執筆者:渡邊翔(Z会進学教室 御茶ノ水教室/英語科)
記事更新日:2022年01月28日
紙辞書?電子辞書?スマホ?最適な辞書の選び方
中学校への進学に向けて、制服の採寸や学校で必要となる持ち物などの準備を少しずつ始める時期だと思います。書店でも『〇〇中学校採択教科書ワーク』など、中学校での学習を意識した書籍が並び始めます。そして、1年の中でもっとも『辞書コーナー』が充実し、華やかにデコレーションされる季節です。
辞書好きにはさまざまな辞書を手に取って見比べることができ、とても心踊る時期なのですが、たくさんの辞書を前にすると多くの人は「どの辞書がいいのだろう?どれも同じに見える気がする…」「そもそも辞書って必要なの?」と思われるかもしれません。
しかし、辞書の選び方1つで英語学習は大きく変わります!そこで今回は、これから本格化する英語学習に欠かすことができない辞書選びのポイントをお伝えしたいと思います。
そもそも、どうして辞書を引く必要があるのか?
皆さんはどのようなときに辞書を引きますか?(世の中には「読書」として辞書を読む人もいますが、)多くの人は「分からない言葉の意味を調べる」ときに辞書を引きます。知らない言葉を調べるために辞書を使うという点においては、日本語でも英語でも変わりはありません。しかし、大きな違いは「母語」である日本語よりも、「外国語」である英語のほうが知らない言葉が多く、辞書を必要とする場面が圧倒的に多いという点です。
小学校で600~700語程度を学習し、中学校で1600~1800語程度の単語を学習します。また、「実際に英語が使えるようになる」ことを目指している新課程の教科書では、日常生活との関わりが深い単語を扱っています。そのため、「知っている!」という単語もすでにいくつかあると思います。しかし、学習内容が進むにつれて、welfare・visually impaired・masterpiece など意味を正確に答えるのが難しくなる単語が増えていきます。
単語学習において、たくさんの単語を知る(認識語彙を増やす)ことも大切です。しかし、テストや入試では、文法や文脈に応じて正しく扱える単語を増やす(運用語彙を増やす)ことが欠かせません。正しく単語を扱えるようにするためにも、単語の持つ意味や働きを、辞書を通じて調べて学ぶ必要があります。
辞書の読み方にも注意が必要!
英語を勉強するうえで辞書を引くことが大切と話しておきながら矛盾するのですが、辞書の引き方次第では、間違った単語学習につながる危険性があります。たとえば、次の英文内の make はどのような意味でしょうか。
【例】I will be able to make the meeting tomorrow.
makeを辞書で引くと、最初に書かれているのは「~を作る」という意味だと思います。しかし、ここでの make は「~を作る」という意味ではなく、「何とか(目的地など)に着く;~に立ち寄る;(電車などに)間にあう」という意味になります。辞書にもよりますが、make の意味・働きとしては10番目くらいに書かれていると思います。
実は英語では、このように1つの単語に複数の意味や働きがあることが非常にたくさんあります。他にも、hot には「暑い、熱い」だけではなく「辛い」「最新の」「(正解に)近い」などの意味があったりするのです!
英単語のこのような特徴を知らずに辞書を引くと、「最初に書かれている意味」だけで判断し、「明日の会議を作れる」という誤読をしてしまうことになります。そのため辞書を引いて複数の意味が書かれている場合、「例文と照らして、一番当てはまる意味を選ぶ」という辞書の読み方が大切になります。
辞書の特性 × 学習段階 = 『最適な辞書』
『最適な辞書』を選ぶうえでは、「英語学習での辞書の大切さ」「辞書の読み方のコツ」を理解したうえで、「辞書の特性」と「学習段階」を組み合わせて考えてください。
【辞書の特性】
<紙辞書>
多義語や例文、そばにある他の単語を意識しやすいです。また、種類が豊富なため、自分にあったものを選べるメリットがあります。一方で、引くのに慣れるまで時間がかかることや、発音記号が読めないと単語の発音が分からないというデメリットがあります。
<電子辞書>
検索が簡単なうえに、色々な辞書を一度に引けます。また、音声が聞けるため単語の発音の確認がしやすいです。一方で、検索で出てきた「最初の意味」だけに目が行きがちで、多義語や例文の読み落としが増えやすくなります。
<スマホ(ネット検索)>
検索が簡単なうえに、紙辞書や電子辞書にはない最新の言葉を見つけやすいです。一方で、電子辞書と同じように検索で出てきた「最初の意味」だけに目が行きがちです。また、多義語や例文まで示してくれないことが多く、正しい意味ではない可能性もあります。
【学習段階】
<英語学習開始~中学2年生>
積極的に単語の意味を調べることに加えて、「多義語を意識する」「例文まで読む」ということも合わせて学んでほしい時期になります。そのため、詳細に富んだ辞書よりは「引いて楽しい」「分かりやすい」辞書である『ジュニアアンカー』『ジュニアクラウン』などがおすすめです。
<中学2年生~高校受験>
文法学習も進んで例文の英文が読めるようになったことに加えて、長文読解も本格化する時期です。この時期からは単に意味を調べるだけではなく、単語の働きや使い分け(語法)まで詳しく調べる必要があります。そのため『ニュービクトリーアンカー』『ライトハウス英和辞典』などがおすすめです。
<高校生~大学受験>
難易度の高い英文に触れることが増えるため、語数・語法をさらに詳しく解説している辞書が必要となります。『スーパーアンカー』『ウィズダム』『オーレックス』『ジーニアス』などがおすすめになります。
もちろんこの定義や組み合わせは、数ある辞書選びの1つです。しかし、英語を初めて学習する人に、翻訳家が愛用する『ジーニアス』や『ウィズダム』は使いこなすことはできないと思われます。また、電子辞書やスマホのデメリットを知らないで機械的に単語を入力して、最初の意味だけを当てはまれば、全く使いこなせていないのと同じです。そして一番大切なことは、辞書は一生ものではなく、学習段階や用途に応じて買い換えていくものです。
中学校からの英語学習の第一歩は、使いやすさや読みやすさを意識した初学者向けの紙辞書を選び、調べるだけではなく「引き方」「読み方」を学ぶことも目指してみましょう。「引くのに時間がかかる」のは、慣れるまでのことです。また「引く時間がもったいない」より、「正しく使えない」という一生の悪い習慣を避けることのほうが大切です。1つうえのレベルの辞書や電子辞書に手を伸ばすのは、学年や学習が進み、「引き方」「読み方」も身についた段階になってからでも遅くありません。
この記事の著者
渡邊翔(わたなべ・しょう)
Z会進学教室の英語科スタッフ。英語を初めて学ぶ人から、難関高校・大学を目指す人まで指導経験がある。「世界一有名なビーグル」を通じて英語を学んだ経験から、「好きなことで英語を学ぼう!」がモットー。
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