Z会の京大コース担当者が、2022年度入試の京大理系国語を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、京大理系国語の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2022年度の「京大理系国語」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
多様な文章ジャンルの読解経験が合否を分ける!
理系受験生にも読解難度の高い多様な文章ジャンルから出題される京大国語。今年度も筆者独自の表現に注意が必要な問題が出題されました。表現のニュアンスをくみ取り、自分の言葉で説明し直す問題演習を積み、どんな出題にも動じない読解力と記述力を身につけることができたかどうかが合否の差を分けます。
合否の分かれ目は?
高度な読解力・記述力が求められる出題
22年度の出題は、芸術家の随筆・小説家の随筆という現代文二題と、鎌倉時代の私家集のセットでした。現代文・古文ともに、問題文の表現が意味するものを丁寧に読解し、自分なりに噛み砕いて解答を作成することが求められます。
合格者・不合格者それぞれの傾向は?
再現答案からは、広い解答欄をなんとか埋めようという姿勢が見てとれました。しかし、文中の表現を切り貼りしただけの解答と、丁寧な読解に基づいて本文の要旨を的確に述べた解答が見られ、解答の精度には如実に差が表れました。合格者の多くは、効率的に時間配分を行い各大問にしっかりと取り組むことができていましたが、不合格者の中には一つの大問に時間を割きすぎてしまうなど、全体を見通した解答ができなかった人もいたようです。
合否を分けた一問
古文は、鎌倉時代の私家集からの出題でした。和歌に関連した出題は京大頻出であり、引き歌として提示されている和歌の解釈も難解なものではありません。また、京大理系国語の古文ではリード文から登場人物の関係や場面状況を把握することが重要です。今回の問題文も、本文だけではなくリード文も丁寧に読み込んで素直に読み進めれば、話の方向性を見失うことなく解答ができるはずです。京大に照準を合わせた演習を十分に積んでいたかどうかで差がついたと言えるでしょう。
⇩
差がつく一問は
≪大問三≫
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
一見、解答欄をしっかり埋めることができていて、点数がしっかりとれそうな答案に見えます。しかし、Z会が採点した結果は、30点中13点。Z会が設定した目標点である20点には届きませんでした。

それでは、この答案には、「どんな要素が足りなかったのか」「どういう対策をしていれば目標点に届いたのか」を詳しく見ていきましょう。
目標点とのギャップをどう埋める?
解答欄はしっかりと埋められており、問題文の大意も押さえることができている答案です。しかしながら個々の解答内容を見ると、細部で訳出ミスがあったり、言葉を補うべきところに補えていなかったりした結果、減点されています。問一の説明問題は、助動詞の訳出ミスがあります。多義語「あはれ」は場面状況を踏まえ、より適切な訳語をあてられるとさらに得点を伸ばすことができたはずです。問二・三の現代語訳は、大筋はつかんでいますが、「適宜言葉を補いつつ」などの設問条件を踏まえ、「心には近き」や「人」が表す対象まで訳に含めたかったところです。細部にまで意識を向け、問題文全体の内容を踏まえ説明を補うことができれば、合格点に届く解答となったでしょう。
受験生全体の解答傾向は?
Z会で作成した採点基準をもとに再現答案を採点してみると、最も得点差が表れたのは問三の現代語訳でした。「指示内容を明らかにしつつ」という設問要求に従い、リード文と注にある和歌の両方の内容を踏まえて、指示語の指す内容を正確に押さえられている答案は、不合格者ではあまり多くありませんでした。他の小問においても、〈死別した恋人と過ごした日々の回想〉という大筋を理解するだけではなく、場面状況を踏まえて適切な言葉を補いながら説明する姿勢が身についているかどうかで差がつきました。
全体として、
- 傍線部の助詞や多義語といった細部も漏らさずに丁寧に解釈・訳出する。
- リード文も含めた問題文全体の趣旨を踏まえ、場面状況を意識して言葉を補う。
- 解答が出題者の意図や設問要求に沿った自然な文になるように、まとめ方を工夫する。
といったポイントを意識できたかどうかが、実際の答案にも得点差として表れていました。
Z会でできる京大対策・ご案内
ほかの科目の「差がつく一問」を見る