早稲田大学政治経済学部・サンプル問題分析_2020.8
2020年8月6日
カテゴリー : 大学受験

新大学入試と言われる2021年度入試。私立大学でも、新しい形での入試が導入されていく予定です。
早稲田大学の政治経済学部では、2021年度から一般入試による選抜方法を変更します。早稲田大学から公表された「学部独自試験」のサンプル問題について、分析を行いました。
※本記事は、Z会の最先端の学び情報サイト『マナビシフト for the future』の記事を 最新の情報に更新した記事です。
目次
早稲田大学政治経済学部の一般入試改革について
早稲田大学の政治経済学部では、2021年度から一般入試による選抜方法を変更します(早稲田大学2020年3月31日公表)。
【大学入学共通テスト(100点)】
以下4科目を25点ずつに換算。
(1)外国語(いずれか1つを選択)
:英語(リスニングを含む)・独語・仏語
(2)国語
(3)数学Ⅰ・数学A
(4) 選択科目(いずれか1つを選択)
:地理歴史「世界史B」「日本史B」「地理B」から1科目
・公民「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」から1科目
・数学「数学Ⅱ・数学B」
・理科「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から2科目、あるいは「物理」「化学」「生物」「地学」から1科目
【学部独自試験(100点)】
日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述解答を含むものとする(英語4技能のうち、「書く」能力を問う問題も設ける予定)。また、従来の一般入試における「英語」や「国語」の試験とは異なるため、科目名称は「総合問題」とし、試験時間は120分間とする。
※2019年11月の『大学入試英語成績提供システム』の稼働延期に伴い、当初予定されていた内容から変更になっています。「英語外部検定試験の利用の中止」「学部独自試験は試験時間90分を120分に変更、配点を85点から100点に変更」となっていますのでご注意ください。
下記が、2020年度の入試科目・配点ですので、大学入学共通テストの利用、学部独自試験の導入と、新大学入試元年に大きくその方向を変えようとしているのがわかります。
【2020年度の入試科目・配点】
外国語(90点) | 次のうちから1つを選択。 (1) 英語 (2) ドイツ語 (3) フランス語 ※大学入試センター試験外国語配点(200点)を政治経済学部の外国語配点(90点)に調整して利用。 |
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国語(70点) | 国語総合、現代文B、古典B |
地歴または数学(70点) | 次のうちから1つを選択 (1) 世界史B (2) 日本史B (3) 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(「確率分布と統計的な推測」を除く) |
今回の記事では、早稲田大学から公表された「学部独自試験」のサンプル問題がありますので、分析を行ってみました。
「学部独自試験」とは?
早稲田大学のホームページには「学部独自試験」について次のような説明があります。
日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述解答を含むものとします(英語4技能のうち、「書く」能力を問う問題も設ける予定)。また、従来の一般入試における「英語」や「国語」の試験とは異なるため、科目名称は「総合問題」とし、試験時間は120分間とします。
2020年3月に公表されたサンプル問題は大問3つから構成されています。
大問1は日本語の文章読解問題です。早稲田大学政治経済学部教授・河野勝氏の文章から出題されました。
(河野勝「復興を支援することは、なぜ正しいのか」(金慧氏との共著)『政治を科学することは可能か』中央公論新社、2018年所収)。
ジョン・ロールズの正義論とそれに対する批判とを対比し、「不遇な人々に対して、どのように向き合うことが道徳的に正しいのか」について論じた文章です。
大問2は英文の読解問題です。問5で問題文を踏まえて300字以内の日本語で記述する問題が出題されました。
