小論文の観点から見た大学入試の変化_2019.9

2020年以降の大学入試改革では、従来のペーパー型学力試験だけではなく、受験者の「社会への問題意識」「問題解決への主体性」「学問への探究心」「コミュニケーションスキル・協働性」「課題解決能力」など、多面的・総合的な評価が可能な試験の導入が加速します。これは、これからの時代に社会に出て生きていくために必要な【「確かな学力・豊かな人間性」をもって「解が一つではない」複雑な課題を解決するための力】がより一層求められるようになるからです。

今回は、「新大学入試」では「人物の多面的・総合的な評価」として用いられる小論文について、Z会の通信教育中高事業本部 高校・一貫指導課文系担当 中谷祐介が質問回答形式でお話します。

 

<質問>
2020年以降、従来の教科学力を問う選抜試験だけではなく、小論文やディスカッション、面接などを通じた選抜試験の方法も拡大していくよう大学入試が変わっていきます。この変化を、「小論文担当者」としてはどのようにとらえていますか。

<回答>
大学入試改革の目的の一つに、従来の教科学力型の入試で多く問われる、「あらかじめ答えが決められている問い」だけではなく、「答え(解決策)が一つに定まらない問い」に対する対応力が身についているか、を測ることがあります。前者のタイプの問いであれば、極端に言えば「解き方」さえわかれば、自分ひとりの力で誰でも同じ「模範解答」にたどり着くことができます。しかし、後者のタイプの問いの場合はそうはいきません。問いに対する答えを考えるためには、何が問われているのかについてしっかりと分析したうえで、どのような解決策が考えられ、その中でどれが最適かを判断し、論理的な説得力を持って自身の意見を述べることが求められます。これらはまさに、小論文においてこれまでも問われていた内容といえます。また、小論文の場合は「課題解決法の提案」までを説明するのが基本ですが、そこからさらに一歩踏み込んで、「提案」するだけでなく、実際に解決に向けた行動力や意欲、他者と協働する力も判断する手段として、ディスカッションや面接といったコミュニケーション力を問う試験形態も増えてきているのだと思います。

 

<質問>
なぜ、大学入試が、「答え(解決策)が一つに定まらない問いに対する対応力」や、「課題解決に向けた行動力」を測る方向に変化してきているのですか?

<回答>
端的に言えば、社会のあり方が複雑になり、課題のほとんどが「答え(解決策)が一つに定まらない」ものであり、解決にあたっては「他者とコミュニケーションをしながら取り組む」必要があるからでしょう。
2016年3月に行われた高大接続システム改革会議の最終報告では、今回の教育改革全体における検討の背景・目的として【新たな時代に向けて国内外に大きな社会変動が起こっている中、多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力が重要であり、知識の量だけでなく、混とんとした状況の中に問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質・能力が一層重要になる】と述べられています。社会のあり方が変動し複雑なものになるなかで、問題のほとんどが「答え(解決策)が一つに定まらない」ものとなり、その解決にあたっては「多様な人々と協力しながら」「主体性をもって」取り組む必要があるために、時代において求められる力を測れるよう、大学入試も変化しているのだと言うことができます。
企業を例に挙げます。現代ではモノがあふれているので、消費者のニーズも複雑化しています。そのため、何を価値として提供することが顧客のニーズに沿うのかを模索しながら新しい製品・サービスを開発することが求められます。このような市場のあり方に応えるために、現在の多くの企業では、特定の知識・技能を持つ人だけが集まって何かを開発するのではなく、さまざまな得意分野を持つ人が集まり、互いに知恵を出し合いながら、まだ世の中にない製品・サービスを生み出しています。そのような場では、ただ単に自分の専門的な知識を生かすだけでは意味がありません。自分の考えを他者に伝えるだけではなく、ほかの人の意見にも耳を傾け、良いと思える意見を取り入れる対応力や、自分の分野の知識と組み合わせて提案する活動を通じて、より良い価値を生み出そうとする行動力が求められます。こういった社会で活躍できる人材を育成するために、大学入学選抜の段階から、対応力・行動力に優れた人材を求める傾向が増えているのだと考えられます。

 

<質問>
大学入試の変化においては、「学力」以外にも「意欲・豊かな人間性」を問う方向にシフトしてきており、小論文をはじめとした教科学力以外の力を問う選抜方式の拡大もその一つと言われています。この点について、どのように考えていますか。

<回答>
先に挙げた、社会で活躍する人物像として、コミュニケーション力や他者と協働するための人間性が求められるようになっていることも一つですが、もう一つ、大学が入試選抜において抱えていた問題を解決したいという考えもあると思います。

従来の教科学力を問う大学入試でも、受験生の知識や、その学力を得るに至った勤勉さなどは測ることができていました。しかしながら、例えば法学部と文学部で試験科目がほとんど変わらない大学が多いように、教科試験では「なぜその大学・学部を受験したいのか」「大学入学後、どのようなことを学びたいのか」「将来に向けてどのようなキャリアプランを描いているのか」まではみることができません。その結果、極端な例でいえば、学部・分野の内容を学ぶために、高校生のうちに身につけておくべき専門的な知識事項を知らない学生が入学してきている、という状況も生じていました。このような課題を解決するために、大学進学前から、大学で学びたい事柄に対する意欲や目的意識を問える入試形式を増やしていきたいという意図があるのだと思います。
一例として、早稲田大学では、2021年度の入試から、一般入試において「出願時に、「主体性」「多様性」「協働性」に関する経験」を記載することを求めています。ここでの内容がどの程度、実際の入試選抜に影響するのかは現時点ではまだわかりませんが、「記入した内容は、入学後の学部での教育の参考資料として活用します」と告知されており、高校生までの経験と、大学進学後に学ぶ事柄をしっかりとリンクさせることができている生徒を求めているといえると思います。

 

 

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