受験にあたっては、入試制度を正確に把握したうえで、受験戦略を立てる必要があります。また、大学入学後の流れも含めて知っておかないと、「せっかく合格したのに、やりたいことができない…」ということになる可能性があります。
今回の記事では、東大受験(一般選抜)のための基本情報を整理してみました。
東大をめざす方へ
東大が期待する人材像と入学試験の基本方針
そもそも、東大はどういった学生に入学して欲しいのでしょうか?ここを確認しないまま東大を受験しても、東大と皆さんとの間でミスマッチがおきかねません。東大を受験したい方は、必ず東大の「アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)」を確認しておきましょう。
「アドミッション・ポリシー」とは、それぞれの大学が立てている「その大学がどういった使命を持っているか、どういった学生に入学してもらいたいか、どういう風に育成していくか」という大方針のことです。入試問題はもちろん、大学入学後の教育方針なども、すべて「アドミッション・ポリシー」を元に作成されています。
ですから、東大を志望する方は、東京大学アドミッション・ポリシーをしっかりと確認した上で、東大対策を進めていくことが不可欠だと言えます。
以下に簡単にまとめてみますが、いかがでしょうか。
志望動機を改めて見つめ直す際、実際に過去問などに取り組む際に、東大が何を求めているか意識ながら取り組んでみましょう。
◆東京大学の使命
国内外の様々な分野で指導的役割を果たしうる「世界的視野をもった市民的エリート」を育成すること。
◆東京大学が目指すこと
自国の歴史や文化に深い理解を示すとともに、国際的な広い視野を持ち、高度な専門知識を基盤に、問題を発見し、解決する意欲と能力を備え、市民としての公共的な責任を引き受けながら、強靭な開拓者精神を発揮して、自ら考え、行動できる人材の育成。
◆東京大学が期待する人材像
入学試験の得点だけを意識した、視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人。
◆東京大学の入学試験の基本方針
・試験問題の内容は高校生が学校で習う範囲から逸脱しない。
・文系・理系にとらわれず幅広く学習し、国際的な広い視野と外国語によるコミュニケーション能力を備えていることを重視。そのため、文科各類の受験者にも理系の基礎知識や能力を求め、理科各類の受験者にも文系の基礎知識や能力を求めるほか、いずれの科類の受験者についても、外国語の基礎的な能力を要求。
・知識を詰めこむことよりも持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視。
入学後の学び方(科類・学部について)
東大に入学した場合、以下のような形で進級していきます。
◆前期課程:教養学部(2年間)
初めの1年半は、文科一類・文科二類・文科三類・理科一類・理科二類・理科三類の六つの類に分かれて幅広く学びます。次の半年は、進学が内定した学部・学科での学修の基礎となるべき専門教育科目を学びます。
◆後期課程
法学部・経済学部・文学部・教育学部・教養学部・工学部・理学部・農学部・薬学部・医学部
後期課程で進学する学部・学科等は、学生の志望と成績等をもとにして決まります。前期課程の各科類から主として進級できる後期課程の学部・学科は以下のとおりです。
前期課程(科類) | 後期課程(学部) |
---|---|
文科一類 | 法学部 教養学部 |
文科二類 | 経済学部 教養学部 |
文科三類 | 文学部 教育学部 教養学部 |
理科一類 | 工学部 理学部 薬学部 〔薬科学科,薬学科[6年制]〕 農学部 医学部〔健康総合科学科〕 教養学部 |
理科二類 | 農学部 〔応用生命科学課程、環境資源科学課程、獣医学課程[6年制]〕 薬学部 〔薬科学科,薬学科[6年制]〕 理学部 工学部 医学部 〔健康総合科学科,医学科[6年制]〕 教養学部 |
理科三類 | 医学部 〔医学科[6年制]〕 |
東大入試は科類単位での出願となりますので、東大受験をしたい方は、出願前に「どういったことを学びたいか」という大まかな方向性は決めておく必要があります。
東大入試について(一般選抜)
以下、東大入試(一般選抜)についての情報や特徴、対策について述べていきます。
入試の概要ー募集定員と倍率、試験の配点
