文理選択の前にキャリア教育を──私立田園調布学園中等部見学レポート_2016.12

文理選択の前にキャリア教育を
今回、取材させていただいた私立田園調布学園中等部

中高一貫校では、中学生のうちにキャリア教育を行うケースが増えています。その狙いを私立田園調布学園中等部の先生にうかがうとともに、実際のキャリア教育の授業を見学させていただきましたので、紹介します。

 

今回見学したのは、中等部3年生を対象とした「企業による出前授業」のうち、NTTデータシステム技術株式会社の授業「かっこいい大人ニュース」(プログラム提供:認定NPO法人キーパーソン21)。同社の社員8人が「かっこいい大人」となり、大人1人に対して生徒4人が1組になってインタビューを行い、その内容をA4用紙1枚に「かっこいい大人ニュース」として新聞風にまとめるというものです。以下の4つをねらいとして構成されています。

  • 「知らない大人と出会い、コミュニケーションをかわすのは楽しい」という経験をする
  • 働く大人と出会い、社会や職業をリアルにとらえる
  • 働く大人に職業観を語ってもらうためにインタビュー方法を創意工夫し、自己の表現力・分析力を養う
  • コミュニケーション能力を養う

 

今回、見学した出前授業にご参加くださった、NTTデータシステム技術株式会社の皆さん
今回、見学した出前授業にご参加くださった、NTTデータシステム技術株式会社の皆さん

 

◆最初は緊張していた生徒が、徐々に自発的に質問するように

では、授業の様子を見てみましょう。

(1)教室で流れを確認&名刺交換の練習
複数の企業の中から同社の授業を選んだ生徒は32人。「かっこいい大人」と対面する前に、事前学習の際に決めた質問の分担の再確認や、名刺の受け渡しの練習を行いました。

(2)チームに分かれて名刺交換&詳しい自己紹介
大人たちから簡単な自己紹介を受けた後、大人1人と生徒4人のグループに分かれます。そして、まずは名刺交換。

生徒たちにとって初めての名刺交換は、緊張している様子
生徒たちにとって初めての名刺交換は、緊張している様子

名刺交換が終わると、大人が詳しく自己紹介。約15分かけて、NTTデータシステム技術とはどんな会社か、システムエンジニアはどんな仕事をするのか、中高時代にどのようにして進路を決めたのか、なぜ今の会社に就職したのか、などについて話します。大人たちは、「『システム』と聞くと○○さんは何をイメージする?」など、生徒たちに質問を投げかけながら場をほぐしていきます。

(3)チーム取材

真剣に話を聞き、ノートにメモをとる生徒たち
真剣に話を聞き、ノートにメモをとる生徒たち

大人からの自己紹介が終わると、取材開始。緊張気味で質問する機会を譲り合っていた生徒たちの緊張が解けたのは、プライベートや趣味の話が話題に挙がったり、自分との共通点が見つかったりしたとき。それからは、「システムのアイデアが採用されてから、形になって使われるまでにどのくらいの期間がありますか?」「1年間仕事を休めることになったら、何をしますか?」「会社に行ってから帰るまで、どんなふうに1日を過ごしますか?」「収入はいくらくらいですか?」など、仕事や生活の実態に切り込む質問から人となりを知るための質問まで、さまざまな質問が出てきました。

(4)個別取材

身振り手振りを加えて熱心に説明する、NTTデータシステム技術株式会社の池田鈴太郎さん
身振り手振りを加えて熱心に説明する、NTTデータシステム技術株式会社の池田鈴太郎さん

チーム取材が終わると、1人5分の個別取材へ。1グループにつき生徒1人がその場に残り、チーム取材を経てさらに聞きたいと思ったことや、聞きそびれたことを質問します。チーム取材の冒頭ではうつむきがちだった生徒も、このときにはしっかりと大人の目を見てどんどん質問していました。笑顔も随所に見られ、自然に会話が進行していきます。

(5)「かっこいい大人ニュース」紙面制作

インタビューした内容を、一人ひとりが自分の言葉でまとめていく
インタビューした内容を、一人ひとりが自分の言葉でまとめていく

一方、残りの生徒たちは取材場所を離れて「かっこいい大人ニュース」の紙面作成へ。紙面を作りながら、自分の個別取材の順番を待ちます。紙面に記入するのは、ニュースのタイトル、取材した大人の似顔絵、仕事内容、その仕事についた経緯、夢・将来の展望、トレジャーワードなど。トレジャーワードとは、取材した大人の話で印象に残った言葉のことです。

