第50回 最新!2022年度埼玉県公立入試問題の問題分析 傾向と対策

執筆者:石井謙一(Z会進学教室 大宮教室長/数学科)
記事更新日:2022年04月22日

最新!2022年度埼玉県公立入試問題の問題分析 傾向と対策

こんにちは。Z会進学教室大宮教室で教室長をしている石井です。今回は埼玉県の公立高校入試について最新情報を含めてお伝えします。入試制度についてはこちらの記事でも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。2022年度(令和4年度)の問題分析もまとめていますので、小学6年生の皆さんや保護者の方はもちろんのこと、中学生の皆さんもぜひご覧いただき、学習の参考にしてくださいね。

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埼玉県内の中学生の進路状況

まずは数字が確定しました昨年・令和3年度(2021年度)の進路状況をお伝えします。埼玉県内の公立中学3年生約61,200人のうち、91%ほどの56,000人が全日制高校に進学しています。全日制に進学する人の割合は平成14年度には全体の94.8%でしたが、平成24年度には93.0%、そして令和3年度には91.3%(過去最小)と減少の一途を辿っており、一方通信制に進学する人の割合は平成14年度にはわずか0.9%でしたが、平成24年度には2.1%、令和3年度には4.9%と増加傾向にあります。この4.9%は過去最多です。今後も通信制への進学割合は増加するでしょう。これも多様性のひとつと言えるのかもしれません。

教育委員会の調査によると、中学3年生全体で全日制を志望する人のうち、12月の時点では国立大附の希望者が約160人、公立高校の希望者が約40,500人、私立高校の希望者が約11,300人、県外の高校の希望者が約4,500人いました。実際には入試を経て国立大附に約140人、公立に約34,500人、私立に約16,500人、県外に約5,000人進学しています。国立大附に0.2%、公立に約57%、私立と県外を合わせて約35%が進学していることになりました。この比率は10年前と比べると公立の割合が減り、私立の割合が増えています。私立高校には追い風が吹いている状況です。

埼玉県内に唯一ある国立大付属高校は、筑波大付属坂戸高校です。普通科ではなく総合学科で、大学受験に特化しているわけではなく職業選択を視野に入れて適性に合わせた学科を学べる高校です。

埼玉県内の公立は全日制だけで139校あり、普通科が103(共学91、男子校5、女子校7)、専門学科が71、総合学科が9、計183学科あります。一方、私立は48校あり、共学39、男子校5、女子校4です。東京では半分以上の私立校が中高一貫で高校募集をしていませんが、埼玉では中高一貫校(48校中31校)は、女子高の1校を除く30校が高校募集を行っています。また、ほとんどの学校では中学校よりも高校からの方が入学者数が多いのです。

令和4年度(2022年度) 県公立高校入試の概況

令和4年度(2022年度)の埼玉県公立高校入試では全日制の実倍率が1.14倍で、約4800人の不合格者が出ました。普通科の受験者は約30,700人で、普通科の実倍率は1.16倍です。普通科では市立浦和高校の2.06倍、川口市立高校が1.81倍と高く、理数科では所沢北高校が2.40倍と大宮高校の2.23倍を上回りました。

埼玉県の公立入試は全校共通の学力検査問題と、英語と数学のみ学力検査問題と学校選択問題の2種類があり、学校選択問題の英数は上位校が採択している難しい問題です。令和4年度(2022年度)は22校で学校選択問題による試験が実施され、約1万人が受験しています。実倍率は1.31倍で普通科全体の倍率を上回っております。

埼玉県公立高校入試の学力検査は英数国理社すべて50分・100点満点で、学力検査問題、学校選択問題ともに記述式が多いのが特徴です。思考力・判断力・表現力を必要とする応用問題の配点も高いので、普段の学習では「答えだけでなく、その答えに至った過程もしっかり書くこと」、「暗記だけに頼るような学習に陥らないこと」、「ノートにしっかり、丁寧に書くこと」を心がけてください

【英語】埼玉県公立高校の学力検査 2022年度の出題傾向

令和4年度(2022年度)は学力検査問題、学校選択問題ともに例年通りの出題傾向となり、難易度は下がりました。英語の試験にはリスニングが28点分あり、13分ほど時間が取られます。他県公立(例えば東京は20点分、神奈川は21点分)と比べても配点が高く、確実に得点する必要があります。そして残り37分で長文読解を複数題解き、課題作文を書くことになりますから、特に学校選択問題は時間との勝負にもなります。

学校選択問題の英作文は10点配点で平成29年度(2017年度)から「短い英文について英語で問いが与えられ、自分の意見を述べる」という形式になっています。令和4年度(2022年度)は自分自身がスピーチする際に図書室やタブレット型コンピュータをどう活用するかという問いが出題されています。過去には「若い頃に留学をすべきか」「人工知能は今後発展すべきか」などが出題されており、過去問演習などを通して入念な準備が必要です。

【数学】埼玉県公立高校の学力検査 2022年度の出題傾向

大問数は学力検査問題が4題、学校選択問題が5題でした。出題形式は例年通りでしたが、難易度はかなり上がった印象です。今年受験した生徒は皆試験当日、数学が終わって「もうだめだ」「やられた」と落ち込んだ人が多かったようです。学力検査問題、学校選択問題ともに前半の[1]、[2]、[3]にも適度に難しめの問題も散りばめられており、また後半の円の問題の(2)がやや難しく、学校選択問題では立体図形の(2)、(3)も私立難関校で出題されてもおかしくないレベルの難問が出題されました。平均点は両試験とも下がると予想します。

