東大生たちと中学Z会員の違いとは?~データで見る新しい学力~_2017.7

東大生たちと中学Z会員の違いとは?

大学入試までに「つけておきたい姿勢」「失ってはいけない姿勢」について、基盤学力総合研究所「行動能力・興味関心セルフチェック」を受験した中学生と大学生の結果を比較しながら、基盤学力研究所主任の瀬戸裕一郎が解説します。

まずは図1と図2のレーダーチャートを見てください。

グラフ

このデータは、基盤学力総合研究所が提供している「行動能力・興味関心セルフチェック」を2017年4月に受験した、次の属性の受験者の集計データです。
属性A Z会の通信教育中学コースを受講している中学生の結果
属性B 今春東京大学または京都大学に一般入試で合格した大学生の結果
さて、どちらの線がABにあてはまるか、わかりますか?
正解は、Aが青色の線、Bが赤色の線なのです。

 

◆「行動能力・興味関心セルフチェック」が測定するもの

まず、このレーダーチャートを引用することで、属性ABのどちらが人間として優れているのかなどと論ずるのは今回の目的ではありません。この点は誤解しないでください。発達段階に応じて、評価が高くなる項目と、低くなる項目があるのは当然のことです。ましてこのセルフチェックは、人間としての優劣を測定するためのアセスメントテストではありません。しかし、この結果から見えてくることもあるのです。今回はこの結果をふまえて、「大学入試までに必要な資質・能力」をテーマに解説していきたいと思います。
「行動能力・興味関心セルフチェック」は、全160問の質問に対し、どの程度あてはまるかを回答することで、その人の行動に対する意識や、自己実現に至るプロセスの強さを測定するものです。キャリア理論を専門とするグループによって開発され、今年度よりリリースが開始されました。
図1と図2をご覧いただければお分かりかと思いますが、このセルフチェックで測定されるのは、大きく「集団適応力」と「自己実現力」の2点です。「集団適応力」では「責任感・規律性」「積極性・主体性」「協調性」「コミュニケーション力」「柔軟性」「トラブル解決力」の6項目、「自己実現力」では「自己分析行動」「自己理解度」「達成志向」「成長意欲」「計画・実行力」「評価・改善力」の6項目が測定されます。公正な測定を期するために、受験中はどの質問でどのような項目を測定しているのかがわからない形になっています。
参考までに、自分自身が質問に回答することで診断結果が得られるこのようなアセスメントは、セルフアセスメントと呼ばれます。アセスメントの種類や目的にもよりますが、個人のキャリアに関するセルフアセスメントの信頼性は、概ね6割~7割と言われています。

 

◆東大・京大に合格した学生が高かった項目はどれか?

では、比較に入ります。中学生と大学入学者の結果を比較したときに、差のついた上位3項目は、図3のようになりました。

表

最も開きが見られたのは、「トラブル解決力」(4.2ポイント)です。中学生までの間は、まだ学校生活が中心の親密圏、つまり仲のよい友達どうしの人間関係が中心と言えるでしょう。しかし、学年が上がり、自分の世界が広がっていくことで、多様な人と多様な活動を行う機会が増えていきます。この項目の差が表すのは、中学から大学入学に至るまでの<活動の経験値>と言えそうです。
逆に言えば、困難のつきまとう可能性がある活動にこそ、「トラブル解決力」を涵養する土壌がある、とも言えるのではないでしょうか。学外の活動や部活動など、集団での活動において困難を克服する経験が多いほど、未知の困難に冷静に対処する力は身につくはずです。
2位の「自己分析行動」(2.9ポイント)についても言及しておきましょう。中学生のうちは、まだ自らの将来については漠然としている人がほとんどでしょう。しかし、大学への進学が近づくにしたがって、文系・理系といった大枠の括りにとどまらない<自分が追究したい専門分野・領域>を選択することが必要になります。このときに最も大切なことは、自分自身の特性、強み弱みにじっくりと目を向けてみることです。客観的に自分を理解する力は、大人になるにしたがい「自らの行動の指針」に結びつきます。自分を生かすも殺すも、自分次第なのです。
ときには教科の勉強を離れて、すっきりした頭で「自分はどんなことが好きなのだろう?」「自分は30歳になったらどんなことをしているかな?」などと、自分自身に向き合う時間を作ってみてください。まだ見えない自分を発見することにつながるはずです。

 

 

◆中学生のほうが高かった項目はどれか?

中学生のほうが大学入学者よりも高い項目は、全12項目のうち実に8つを占めています。このことは、これからの大学入試のありかたについての重要な示唆を含んでいると捉えることができます。まずは図4で、差のついた上位3項目を見てください。

表

最も差のついたのが「積極性・主体性」(5.5ポイント)というのは興味深いところです。先ほど「トラブル解決力」について解説した内容とも少し重複しますが、世界が大きく広がるにしたがい、期待される「積極性・主体性」も大きいものになるのは当然のことです。重要なのは、中学生のときの「積極的な姿勢」「主体的な姿勢」を、世界が広がってからも持ち続けること、と解釈することができます。
この点については、同じ属性B(大学入学者)のうち、「課題発見・解決能力テスト」を受験した人の結果と併せて考えてみましょう。図5は、「課題発見・解決能力テスト」で測定される10項目について、大学入学者の平均値を示したものです。

表

「論点設定力」や「論理構築力」、いわゆるリテラシー能力に分類される「読解力」や「記述力」については非常に高い評価になっている一方で、「情報収集力」や「多様性受容能力」といった項目の評価が低いことがわかります。ここから垣間見ることができるのは、「ある程度正解や方向性のはっきりしている測定項目」については評価が高い一方で、積極的な行動や他者意見の受容度には課題が見られる大学入学者の像でしょう。図4には掲載していませんが、実は「協調性」についても中学生のほうが2.3ポイント高く、この結果も併せて解釈すると、二つの試験の評価が連動していることが読み取れます。すなわち、大学入学者は「自己意識も低く」「実際のパフォーマンスもやはり低い」という傾向です。

 

◆これからの大学入試で求められる資質・能力

「積極性・主体性」「協調性」を発揮できることの重要性というのは、実は今まさに検討されている大学入試改革が重視する点と合致しているのです。新しい大学入試で選抜したいのは、新しい知識や価値、考え方を生み出す能力を備えた人物です。では、新しい知識や価値、考え方を生み出すのに必要なことは何か? その一つの解が、「コラボレーション」に求められています。コラボレーションとは、他者と協調すること。まさに「新しい学力」の根幹となる部分です。いま話題となっている大学入試改革の内容は、現行のペーパーテストのみでは測ることのできない「積極性・主体性」「協調性」を兼ね備えた人間を選抜したいという意向の表れ、と言うことができるでしょう。
寺山修二は「書を捨てよ、街へ出よう」という作品を残しました。「書」すなわち「教養」は、人間の土台となる非常に大切な要素です。しかし、「書」を読み机上の空間で終わるのではなく、「街へ出る」、すなわち「書」をもとに、より広い世界へと飛び出していけること、これからの社会で生きる若者には、そういった資質・能力が求められているのです。

 

◆「行動能力・興味関心セルフチェック」を受けてみよう!

基盤学力総合研究所では、これからの時代に求められる集団適応力や自己実現力が測定できる「行動能力・興味関心セルフチェック」をリリースしています。現在どれくらいのレベルに達しているのか、まずは受験して確認してみることをおすすめします。
基盤学力アセスメントシリーズ『LIPHARE』「行動能力・興味関心セルフチェック」

 

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