メモを撮り損ねた情報や、個別取材でチームの仲間が聞いてきた情報などを教え合いながら、それぞれに紙面を作っていきます。個別質問から戻ってきた生徒からは、「もっと話を聞きたかった!」「○○さんみたいな大人になりたい!」などの声が続々と。「もっと知りたい」という意欲があふれていました。

(6)制作発表&社員からコメント
2チームで1組になり、紙面にまとめた内容を発表します。「たとえ目標がなくても、勉強し続けることが大事だと思いました」など、生徒は皆、大人の話を聞いて感じたことを自分の言葉で伝えていました。

そして最後に、大人から生徒にサプライズプレゼントが。取材対応をしたチームの生徒一人ひとりについて、好印象に感じた点を伝える「ポジティブ・フィードバック」です。「和やかな雰囲気の受け応えに癒されました」「シャイなところが自分と同じで親近感がわきました」などの言葉を伝えられた生徒たちは、はにかみながらもうれしそうな様子です。

終了後、生徒たちからは「自分が知らなかった仕事やプライベートの過ごし方を聞いて、『こんなことするんだ、すごいなあ』と思いました」などの感想が。刺激的な経験となったようでした。

 

◆文理選択の前に、将来についてじっくり考えてほしい

田園調布学園の西村弘子校長は、「企業による出前授業」に大きな期待を寄せられています。
「社会の発展を担う次世代を育てるにあたり、学校の中だけの経験では不十分です。働く大人をはじめとした外の声に直接触れ、社会とのつながりを直に感じることが、生徒の想像力や思いをかきたてるのだと考えています。『企業による出前授業』を通して働く大人と直接話すことで、生徒一人ひとりが『人生をこんなふうにつくっていけるといいな』と将来を描くきっかけを得ることを期待しています。」

また、中等部3年土曜プログラム担当の黒井晴子先生は、中3でキャリア教育に力を入れるのは、文理選択を行う前に社会や仕事に目を向けて視野を広げる意図があると説明してくださいました。
「文理は、得意・苦手科目から考えて選択してしまいがちですが、そうではなく、将来やりたい仕事やありたい姿から考えて選択してほしいと考えています。そのために、高等部に進んで『大学・学部をどうするか』ということに視点が移ってしまう前の中3のタイミングで視野を広げてほしいのです。当初は仕事に対するイメージが何もついていなかった生徒たちですが、半年以上経った現在は、皆『将来のことを考えなきゃ』という意識が芽生え、考えるようになっています。」

中等部3年の担任の一人である平福かおり先生も、今回の授業に手応えを感じていらっしゃいます。
「NTTデータシステム技術様の授業に参加した生徒の多くは、どちらかというと理系に興味を持っていますが、彼女たちがイメージできる理系の仕事は医者か薬剤師くらいというのが実情でした。今回、システムエンジニアの仕事を知ったことで、彼女たちの視野が広がったと感じています。また、初対面の大人とコミュニケーションをとる非常に貴重な経験にもなりました。」

中3土曜プログラム担当の黒井晴子先生(左)と、中3担任の平福かおり先生
中3土曜プログラム担当の黒井晴子先生(左)と、中3担任の平福かおり先生

最初は戸惑っていた生徒たちの表情がどんどん和らぎ、積極的に質問する態度に変化していく様子から、知らなかった世界やあこがれに感じる大人に出会ったことに刺激を感じていることが伝わってきました。学校での機会はもちろん、学校外でも、働く人の話を直接聞いてみる機会が持てると、働くことについての理解を深めることができそうです。

 

<田園調布学園のキャリア教育の取り組み>

教養を養うために学年ごとにテーマを決めて学ぶ「土曜プログラム」として、中等部3年生と高等部1年生を対象にキャリア教育が行われています。中等部3年生のテーマは、「職業を知る・社会を知る」。生徒たちは、卒業生を囲む会や企業への職場訪問など、年7回、社会人や企業と接する機会を得て、自分と社会のかかわり方について考えます。1年間の最後には、「2030年はどんな社会になっていて、どんなスキルが求められるか」「そのとき、自分はどうありたいか」「ありたい自分でいるためのキャリアプラン」をまとめ、ポスターセッションで発表します。
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