2021年度入試からはじまる新しい入試。早稲田大学は積極的な入試改革に取り組んでいます。早稲田大学の動きは、他の難関私立大学へも大きな影響を与える可能性が高いため、早稲田志望者だけでなく、難関私立大学志望者・保護者に是非知ってもらいたい内容となっています。今回は特徴的な変更点のまとめと、何をすべきかをお伝えします。
※本記事は、Z会の最先端の学び情報サイト『マナビシフト for the future』の記事を 最新の情報に更新した記事です。
一般入試の大きな変更点
【全学部共通】
Web 出願時に、「主体性」「多様性」「協働性」に関する経験を記入。
※ただし、得点化はしない。
【政治経済学部】(2020年3月31日公表)
一般入試について、従来の方式を取りやめ、2021 年度⼊試より「⼤学⼊学共通テスト」、「学部独自試験」の合計点により選抜する⽅式に変更。
【大学入学共通テスト(100点)】
以下4科目を25点ずつに換算。
(1)外国語(いずれか1つを選択)
:英語(リスニングを含む)・独語・仏語
(2)国語
(3)数学Ⅰ・数学A
(4) 選択科目(いずれか1つを選択)
:地理歴史「世界史B」「日本史B」「地理B」から1科目
・公民「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」から1科目
・数学「数学Ⅱ・数学B」
・理科「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から2科目、あるいは「物理」「化学」「生物」「地学」から1科目
【学部独自試験(100点)】
日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述解答を含むものとする(英語4技能のうち、「書く」能力を問う問題も設ける予定)。また、従来の一般入試における「英語」や「国語」の試験とは異なるため、科目名称は「総合問題」とし、試験時間は120分間とする。
※2019年11月の『大学入試英語成績提供システム』の稼働延期に伴い、当初予定されていた内容から変更になっています。「英語外部検定試験の利用の中止」「学部独自試験は試験時間90分を120分に変更、配点を85点から100点に変更」となっていますのでご注意ください。
<参考:2020年度の入試科目・配点>
外国語(90点) | 次のうちから1つを選択。 (1) 英語 (2) ドイツ語 (3) フランス語 ※大学入試センター試験外国語配点(200点)を政治経済学部の外国語配点(90点)に調整して利用。 |
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国語(70点) | 国語総合、現代文B、古典B |
地歴または数学(70点) | 次のうちから1つを選択 (1) 世界史B (2) 日本史B (3) 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(「確率分布と統計的な推測」を除く) |
【国際教養学部】(2019年12月26日公表)
一般入試について、従来の方式を取りやめ、2021 年度⼊試より「⼤学⼊学共通テスト」、「学部独自試験(科目:外国語(英語))」、「英語外部検定試験(加点方式)」の合計点により選抜する⽅式に変更。
【大学入学共通テスト(100点)】
以下2科目を50点ずつに換算。
(1)国語
(2) 選択科目(いずれか1つを選択)
:地理歴史「世界史B」「日本史B」「地理B」
・数学「数学I・数学A」「数学II・数学B」
・理科「物理」「化学」「生物」「地学」
【学部独自試験(80点)】
Reading(90分)・Writing(60分)
【英語外部検定試験(20点満点)】
スコア提出者に加点。
英検1級・TOEFL®iBT95以上・IELTS7.0以上(20点)
英検準1級・TOEFL®iBT72~94・IELTS5.5~6.5(14点)
英検2級・TOEFL®iBT42~71・IELTS4.0~5.0(7点)
英検準2級以下・TOEFL®iBT41以下・IELTS3.5以下(0点) ※未提出出願可
<参考:2020年度の入試科目・配点>
外国語(90点) | コミュニケーション英語Ⅰ、コミュニケーション英語Ⅱ、コミュニケーション英語Ⅲ、英語表現Ⅰ、英語表現Ⅱ |
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国語(50点) | 国語総合、現代文B、古典B |
地歴または数学(50点) | 次のうちから1つを選択 (1) 世界史B (2) 日本史B (3) 数学<数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(「確率分布と統計的な推測」を除く)> |
