次期学習指導要領案から「学校でのプログラミング教育」について考える(1)_2017.2

次期学習指導要領案から「学校でのプログラミング教育」について考える

2016年の末に発表された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)」に引き続き、2017年2月14日には実際の学習指導要領の案が発表されました。答申と学習指導要領案から、次期学習指導要領で「プログラミング教育」がどのように行われていくのかを考えてみましょう。今回はまず、中央教育審議会や文部科学省の考える「プログラミング教育の姿」について探ります。

 

◆56回と4回

2016年末の答申には、「プログラミング」という言葉が56回登場しました(索引まで含めれば58回)。同じく注目されてきた「アクティブ・ラーニング」が24回、「グローバル」が45回ですから、次期指導要領でいかに「プログラミング教育」を充実させようとしているのかが読み取れます。しかし今回発表された指導要領案では、小学校では4回、中学校では2回のみの登場です。次期指導要領案に関する報道でも、「聖徳太子」や「鎖国」の話題ばかりでプログラミングへの言及はほとんどありません。次期指導要領でプログラミング教育は取り下げられてしまったのでしょうか。

 

◆第1章総則の第3の1の(3)のイ

小学校の指導要領案では、まず「第1章総則の第3の1の(3)のイ」で

児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動

を計画的に実施するよう定め、理科の節と「総合的な学習の時間」の章で「プログラミング」について触れています。また、同じく第1章では、「特に必要がある場合には」「目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童の負担過重となったりすること」がない範囲で、「示していない内容」や示されている「内容の範囲や程度」を超えたものを扱うことができる、としています。学校での指導のガイドラインである指導要領に「プログラミング」という文言が加えられたこと、しかも「総則」に加えられたということは、実は大きなものだといえます。この指導要領が正式なものとなったときには、文部科学省からは正式な指導要領に加えて「指導要領解説」が発表されます。こちらでは授業の進め方や教材の例が示されますので、「解説」にはプログラミング教育についてのさらなる具体例が記載されることになるでしょう。

 

◆「プログラミング」とは何か

指導要領案には「コンピュータに意図した処理を行わせる」との記載もあるため、一見するとコーディングに言及しているようにも感じられます。しかしここはもう一度答申に戻り、意図されている「プログラミング」がどのようなものなのかを考えてみましょう。

答申では、「教科等を越えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力」の「情報活用能力の育成」の項で次のように述べられています。

将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」などを育むプログラミング教育の実施を、子供たちの生活や教科等の学習と関連付けつつ、発達の段階に応じて位置付けていくことが求められる。その際、小・中・高等学校を見通した学びの過程の中で、「主体的・対話的で深い学び」の実現に資するプログラミング教育とすることが重要である。

「プログラミング的思考」には注がつけられ、改めてこの言葉を定義しています。

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力のこと。

指導要領案では「コンピュータに意図した処理を行わせる」と「コンピュータ」に限定していますが、もともとは「自分が意図する一連の活動を実現」するため論理的思考が「プログラミング」に求められていたものです。今回はあくまでも指導要領「案」ですので、パブリックコメントを経てこの部分がどう変化するのか注目しています。

 

◆機器の操作でも、全てを機器に任せることでもない

それでは、学校現場では具体的にどのようにプログラミング教育が実施されるのでしょうか。最終的な文部科学省の意図は「解説」を待たねばなりませんが、まずは答申に戻って考えてみましょう。

例えば、音楽づくりの学習の中で、プログラミングを体験することなどが考えられる。その際、音楽の学びの本質に照らして適切に位置付けられるよう、機器の操作に傾斜した学習にならないよう留意するとともに、つくった音楽を実際に自分の声や音で表すことを大切にすることが重要である。

ここで注目したいのは「機器の操作に傾斜した学習にならないよう留意する」という点と、「つくった音楽を実際に自分の声や音で表すことを大切にする」という点です。あくまでもプログラミングは「手段」でしかありません。当然、そこに付随する機器も、手段を実現するための道具に過ぎません。このことは指導要領案でも、「与えた条件に応じて動作していることを考察し、更に条件を変えることにより、動作が変化することについて考える場面で取り扱う」(理科)、「プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること」(総合的な学習の時間)との文言に反映されています。

 

◆高校の『情報 I』

最後に、高等学校の必修科目『情報 I』に触れておきましょう。今回は「高校指導要領案」は発表されていませんが、答申では高等学校の教科「情報」でもプログラミングを扱うことが適当である、とされています。

「情報 I」においては、プログラミング及びモデル化とシミュレーション、ネットワーク(関連して情報セキュリティを扱う)とデータベースの基礎といった基本的な情報技術と情報を扱う方法とを扱うとともに、情報コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザインを扱い、さらに、この科目の導入として、情報モラルを身に付けさせ情報社会と人間との関わりについて考えさせることとして、内容を構成することが適当である。

現行の指導要領では、「選択必修」(どちらか一方は必ず選択しなければならない)として『社会と情報』『情報の科学』という2つの科目が設定されています。とはいうものの、8割の高校が広く「情報リテラシー」を扱う『社会と情報』のみを履修させており、プログラミングを含めた「情報」の数理的な内容を扱う『情報の科学』を学ぶ高校生は少数派です。「プログラミング」に一切触れないで高校を卒業している高校生が大多数なのが現状なのです。この現状を変えるべく、『情報 I』で「プログラミングを扱うこと」が適当とするのは、日本の情報教育においては大きな変化といえます。

以上、特に気になった箇所を中心に「プログラミング教育の姿」を探ってきました。しかし一方で、懸念点や問題点も見え隠れしています。次回はそうした点について考えます。

 

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