大問3は英作文で、「人工知能は最終的に人間の知能を超えるでしょう。」について、賛成また反対の立場をとり、少なくとも2つの理由を提示するというもので、解答用紙の余白部分に記述する形でした(字数の制限はありませんが余白の面積は当然限られています)。
これは従来の早稲田大学政治経済学部の英語の最後に出題される自由英作文と類似する出題となっています。
また、2020年7月に公表されたサンプル問題でも、大問は3題、問題構成も同じでした。
ただし、配点が前回とは異なっており、
3月のサンプル問題=大問1 40点、大問2 45点(グラフや図表あり)、大問3 15点
7月のサンプル問題=大問1 45点(グラフや図表あり)、大問2 40点、大問3 15点
となっています。
大問1は日本語の文章読解問題です。大学における講義の一部という形で選挙制度を扱っています。
特長的なのは、グラフの読み取りが含まれていることです。このサンプル問題などを元に「グラフからなにが読み取れるか」「文章を読んだ上でグラフを見た時に何がわかるか」などを意識した問題演習をしておきましょう。
また、3月のサンプル問題同様、記述問題が出題されています。
※「この日の講義の最後において、「以上の理由から一票の格差を無くすことが大切です。」と講師が述べたとする。それに対する反論を、理由を1つ述べたうえで解答用紙に書きなさい。」という内容。
大問2は英文の読解問題です。7月のサンプル問題では語数が1500語程度と、前回の900語より非常に多くなっています(しかし、大問1で扱われた分、7月のサンプル問題英語では、グラフや図表を絡めた出題ではありませんでした)。
しかし、前回のサンプル問題同様、日本語で記述する問題が出題されましたが、字数は前回の300字から80字と少なくなっています。
なお、3月のサンプル問題では大問2の英語で図表やグラフが出ていますが、7月のサンプル問題では大問1日本語の文章読解問題の方で扱っています。このことから、大問1の日本語の文章読解問題、大問2の英文の読解問題、どちらで図表やグラフの読み取りが出てもおかしくないことになります。
大問3は前回のサンプル問題と類似した形式で、「印刷メディアは世界から姿を消すであろう」という意見について、それに同意または反対する少なくとも2つの理由を説明せよ、という内容です。
※前回と今回のサンプル問題を見ると、グラフの読み取りがある大問の方(前回のサンプル問題は大問2の英文読解問題、今回のサンプル問題は大問1の日本語の文章読解問題)が、5点ほど配点が高くなっています。
双方のサンプル問題とも、非常にメッセージ性のある出題と言えます。
これまでの早稲田大学政治経済学部・国語の問題との違い
大きな違いとしては、3点あります。
- 古文、漢文の出題なし
- グラフや図表を絡ませた出題(ただ文章が読めるだけではなく、実用的な内容を問う問題へ)
- 「考えて、書かせる」記述問題の出題(思考力・表現力をより問う問題へ)
3月・7月のサンプル問題ともに、古文、漢文の出題はありませんでした。現代日本語の読解能力を問う問題のみ出題されています。
そして、7月のサンプル問題ではグラフや図表を絡ませた出題がされました。
また、これまで以上に「考えて、書かせる」記述問題があるのが特徴です。
3月に公表されたサンプル問題の問5をみてみましょう。
問5
文中の6には、Aの境遇をDと対比して説明する文が入る。記述解答用紙に50字以内で記せ。
サンプル問題と比較するために、2018年度の政治経済学部・国語の大問2、問十六をみてみましょう(一部省略しています)。
問十六 空欄6には「美人投票論」について説明した一文が入る。その文を記述解答用紙の空欄を補うかたちで完成させよ。その際、次の条件にしたがうこと。
- 全体を「株式市場の人々は、自分が~投票する」という形式にまとめること。
- 文の途中に「美人」、「他人」、「投票するのではなく」の語句を用いること。
- 記入欄には三十五字以上四十字以内で記入し、読点も字数にふくめること。
過去3年、国語で出題された記述問題をみると、上記の問十六のように「ガイド」が存在しているため、何を書くべきかある程度見当がつけやすくなっていました。ところが、サンプル問題では、従来の入試と違って「ガイド」がなく、より思考力・表現力が問われる出題へ変化しています。
どう対策するか?
