自立して行動できる大人に育てるための理想的な親子関係とは?_2016.11

自立して行動できる大人に育てるための理想的な親子関係とは?
「将来何になりたいか」を把握するためには、なりたい職業ではなく、何に興味があるのかを聞き出したい

キャリア教育の重要性が叫ばれている昨今。将来を見据えて、子どもたちは今、どんなことに取り組むとよいのでしょうか? また、保護者はどのように子どもをサポートするとよいのでしょうか? 小学・中学・高校を中心に3万5000人の子どもたちにキャリア教育プログラムを提供してきた認定NPO法人キーパーソン21の代表理事・朝山あつこさんにお話をうかがいました。

 

◆「自分で考え、決めて、行動できる」。この力が、社会で自分を活かして働いていく基盤になる

中高生に向けたキャリア教育というと、社会経験を積ませたり、これからの社会で生きていくために必要な力を教えたりすることが重視されがちです。もちろん、これらも大事なことではありますが、私たちが取り組んでいるのは、より根本的なところ、自信を持って前向きに生きる意欲や、子どもたち一人ひとりが持っているわくわくできるものやくじけずに頑張れるものを引き出すことです。

経済成長が頭打ちとなった現代では、「勉強して、いい大学、いい会社に入れば豊かになれる」という価値観はもはや確かなものではなく、子どもたちもそこに価値を感じていません。にもかかわらず、この価値観に囚われ、子どもにもそうあってほしいと願う大人は少なくありません。このズレによって、子どもたちは自分が認めてもらえていないと感じたり、未来には自分を活かせる場所がないのではないかと感じたりしているのが現状です。

さらに、これからの社会は予測不能で、大人の想像を超えた社会に変化していきます。不確かな未来を生きていくには、何が起こっても自立して生きていくんだという意識を持つことが大事だと、私たちは考えています。その原動力となるのが、自分に対する自信や、わくわくできるものやくじけずに頑張れるものを持っていることなのです。

この、夢中になれて、かつ、くじけそうになってもまた工夫して頑張ろうと立ち上がり、やり直すことができると感じられるような、自分から動き出さずにはいられない自分だけの原動力を、私たちは「わくわくエンジン」と呼んでいます。

 

「わくわくエンジン」を引き出すしくみ
自分の生き方を見つける鍵、「わくわくエンジン」を引き出すしくみ

 

「わくわくエンジン」を見つけた子どもは、知らない場所に行ったり、人前に出たりといった体験をすることが怖くなくなり、自発的に行動するようになります。その中で失敗も経験し、人の痛みや苦しみも理解できるようになる。そうして経験値を増やし、人間性を高めることで、自立して生きていける人になることができると考えています。

 

◆「わくわくエンジン」を見つける助けになる「動詞的な興味・関心」

「わくわくエンジン」を見つけるには、子どもが自分の「動詞的な興味・関心」に自ら気づくことが重要です。

興味・関心というと、「虫が好き」「野球が好き」「ロボットが好き」「星が好き」など、その対象を挙げる人が多いと思いますが、このような興味・関心の対象そのものを、私たちは「名詞的な興味・関心」と、そして、その背景にある理由や思いを「動詞的な興味・関心」と呼んでいます。

例えば、「野球が好き」という子どもたちに「どうして野球が好き? どんなところが面白いと思う?」と尋ねると、一人ひとり異なる答えが返ってきます。「作戦や戦略を立てるのが面白いから」「『試合に勝つ』という目標をチームで達成するために自分が役に立っていることがうれしいから」「素振りや筋トレを重ねて、自分が少しずつ成長していることを感じるのがうれしいから」など…。これが、動詞的な興味・関心であり、わくわくエンジンになりうるものなのです。

この一人ひとりが持っている思いに本人や周りの大人が気づくことができれば、先述したように自立して生きる原動力になりますし、たとえ「野球では食べていけない」など、名詞的な興味・関心を断念せざるをえなくなったときでも、別の道に方向転換することができます。「作戦や戦略を立てるのが面白い」という興味・関心は、野球だけに生かせるものではありませんから。

 

◆「わくわくエンジン」を保護者が把握する際に注意すること

保護者の方としては、「自分が子どものわくわくエンジンを見つけてあげなければ」と焦ってしまうかもしれませんが、わくわくエンジンは、大人が誘導したり、与えたりするものではなく、子どもたちが自ら気づくものです。したがって、名詞的な興味・関心を把握しておく程度にとどめ、「この子の中には『わくわくエンジン』のようなものがあるんだ」と心得ておくくらいの姿勢でいるのがいいのではないかと思います。

その上で、その時々で「もしかして、こんなことにわくわくしてるんじゃない?」とさりげなく声をかけたり、お子さまが迷ったときに一緒に考えてあげたりしましょう。お子さまが自ら「わくわくエンジン」に気づくサポートになりますし、「そうだよ、なんでわかったの?」なんて返事が返ってくれば、親子の相互理解という点でも素敵なことだと思います。

 

◆親子関係の理想的なタイプは?

中には、思春期の真っただ中にいるお子さまとのコミュニケーションに難しさを感じている方もいらっしゃると思います。ただ、保護者の側に、子どものことを根底から理解しようという姿勢があれば、お子さまもそう反発することはないのではないでしょうか。

私たちは親と子どもの関係を、親の安心度や親自身の自己理解、子どもに対する理解度と、子ども自身の意欲や自己理解度に応じて、4つのタイプに分類して考えています(下図)。

 

図
親と子どもの関係について、現在どの状態にあるのかを見つめてほしい

 

あくまで一つの考え方ではありますが、理想は、右上の親が子どもを信頼していて、子どもも意欲があって自信を持って行動している状態にあること。そうすれば、親はニコニコと子どもに接することができますし、子どももよく育つことができます。それ以外は、親の意志が強すぎたり、子どもの意欲に対して親が戸惑っていたりと、親と子の意欲に差があったり、どちらの意欲も低かったりしている状態です。ご家庭の親子関係がどれにあてはまるかを踏まえた上で、右上の関係を目指せるといいですね。

そのためには、子どもの興味・関心や気持ちを見る目を保護者の方が持つことが重要です。たとえ突拍子もないと思える夢を子どもが語ったとしても、頭ごなしに否定するのではなく、背景にある理由や思いを理解しようとする。対立にならないように、寄り添う。面と向かうのではなく、横に座る。このような感覚で子どもの話を聞くことが、一番大事なことではないかと思います。

 

朝山あつこさん
朝山あつこさんプロフィール

認定NPO法人キーパーソン21 代表理事
1982年清泉女子大学文学部卒業。3人の子育てをしながら「子どもたちに夢と職業意識を運びたい」という願いで2000年にキーパーソン21を設立。オリジナルのキャリア教育プログラム「夢!自分!発見プログラム」を開発し、2005年日経WOMAN主催「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2005」クリエイティブ部門受賞。設立以来、プログラムを受けた子どもたちは3万5000人を超える。認定NPO法人キーパーソン21
2000年設立、2001年NPO法人化、2013年認定NPOに認定。主な活動は、学校・個人向けのキャリア教育プロクラムの開発・提供、キャリア教育プログラムのファシリテーター養成、キャリア教育を活用した教員研修プログラムの提供、企業の教育CSR活動に対するアドバイザリー、貧困家庭を主な対象とした学習支援・居場所づくりなど。
認定NPO法人キーパーソン21Webサイト

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