進学校が取り組む新大学入試対策_2020.5
2020年5月25日
カテゴリー : 大学受験

いよいよ始まる新大学入試について、学校ではどのように捉えていて、また生徒にはどのようなアドバイスをしているのかを、進学校の先生方にうかがいました。進学校ならではの視点で「どのような点を重視しているか」をお話いただいたので、今後の学習の参考にしてください。
東京都立日比谷高等学校

<大学入学共通テスト>
英語の配点で「リスニング」が重要視される傾向であろうとの想定のもと、以前から時間をかけて丁寧に指導している。そのため、日比谷高校としては、聴解力重視の傾向を好意的に捉えている。ただし、試行テストを見る限りでは、リスニングの後半は一回読みに加え、量・作業も多く、聞けたとしても、その後の処理をどうするかといった判断が難化しているので、生徒には油断をしないように伝えている。
共通テストは、新しい学習指導要領を反映したものであるわけで、学習指導要領に答えがある。新しい学習指導要領は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」を評価の3観点としている。例えば、「英語」では、コミュニケーションにおいて活用できる「知識」が「知識」ということになる。
自分の意見や考えを相手に配慮して伝えられる英語力を自発的に使う態度を身につけることが、英語力を伸ばす最良の方法ということになる。どの教科にもいえることだが、学校の授業における対話型の活動に積極的に取り組み、主体的に問題点をとらえ、自らの意見や考えを表現することが、結果的には大学入学共通テストへの対策になる。
<個別試験>
本校では、共通テストと個別試験の対策について、大きく異なったアプローチをしているわけではない。共通テストの試行テストを見るかぎり、個別試験で求められる力とオーバーラップする部分が少なくない。そのため、幅広い学びを身につけるよう指導することで、「共通テスト」も「個別試験」もどちらでも対応ができると考えている。ただし、個別試験で重要なのはやはり「論述力」である。
巣鴨高等学校

森山 敦史 先生
<大学入学共通テスト>
共通テストに変わっても形式が違うだけで、問われている学力は大きくは変わっていない。基礎・基本の精度を上げていけば、どんな問題にも対応が可能だと生徒には伝えている。本校では、日頃から「解き方や考え方などを詳しく書ける記述力」「1つの問題を多面的に読み取る読解力」に力を入れて指導しているため、共通テストに特化した対策は、それほど必要ないと考えている。共通テストは基礎・基本がしっかりできていれば形式が変わろうと全く怖くないので、共通テストの形式に慣れるのは高3の夏以降で十分だと思う。
例えばセンター試験の数学では、1つの解法で問題を解く形が多かったが、共通テストでは一つの問題に対して複数の解き方に気付ける思考力が鍵となる。これは共通テストに限らず、個別試験にも言えることだが、問題を解く中で基礎・基本を身につけた上で、アウトプットができるようになる訓練が必要だと思う。
<個別試験>
個別試験を突破するには、基礎・基本ができた上で、自分の答案を作成するための記述力と志望大学の問題を分析する力も必要だ。本校では高3になっても、基礎・基本を身につけるために朝や授業内に小テストを数多く実施している。同じ形式で出題されると解けるが、形式が少し変わった途端に解けなくなる生徒がいる。それはその問題を暗記しているだけで、問題の解き方が体系化されていなかったり、具体的なものから一般化できていないことの現れである。定期考査や校外模試以外に、数多くの小テストを行うことで、「解法の体系化」や「具体から一般への拡張」「多面的な解法」を修得できるよう指導している。
兵庫県立姫路西高等学校

井上 智裕 先生(理科)

