傍線部周辺だけでなく文章全体に目配りして説明したい。
  • 問二・問三・問四は傍線部周辺の文脈を押さえて解答の骨子を組み立てればよいが、対比関係が明確になるように注意してまとめる必要がある。

傍線部周辺の表現を中心にしながら、文章全体の主題を踏まえて適宜肉付けして解答をまとめる力が問われており、京大らしいオーソドックスな出題であった。京大型の問題演習を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できただろう。

 (二):現代文  出典:岡井隆「韻と律」

現代短歌の表現について論じる歌論からの出題。文学論は理系受験生にとっては読み慣れないジャンルかもしれないが、論理展開は明確で解答にまとめるべきポイントはつかみやすい

  • 問一・問二は、それぞれ傍線部を含む意味段落の論旨をまとめればよい。問一は傍線部の「根拠」の説明が求められていることに留意し、文中の表現を生かしてまとめたい。余計な要素を加えて減点されないように注意する。
  • 問三は、短歌の定型を守りながら自分の表現・詩想を深く追究した斎藤茂吉の作歌について説明する設問であり、文章全体の主題も踏まえて解答を作成できるかで差がつくだろう。

理系受験生にも文学的素養を求める京大らしい文章からの出題だが、記述演習をしっかり積んできた受験生であれば問題なく対応できただろう。

 (三):古文  出典:『正徹物語』

和歌が上達するために必要なことを述べた、室町時代の歌論からの出題。2013~2018年度・2020年度は近世に書かれた文章から、2019年度は平安時代の物語文から、2021年度は室町時代の歌論からと、時代やジャンルを問わず出題されるため、幅広い文章の演習経験を積むことが求められている
また、2021年度は、和歌が含まれない問題文だったが、京大では和歌の出題が頻繁にみられるため、理系であってもしっかりとした古文の対策が必要である。

  • 全体としては、論旨もつかみやすく、大意を読み取るのは難しくない。その分、誤読がないか、各設問での記述の完成度で差がつくだろう。
  • 問一は、「適宜ことばを補いつつ」とあるため、「ここ(の詞)」「かく(は)」の指示語をわかりやすくすることが求められる。古歌=上手の歌、という前提をふまえて、〈この古歌ように”うまく”詠むことはできない〉と補えるかどうかがポイント。最低限、「ここの詞」=〈”古歌”のこの言葉〉と補う/未然形+ば→順接の仮定条件の意/え…まじき→不可能の意は確実に訳出できるようにしておきたい。
  • 問二は、傍線部直前に答えはあるので、解答欄にあわせて、理由の説明となるようにまとめる。
  • 問三は、設問条件である「歌を沙汰ある」の具体化をしつつ、これが「第一の稽古」と言われる理由をまとめる。「本文全体を踏まえて」という条件に戸惑うかもしれないが、問題文では、冒頭の「歌詠みは才覚をおぼゆべからず」という言葉から一貫して〈歌の上達には、歌の心を理解することが必要だ〉と述べられているため、この内容を盛り込めばよい。

 攻略のためのアドバイス

京大理系国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』などで、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力

京大国語では、評論・随筆・小説など、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

要求3● 採点者に自分の考えを伝える力

京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

対策の進め方

受験生の夏までは、まずは土台となる●要求1●および●要求2●を満たすことを目指そう。Z会の講座ではさまざまなジャンルの問題文を出題するので、読解経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう。

その後は、さらに●要求2●および●要求3●に対応する力を磨いていこう。Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、受験生の9月から、より実戦的な京大対応のオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう

入試直前期には、過去問演習に加えて予想問題にも取り組むことが大切だ。本番前の最終調整として、より本番に近い形での演習をするとよい

Z会で京大対策をしよう

Z会京大国語担当者からのメッセージ

現代文は随筆・文学論という出題で、文系・理系の枠内にとどまらず知識・教養の幅を広げてほしいという京大のメッセージが感じられます。理系受験生にとっては読解のハードルが高く感じられるかもしれませんが、京大としては標準的な難度の出題でした。過去問を含め京大型の問題演習を積んでいた受験生であれば、筆者の心情・考えを追い解答にまとめることはそこまで難しくはなかったでしょう。

古文は中世の歌論からの出題。これも京大頻出のジャンルであり、一文一文の論理展開を正確に追う力が問われる出題です。古文の対策を怠らずに演習を積んでいれば、実力を発揮できたはずです。

受験生がなかなか読み慣れないような文章から出題され、さらに広い解答欄に自分なりの言葉でわかりやすく解答をまとめていくことが要求される京大国語では、さまざまな文章の読解経験を積み、作成した解答を第三者に見てもらうことが非常に重要です。

Z会では、長年の入試分析をもとに、本科「京大コース」専科「京大即応演習」特講「過去問添削」など、京大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、京大合格をつかみ取りましよう!

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