早稲田大学のアドミッションポリシーには次のような文言がみられます(下線部は筆者)。
本学の教育に耐えうる基礎学力を持ち、本学の理念である進取の精神に富んだ知的好奇心が旺盛であり、同時に、地球社会に貢献する意志が強く勉学意欲の高い学生を世界のあらゆる地域から迎え入れる。
3月のサンプル問題をみると、受験者の「基礎学力」を測るテストとして適切な難易度になっています。「文章を読んで理解し、聞かれていることに正確に答える」という、ごく当たり前のことができるよう、国語の学習に日々取り組んでいけば対処できるでしょう。
ただし、7月のサンプル問題では、グラフや図表などと絡めた出題の可能性もあるので注意が必要です。具体的な対策としては、
- 政治経済を中心に、それ以外の分野の様々なテーマの文章も日ごろから読んでおく
(様々なテーマに関する予備知識が多少でもあると、初見の文章も内容把握が容易になります。また、グラフや図表と絡めた出題がされる可能性もあるので文章でそれらが出てきた場合は意識的に読むようにしましょう。) - 文章の構造も考えながら読む
(同じことを言っている箇所はどこか、対立することを言っている箇所はどこか、など) - 50字程度の記述問題に定期的に取り組み、先生などに添削してもらう
(書くべき要素は何かを意識して書きましょう)
といったことが挙げられます(もちろん、過去問も有効活用してください)。
これまでの早稲田大学政治経済学部・英語の問題との違い
純粋な英語の運用能力だけではなく、より自分で考え、それを表現する力が測られるということがこれまでとの大きな違いです。
従来の早稲田大学政治経済学部の英語は、論説文を中心とした出題で、出題形式は内容一致文選択、語句・文整序、空欄補充、最後に自由英作文が課される、というのが近年の傾向でした。本文の分量が多く、速読速解力が求められているのが特徴です。
一方、3月のサンプル問題を見ていただくと、語数も多くなく、文章自体は比較的平易と言えます。しかし、本文と図表の両方の情報を組み合わせて答えを導く必要がある問題が出題されており、本文の内容を理解するだけでは解けず、複数の情報を組み合わせて答えを導く力や数理的な処理力が求められています。
さらに、実際に図表を描いたり、問題文を踏まえて理由とともに日本語で論述したり、本文や図表の内容を理解し、それらを踏まえ表現したりする力が問われています。従来の出題と比べると、「英語で論文を読み、それらを基に自分で論文を執筆する」という、大学入学後に学生が英語を使用する場面に近い、実際的な英語力が試されると言えるでしょう。
ここで述べる実際的な英語力とは、「英語を使って何ができるか」、言い換えれば英語が手段として用いられているということです。英語を通して英語力だけでなく受験者の思考力を評価したいという大学の意図が見えます。
どう対策するか?
ここで、早稲田大学政治経済学部のアドミッションポリシーを確認してみましょう。
受験生に期待されるのは、学習の土台となる母語および英語を核とする言語運用能力や論理的思考力、自身の立ち位置を認識するために必要となる歴史・文化的知識、そして世界中の人々と交流しながら様々な問題に立ち向かう行動力であり、上述の各種入学試験ではこれらの知識・能力を多面的に考査することになる。
サンプル問題では、より如実にアドミッションポリシーが体現されていると言えそうです。自分の考えを表現することは、急に身につけられるものではありません。実用的な英語学習を通じ、普段から自分の考えを表現する練習を積むことが一層求められるでしょう。
具体的な方法としては、まず英文の主旨を理解できるだけの英語力を身につけるため、今まで通り語彙や文法の知識を習得することは必要です。その上で、日本語でも英語でも、自分の考えを文章でまとめ、論理的な整合性があるか添削してもらうというのも良いでしょう。さらに今回のように基礎的な数学力が求められる問題に対応するには、数学の学習も疎かにはできません。「英語の問題だから、英語の語彙と文法が理解でき、文章が読めれば良い」ということではなく、幅広い視野を持って学習をすすめていっていただきたいと思います。
ぜひ一度、サンプル問題を実際に解いてみて、どれくらいの時間がかかるのか、どういった種類の問題が苦手なのか、といった点を確認してみましょう。
重要なのは「論理的思考力」や「表現力」
Z会の通信教育では、難関大で問われる「論理的思考力」や「表現力」を良問と添削指導により高めていきます。
※2020年8月6日更新
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