東大入試(一般選抜)は大まかに「共通テスト」「個別試験」で構成されます(理科三類は「面接試験」も)。点数は、共通テストの成績(配点 110 点:900 点満点を 110 点に換算します)と個別試験の成績(配点 440 点)とを総合(550 点満点)して算出します。
ただし、入学志願者が各科類の募集人員に対して次の倍率に達した場合は、共通テストの成績により第 1段階選抜を行い、その合格者が個別試験を受験できます。
科類 | 募集定員 | 倍率 |
---|---|---|
文科一類 | 401 | 約3.0倍 |
文科二類 | 353 | 約3.0倍 |
文科三類 | 469 | 約3.0倍 |
理科一類 | 1,108 | 約2.5倍 |
理科二類 | 532 | 約3.5倍 |
理科三類 | 97 | 約3.5倍 |
共通テストの受験教科・科目・選択方法
▼文科各類・・・5教科8科目又は6教科8科目
国語 | 『国語』(必須) |
---|---|
地理歴史・公民 | 以下の4科目のうちから2科目を選択。
『世界史B』、『日本史B』、『地理B』、『倫理,政治・経済』 |
数学 | 『数学I・数学A』(必須)
以下の3科目のうちから1科目を選択※1。 『数学II・数学B』、『簿記・会計』、『情報関係基礎』 |
理科 | 以下の「基礎を付した科目」のうちから 2 科目を選択。
『物理基礎』(『物理』)、『化学基礎』(『化学』)、『生物基礎』(『生物』)、『地学基礎』(『地学』) ただし、基礎を付していない科目」を 2 科目選択した場合には、「基礎を付した科目」を選択したものとみなす。 |
外国語 | 以下の5科目のうちから1科目を選択。
『英語』※2、『ドイツ語』、『フランス語』、『中国語』、『韓国語』 |
※1:『簿記・会計』『情報関係基礎』を選択できる者は、高等学校又は中等教育学校においてこれらの科目を履修した者及び専修学校の高等課程の修了(見込み)者のみ。
※2:外国語の『英語』は「リーディング」100 点と「リスニング」100 点、計 200 点満点を「リーディング」140 点満点、「リスニング」60 点満点に換算して利用する。
▼理科各類・・・5教科7科目
国語 | 『国語』(必須) |
---|---|
地理歴史・公民 | 以下の4科目のうちから1科目を選択。
『世界史B』、『日本史B』、『地理B』、『倫理,政治・経済』 なお、地理歴史及び公民の試験時間において2 科目を受験した場合には,第 1 解答科目の成績を合否判定に利用する。 |
数学 | 『数学I・数学A』(必須)
以下の3科目のうちから1科目を選択※1。 『数学II・数学B』、『簿記・会計』、『情報関係基礎』 |
理科 | 以下の4科目のうちから 2 科目を選択。
『物理』、『化学』、『生物』、『地学』 |
外国語 | 以下の5科目のうちから1科目を選択。
『英語』※2、『ドイツ語』、『フランス語』、『中国語』、『韓国語』 |
※1:『簿記・会計』『情報関係基礎』を選択できる者は、高等学校又は中等教育学校においてこれらの科目を履修した者及び専修学校の高等課程の修了(見込み)者のみ。
※2:外国語の『英語』は「リーディング」100 点と「リスニング」100 点、計 200 点満点を「リーディング」140 点満点、「リスニング」60 点満点に換算して利用する。
個別試験の受験教科・科目・配点
▼文科一類・二類・三類
国語 (配点120) |
現代文、古文、漢文 |
---|---|
地理歴史 (配点120) |
以下の3科目のうちから2科目を選択。
日本史B、世界史B、地理B |
数学 (配点80) |
数学I、数学II、数学A、数学B
数学I、数学II、数学Aは全範囲から、数学Bは「数列」「ベクトル」から出題。 |
外国語 (配点120) |
以下の4科目のうちから1科目を選択。
『英語』※1、『ドイツ語』、『フランス語』、『中国語』、『韓国語』 |
※1:一部マークシートに解答する問題あり。また、聞き取り試験(20~30 分程度)を行う。
▼理科一類・二類・三類
国語 (配点80) |
現代文、古文、漢文 |
---|---|
数学 (配点120) |
数学I、数学II、数学III、数学A、数学B
数学I、数学II、数学III、数学Aは全範囲から出題。数学Bは「数列」「ベクトル」から出題。 |
理科 (配点120) |
以下の4科目のうちから 2 科目を選択。
「物理基礎・物理」「化学基礎・化学」「生物基礎・生物」「地学基礎・地学」 |
外国語 (配点120) |
以下の4科目のうちから1科目を選択。