点の取りにくい難問が数題出題されるているということは、[1]、[2]、[3]で取れるべきところで失点せず、[4]、[5]の(1)で得点できた人が合格点を取れたのではないかと思います。難しい問題を初めから諦めてはいけませんが、基本的な問題は確実に得点できるよう、苦手分野を作らず、早いうちから基本をベースとした広く丁寧な学習を進めてください。

【国語】埼玉県公立高校の学力検査 2022年度の出題傾向

大問5題構成で、令和4年度(2022年度)も例年と大きな傾向変化はありませんでした。難易度は下がっております。小説、説明的文章、古文、文法、作文と幅広い出題、「記述重視」ということが埼玉県のコンセプトと言えます。1年生のうちから記述や読解のトレーニングが必要です。

最後の課題作文について、令和3年度(2021年度)は単一の資料を読解しての記述でしたが、令和4年度(2022年度)は複数の資料が用意され、それぞれを読み取り共通点を見出すことが難しかったようです。作文については中2の夏頃から書く練習を重ねるとともに、国語の先生の添削指導を受けて減点されない作文を書けるようにしましょう。練習すれば、誰でも必ず書けるようになります。

【理科】埼玉県公立高校の学力検査 2022年度の出題傾向

令和4年度(2022年度)入試も、大問構成は例年と同様に5題でした。[1]は小問集合として物理・化学・生物・地学がそれぞれ2題ずつ出題されています。[2]が地学、[3]が生物、[4]が化学、[5]が物理となっています。生徒が書いたレポート形式の文章が登場し、それを読解しながら問題を解く形式や、先生と生徒の対話や生徒同士の対話文を読み取って、問いに答えるという形式が近年続いています。途中の計算式を書かせる出題もあり、全分野から満遍なく出題されますので苦手分野を作らないように対策しましょう。

理社ともに中1、2の範囲が7割ほど出題されますから、中3になって部活が終わった夏休みから理社の復習を始めようとしても膨大な範囲のため、間に合わせることは極めて難しくなります。1、2年生のうちからしっかりと対策を立てて勉強してください。

【社会】埼玉県公立高校の学力検査 2022年度の出題傾向

令和4年度(2022年度)入試も、例年と同様に大問6題構成でした。[1]が世界地理、[2]が日本地理、[3]、[4]が日本史、[5]が公民、[6]歴史や政治経済が混ざる総合問題となっています。[6]ではSDGsに関係するグラフや表が出題されています。世の中の動きに興味を持ち、昨今世の中で話題になっている出来事・テーマについてはしっかりと押さえておきましょう。世の中で起きていることを学べる科目と考えると、理科・社会は我慢比べの科目ではなく、楽しむ科目と言えそうですね。

社会や理科は決して暗記や我慢比べの科目ではなく、世の中のための、世の中に役に立つ(実学といいます)、楽しく学ぶべき科目であると言えるのではないでしょうか。私立高校希望の受験生は、理社は関係ない…と考える方がいるかもしれません。しかし、それでは大切なものを失うこととなります。高校へ入学後も理社の学習はもちろんありますし、理社は3教科以上に大切な科目と考え、取り組んでください。県公立トップ校に合格する受験生の中には、理社合わせて200点中180点以上を、つまり9割を取ってくる人が多いです。もし今この記事を読んでいる皆さんが3年生でしたら、この春から1、2年生の復習を始めましょう。後手に回してはいけません。普段から、毎週の学習の中に理社の学習も組み込むことが大切です。

埼玉県公立高校入試問題 学力試験の合格者平均点(各教科100点満点)

◆令和3年度(2021年度)

国語 数学 社会 理科 英語 5科
学力検査問題
予想点 55 55 55 50 50 265
平均点 68.7 62.2 62.6 56.2 51.4 301.1
学校選択問題
予想点 60 65
平均点 56.0 61.6

 

◆令和2年度(2020年度)

国語 数学 社会 理科 英語 5科
学力検査問題
予想点 55 50 55 50 48 258
平均点 57.2 67.9 55.4 51.1 52.2 283.8
学校選択問題
予想点 60 65
平均点 55.2 58.9

◆平成31年度(2019年度)

国語 数学 社会 理科 英語 5科
学力検査問題
予想点 55 48 55 50 48 256
平均点 58.3 42.3 60.3 44.5 47.7 253.1
学校選択問題
予想点 60 65
平均点 53.5 64.3

 


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この記事の著者

石井謙一(いしい・けんいち)

Z会大宮教室長として長年埼玉県の中学生に数学を指導する。自身は中学の時は数学が大好きだった。高校へ入ると数学の授業は大嫌いになる、授業がつまらなかったから。指導する先生の存在は大きい。でも、数学は愛していた。数学が苦手な生徒の気持ちがよくわかるという。Z会の生徒はほんとによく勉強するし、生徒から教わることもたくさんあるとか…。これからも生徒と一緒に数楽していきたい。

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