3学年主任 冨田 優子 先生(英語)
<大学入学共通テスト>
難関大を志望している生徒が多いため、4技能の試験があるという前提で積極的に英検等を受検していた。
生徒たちの意識が高くなっているものの、リスニングの後半部分が一回読みとなるので対策は必要だと考えている。英語は一年かけてコツコツ仕上げていく教科と考えている。授業の中で、一回読みの練習はしているし、リスニングの問題を解くだけが対策ではなく普段の読解の授業の中で音読の時間を増やすなどしている。今回の入試改革の目的はコミュケーション能力、論理的思考力と数学的・科学的な手法を用いて課題を解決する力の育成であるという話を聞いた。これを受けて論理的思考力を重視する問題は多くの科目で増えてきている。
国語科では他の教科でも対応できるように論理的思考力をつけるための読解力を高める対策としてまず、教科書だけでなくサブテキストを用意し、違いや共通点を見出す比較読みをする指導をしてる。また、文章を書かせ添削して戻すということを繰り返している。
<個別試験>
まずは、知識のインプットといった基礎力の蓄積が大切で、この基礎力があっての応用力である。今年の難関大の理科の問題でも論述が非常に多くなっている。
我が校の対策として、校内模試の出題には論述問題や初見の問題を必ず取り入れて作成している。複数の要素を組み合わせて正解を導く設問が増えてきているので、生徒に慣れさせるため定期考査にも同様な問題を取り入れて出題している。
英語は新入試問題を意識し、語彙力・知識・背景知識を高め、英作文では筋道をたてて論理的に文書を構成するという総合力を身につけられるよう指導している。先生たちも工夫して作題しているので、できなかったところはしっかりと復習をさせている。
国語の場合は、教養を高めるような授業も工夫して行っている。また、夏あたりから入試問題の生徒の答案が独りよがりにならないように希望者には添削をして戻すようにしている。
六甲学院高等学校

溝内 千尋 先生(物理)
<大学入学共通テスト>
大学に合格するための受験勉強の本質部分は、20年、30年前から変わらない部分が大きい。先ずは確かな知識が必要、その知識を具体的な課題に応じて活用する能力が求められている。自然界や社会の様々な仕組みや成り立ちに対する知的好奇心に導かれ、探究し自分の中に知識を構造化することが大事で、これが思考力の源泉となる。これが身についた時に表面上のテクニックではなく説得力を持った表現力が発揮できるようになると考えている。これらに対応するための入試改革であるし、我々もこのことを念頭において共通テストのための学習をするように指導している。
本校では、科目の内容を理解して、大学や社会に出た際に新しい知識や価値を創り出していける人間を育てたいと考えている。共通テストが現行のセンター試験よりハードになるのは事実だが、この基本線からぶれることなく進めていけば乗り越えられると信じる。国語、社会や数学などでは教師と生徒が一緒になって解き方を作り上げていくといったアクティブラーニングを取り入れている。
この取り組みは授業だけでなく委員会活動、学校の行事などでも生徒が主体となって運営していく場を用意している。中高合わせて1,000人による体育祭の行進は、設計から実行まで生徒自身が全て取り仕切って行い、教師はサポート役に徹する。
<個別試験>
授業の組み立てが最終的に難関大学の個別試験をめざしているので、授業の内容を100% 身につけるようにして欲しい。夏休みの段階で英数国の過去問に一旦取り組ませ、その夏の時点での学力を図ることで、2月の本番に向けて何をどこまで高めていかなくてはならないのかを先生と一緒になって見極める。共通テストが終わった段階で、個別試験に向けて本格的に過去問を研究して本番に備えることになる。
また英作文と小論文以外の受験勉強は模範解答と解説があれば何とかなるが、英作文と小論文だけは、単独では学習しにくい面もある為、いきなり3学期に取り組もうとしても時間もないので、時間がとれる夏休み中に担当教員に添削してもらうよう指導している。
重要なのは「記述力」
どの先生方も、個別試験対策の重要性を強調していらっしゃいました。Z会の通信教育では、難関大の個別試験を見据えた記述問題を、入試から逆算して学年ごとに必要な内容・レベルで出題し、添削指導により「記述力」を高めていきます。
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