『英語』※1、『ドイツ語』、『フランス語』、『中国語』、『韓国語』 |
面接 ※理科三類のみ |
個人面接で、10 分間程度の自由面接。複数の面接員による評価を参考にする。2次面接を行うこともある。 総合判定の判断資料として取り扱う。 |
※1:一部マークシートに解答する問題あり。また、聞き取り試験(20~30 分程度)を行う。
出願数・合格者数・合格最低点
東大に合格するためには、どれくらいの倍率の中、どれくらいの点数をとらないといけないのでしょうか。
募集人員 | 志願者数 | 志願倍率 | 第1段階 選抜倍率 |
合格最低点 | |
---|---|---|---|---|---|
文科一類 | 401 | 1,381 | 3.44倍 | 約3.0倍 | 343.9444点 |
文科二類 | 353 | 1,084 | 3.07倍 | 約3.0倍 | 337.6111点 |
文科三類 | 469 | 1,393 | 2.97倍 | 約3.0倍 | 338.8667点 |
理科一類 | 1,108 | 2,869 | 2.59倍 | 約2.5倍 | 320.7222点 |
理科二類 | 532 | 1,909 | 3.59倍 | 約3.5倍 | 313.0222点 |
理科三類 | 97 | 404 | 4.16倍 | 約3.5倍 | 385.6111点 |
表をご覧いただけるとわかりますが、第一段階選抜はかなりの高い率で発生しますので、センター試験(次回からは共通テスト)で高得点がとれないと、そもそも土俵にも上がれない可能性が高いことはご留意ください。その上で、共通テストと個別試験あわせて、約55%〜70%の得点でぎりぎり合格できるので、相当高いレベルでの競争になります。
入試の特徴
東大入試では、単に知識量を問うような問題や難問・奇問ではなく、知識の運用力の高さをはかる問題が出題されます。しかし、全科目ともに試験時間に比べて問題の分量が多いため、偏りのない学習と、処理能力の強化が必要となります。問題文に書かれている意図をすばやく正確にとらえ、思考力を駆使して正しい解答を短時間で作成する力を伸ばすことが重要です。
また、東大入試は課される科目も他大学に比べて多く、文系の個別試験では、国公立大で唯一、地歴が2科目課され、その配点は英語、国語と同じです。理系では、英語、数学、理科2科目に加え、国語も課されます。そのため、他大学志望者よりも対策すべき絶対量が多いことに留意して、すべての科目について早めの対策を行う必要があります。
各科目の特徴と受験対策ワンポイントアドバイス
東大英語の特徴とアドバイス
東大英語では、英語・日本語ともに高い記述力が求められるため、実際に自分で「書く」練習が必須です。また、高度な英文を素材にしたリスニング問題が出題されますので、リスニング力をじっくりと磨き上げる必要があります。さらに、読解量・設問数も膨大なので、解くスピードを上げつつ、時間配分を意識した演習を積む必要があります。
東大数学の特徴とアドバイス
東大の数学は、すぐには解決法が浮かびにくい問題が多いため、様々な方向からアプローチし、解法を求める力が必要となります。また、処理量の多い問題も出題されますが、方針が立てやすいものが多く、得点差につながりやすいため、数式処理力を十分に養いたいところです。例年個別試験から見られる合格ラインは5割程度なので、完答できる問題を見極める力を養いましょう。
東大国語の特徴とアドバイス
東大の国語の問題文は一見読みやすいのですが、主観で歪めず、制限時間内に正確に読み取れるかが問われます。また、すべて記述式問題で、解答欄は狭いです。そのため、語の言い換えや文構造の工夫で、必要な要素をすべて盛り込む記述力が必要です。最終的には様々な文章を読み込み、記述演習に取り組んだ経験数で差がつくと言えます。
東大物理の特徴とアドバイス
東大物理で求められる、解答に必要な情報を限られた時間で問題文から正確かつ迅速に読み取る力、ある設問での考察内容がのちの設問の伏線になっているなどの大問全体の流れ(≒出題者の意図)をとらえる力、この2つの力をしっかりと身につけたいところです。その上で、答案を書く訓練を積んで、要領よく答案をまとめる力を入試本番までに習得しましょう。
東大化学の特徴とアドバイス
東大化学では、高校の学習内容を応用させる問題が合否を分けるため、各分野の深い理解と、確立された基礎力を柔軟に使いこなす思考力、応用力が求められます。また、限られた時間内で長い問題文を読み込なし、正確に理解する力も必要です。さらに、煩雑な計算問題にも対応できるよう、計算力も鍛えておきたいところです。
