「貢献できるならやってみよう」が未来を拓く第一歩(後編)_2016.3

「物理的・感覚的に遠い場所へ移動することで、違いを直接的に感じ、課題を発見する力が養われる」と話す株式会社たからのやま・奥田浩美さん。では、変化の激しい、多様な価値があふれる時代を生き抜くには、どんな心持ちが必要となるのでしょうか。引き続き、お話を伺います。

 

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今まであった人から「100人ポートフォリオ」をつくる

――奥田さんが実践される「物理的・感覚的に遠い場所への移動」を、子どもたちの学校生活に置き換えると、どんな形態があると思いますか?

場所的な移動だけでなく、小さなコミュニティーとの関係性でもそれに近いことが言えると思います。人が人との関係性、つまり「人との出会い」で得られたことは、自らを表す「ポートフォリオ(編集部注:書類ケース。そこから転じて「自らの保有能力を示す作品集」)」のようなものです。

私もよく「目標にしている人は誰?」とか「ロールモデル(模範になる人物)は誰?」とか聞かれるのですが、誰か特定の1人がいるわけではなく、「◯◯の部分は~~~さん」「■■■の部分は◎◎◎さん」など、さまざまな人から影響を受けています。

「出会いから自分が学ぶべき点をポートフォリオにまとめることで、新しい視点が生まれる」と奥田さんは話す(取材をもとに編集部作成)
「出会いから自分が学ぶべき点をポートフォリオにまとめることで、新しい視点が生まれる」と奥田さんは話す(取材をもとに編集部作成)

日々の生活で会う人からはたくさんのことを学ぼうという姿勢を持ち、これまでの関係性から得たものすごい人数からの学びで、自分が形成されているんです。それは毎日同じコミュニティーにいて、同じ人の同じ側面しか見ていなかったら、決してできませんよね。私は「今までに出会った1,000人分のいいところを挙げてみてください」といわれたら、できる自信がありますよ!

その意味では、たとえば子どもたちに「両親、友人、先生、1年間で出会った人たちのなかで100人、自分がすごいと思ったところを挙げさせる」、そんな「100人ポートフォリオ」づくりをやらせてみても、おもしろいのではないでしょうか。

――「未来を拓く力」、いわゆる「21世紀に求められる資質・能力」もそうした「偏りのないコミュニティー」や「多様な人間関係」から生まれるのかもしれません。

私は「将来、今ある職業がなくなる」ということは、とてもラッキーなことだと捉えています。短期間にそれだけ次々に新しい仕事が生まれるなんて、めったにないチャンスだからです。それだけ、失敗してもすぐに違う職業にチャレンジできる機会があるということなんです。

また、たとえロボットに仕事を奪われる時代が来ても、私はそこで生き残る力を100%身につけていると感じています。なぜか。それは、自分が「違和感があったり、嫌なことが現れたときの対処法を知っている」ところから出てきています。

激しい時代変化のなかで生き残るには、違和感があるものを受け入れ、変化に強い人間になることが大事。「今までこうだったから」と変化を嫌う人は、どんどん時代に取り残されてしまうでしょう。

 

貢献したい気持ちが、社会の最大価値になっていく

――ほかに、奥田さんが必要と感じる「未来を拓く力」にはどんなスキルが必要だと思いますか?

「何かに貢献したいと思う気持ち」です。

これまで、今までやってきたことを肯定する価値基準は「お金」でした。しかしITの進化によって「誰が何をやり、どんなふうに世界を変えた」というようなことが可視化されたことで、「何かに貢献している」ということが価値を持つようになっています。人々はその姿に共感しリスペクトするし、ビジネスや経済的な価値にもつながっていきます。

「暮らしのロボット共創プロジェクト」で、介護や開発の当事者を集めてワークショップを行っている様子(写真提供:株式会社たからのやま)
「暮らしのロボット共創プロジェクト」で、介護や開発の当事者を集めてワークショップを行っている様子(写真提供:株式会社たからのやま)

これからは、お金を持っているだけではダメで、ビジョンを持った人に「こんな社会をつくってくださいね」とお金を循環させてしまう人にこそ、ますます人の共感が集まるようになっていくと思うし、世界を見れば、すでにそうした方向に価値観が移り変わりつつあると感じます。

ならば、小さな頃から、自分だけで独り占めにさせず、「人のために何かをする」「人とシェアする」といった気持ちを養うことが、学力以上に大事なことになっていくのではないでしょうか。

――教育のなかで「人のために何かをする」力を育成するためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。

誰かが押しつけるものではないと思います。たとえば学校で「みんなで清掃活動をしましょう」といっても“貢献したいと思う気持ち”は育たない。自分自身が生活のなかで「こういうものがあったらいいな」と思えることが、そうした活動につながるものですから。

 

私の場合、父親が中学校教諭で、教育が行き渡っていなかったり、みんなが行きたがらなかったりするところに赴任したがる性分の人でした。希望地も白紙で出すほどで(笑)。だから「貢献できることはやってみよう」という空気感は、常に家族のなかにありましたし、家庭で育んでいけるものでもあると思います。

――最後に、中高生・保護者に向けたメッセージをお願いします。

私は子どもに「無理して夢は持たなくていい」と言っています。

持とうとして持てるものではなく、たくさん現れてきた選択肢のなかで、腹落ちし、「ワクワクすること」だけが結果的に夢になる。だから難しいことは考えず、目の前にあることをどんどんチャンレンジしてほしいです。ワクワクすることだけにしぼって考えれば、必ずやりたいことが見つかるはず。見つからなくても、出会えるまでやればいいんです。

プロフィール
奥田 浩美(おくだ・ひろみ)
株式会社ウィズグループ/株式会社たからのやま 代表取締役

インド国立ボンベイ大学(現州立ムンバイ大学)大学院社会福祉課程(MSW) 修了。1991 年にIT に特化したカンファレンスサポート事業を起業し、数多くのIT プライベートショーの日本進出を支える。2001 年に株式会社ウィズグループを設立。2013 年に徳島県の過疎地に「株式会社たからのやま」を創業。IT 製品共創開発事業を開始。開発現場からもっとも見えにくい「社会課題」をIT 製品開発に繋げる仕組みづくりに取り組んでいる。
情報処理推進機構(IPA) の未踏IT 人材発掘・育成事業の審査委員、「IT 人材白書」委員。著書に「人生は見切り発車でうまくいく(総合法令出版)」「会社を辞めないという選択(日経BP)」、「ワクワクすることだけ、やればいい!(PHP 研究所)」。

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