英語4技能テスト(15点) | 英検1級・TOEFL*iBT95以上(15点)、英検準1級・TOEFL*iBT72~94(10点)、英検2級・TOEFL*iBT42~71(5点)、英検準2級以下・TOEFL*iBT41以下(0点)※未提出出願可 |
【社会科学部・人間科学部】
一般入試の選択科目を変更。2020年度以前は、外国語・国語・地歴公民(公民は政治・経済)または数学だったが、2021年度は外国語・国語・地歴または数学に変更。(公民:政治経済の廃止)
【スポーツ科学部】
一般入試およびセンター試験利用入試を再編成。詳細は下記参照。
変更点解説
【全学部共通】
全学部で「主体性」「多様性」「協働性」に関する記述を自ら出願時に行う必要があります。調査書のように学校の先生が書くのではなく、受験者本人が記載する必要があります。また、得点化されないとのことでしたが、今後の詳細についての記載がなかったので、早稲田大学入学センターに問い合わせたところ、以下の回答を得ることができました。
入試に際しての得点化の活用については入力された内容を確認したうえで今後検討する予定です。当面の間は学生調査データの統計および入学後の教育・指導などに活用します。
今後得点化に向けての検討が行われるようですので、2022年度入試以降に受験される方はこういった力が得点化される可能性があるということを意識する必要があります。
【政治経済学部】
大きな変更点としてまず挙げられるのは、私立文系にも関わらず数学が必須で課されるということではないでしょうか。200点中25点で全体の12.5%ということは一般的なセンター試験私立文系型の古文の配点500点中50点の10%よりも全体に占める割合が多くなります。つまり、数学を勉強せずに入試を突破するのがかなり厳しくなります。2017年度入試では政治経済学部の選択科目で数学を選択している方は38.3%の2,584名おり、他の学部に比べると数学の選択率が高いのですが、数学での受験を避けようと考える受験者に影響を与える大きな変更点だと言えます。
慶應義塾大学も経済学部・商学部では、もともと数学を選択科目にした入試方式の定員数が多いため、早慶の経済学部・商学部系を第一志望に考えている方は数学を学習する必要性が高まりました。一方で政治学科がある慶應義塾大学法学部では英語・地歴・小論文が受験科目となっており、「政治」を学びたい早慶併願者は数学・地歴の両方を受験科目で必ず課されることになります。(慶應義塾大学の受験情報は2020年度入試のものです)
中学生・高校1・2年生は何をすべき?
(1)「主体性」「多様性」「協働性」
「主体性」「多様性」「協働性」が得点化されないからといって、自分が進学するかもしれない大学の提出書類に適当なことを書くわけにはいきません。また、高校3年生になって提出書類の準備をゼロから始めようとしても、受験勉強に追われている頃にとりかかると大きな負担になってしまいます。そうならないように、中学~高2の間に受験勉強以外の活動を主体的に行う必要があります。
(2)数学の必修化
こうした受験科目の多様化は多くの問題をはらんでいます。たとえば学校のクラス分けです。多くの進学校では国立理系クラス・国立文系クラス・私立文系クラスのように志望校の分類別でクラス分けが行われ、受験に必要な科目のみ勉強するような仕組みになっています。そこで、私立文系クラスでは英語・国語・地歴の3教科を学習することが多く、数学を勉強できたとしても数学IAのみというクラスはなかなか存在しないのが現状です。
<一般的な文系のクラス分け例>
このようにどちらのクラスに属しても過不足なく勉強することができなくなります。回避方法としては以下の2つです。
1:第一志望を国公立にする
本来の早稲田大学の狙いはこちらだと思われます。数学や理科も学び、幅広い教養のある人を入学させたいという思いがあるのではないでしょうか。
2:数学I・Aを独学で進める
受験学年になってあわてないようにするためにも、通常の進度の学校で数学I・Aを学ぶ高校1年生のうちに、学習を進めておくことが大切です。
早稲田大学の入試改革から見えること
早稲田大学の入試改革は突然湧いて出てきた入試改革ではないはずです。今までの高大接続・大学入試改革の議論を踏まえており、東大・京大の一般入試や難関大学のAO・推薦入試などで既に求められている力でもあります。このような一部の受験生にしか関係がないと思われていた入試形式に、私立大学である早稲田大学の一般入試が足を踏み入れたことにより、私立大学でも入試改革が加速するはずです。
何よりも、この入試改革の意図は「受験で閉じてしまう知識・技能ではなく、社会で活躍できるものを」というところにあります。入試で課されるかどうかで学ぶ内容を選ぶのではなく、これからの社会で必要とされる力を身につけるために何を学ぶのか、ということを、今回の早稲田大学の入試変更をきっかけとして考えていただければと思います。
更新日:2020/06/02