東大生物の特徴とアドバイス
東大生物は、問題量が多いため、リード文をすばやく的確に読む必要があります。内容を箇条書きにして整理する訓練をしましょう。また、記述式の実験考察問題への対策としては、まず「実験→結果→考察」の流れを整理する癖をつけましょう。そして、記述力を身につけるために、自分の手を動かして答案を書き上げましょう。
東大日本史の特徴とアドバイス
全問論述問題で構成される東大日本史で得点するためには、歴史に対する本質的な理解を含めた知識力、与えられた提示文や史料・資料、設問文から必要な情報を読み取る読解力、読み取った情報と知識をもとに解答を作成する論述力が必要です。教科書とは異なる視点から問われることが多いため、問題演習量を積み、東大で問われやすいテーマについての理解を深めておきたいところです。
東大世界史の特徴とアドバイス
東大世界史第1問で出題される600字前後の大論述では、時代・地域を越えた広い視野での考察が求められ、読解力・論理的思考力・文章表現力など、高度な力が必要となります。また、第1問はもちろん、第2問の小論述、第3問の一問一答形式の問題でも、正確な知識力は大前提であり、トータルな力の養成が必須です。
東大地理の特徴とアドバイス
東大地理では、全地域・分野の基本知識を習得し、使いこなす力が求められます。とくに自然地理の知識は確実にしておきたいところです。その上で、統計などの各種資料を分析・読解する力が必須です。基本的な地形図の読図の練習もしておきましょう。また、指定字数の少ない論述問題に対応できる、簡潔・確実に解答する表現力も高めておきましょう。
東大の個別試験対策についてさらに詳しく知りたい方は…
▼Z会の各科目担当者が、東大・京大の入試の傾向と対策を詳しく解説!
▼Z会の各科目担当者が、東大・京大入試の「合否を分けるポイント」を解説!
2021年度の入試スケジュール
特に今年は新型コロナウィルス感染症等の影響で変更が出る可能性もありますので、東大受験を考えている方は、必ず、大学入試センターや東京大学ホームページで随時確認するようにしましょう。
【共通テストの出願】
2020年9月28日(月)~ 10月8日(木)
【共通テスト実施】
① 2021年1月16日(土)・17日(日)
② 2021年1月30日(土)・31日(日)
※特例追試験:2月13日(土)・14日(日)を実施
【東大(一般選抜)出願期間】
2021年1月25日(月)~2021年2月5日(金)
「書留速達郵便」で、上記期間に到着するように出願。
※2021年度大学入学共通テストの特例追試験の受験者については、出願期間等を別途定める予定。
【東大(一般選抜)第1段階選抜合格者発表】
2021年2月16日(火)
東京大学ウェブサイトで、第1段階選抜合格者の大学入学共通テスト「試験場コード」及び「受験番号」を発表。
【東大(一般選抜)個別試験 試験会場】
文科各類:東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区駒場)
理科各類:東京大学本郷キャンパス(東京都文京区本郷)
【東大(一般選抜)個別試験時間割】
<文科一類・文科二類・文科三類>
2月25日(木) | 9:30~12:00(150 分):国語
14:00~15:40(100 分):数学 |
---|---|
2月26日(金) | 9:30~12:00(150 分):地理歴史
14:00~16:00(120 分):外国語 |
<理科一類・理科二類・理科三類>
2月25日(木) | 9:30~11:10(100 分):国語
14:00~16:30(150 分):数学 |
---|---|
2月26日(金) | 9:30~12:00(150 分):理科
14:00~16:00(120 分):外国語 |
2月27日(土) ※理科三類のみ |
9:00~17:00 頃:面接 |
【東大(一般選抜)合格者発表】
2021年3月10日(水)
※2021年3月10日(水)12:00ごろ、合格者の個別試験受験番号を東京大学ウェブサイト及び東京大学携帯電話サイトに掲載。2021年3月10日(水)12:30ごろ、東京大学本郷キャンパス内(法文1号館と2号館の間)に掲示予定。
※また、合格者には電子郵便(レタックス)により「合格通知書」を送付。
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