「好きなこと」や「こだわり」の旗を立てる。それが周りを巻き込む第一歩(後編)_2016.8

教育プログラム「H-CAMP」
博報堂の大木さんが主宰する発想体験ワークショッププログラム「OPEN-CAMP」の発表シーン

株式会社博報堂で「発想体験ワーク」を中心とした教育プログラム「H-CAMP」を企画・運営している大木浩士さん。個人でも、社会課題を解決するためのさまざまな活動に取り組まれています。社内外での活動を通して感じる、これからの社会を生きていくために身につけたい力について伺いました。

 

行動することで、課題が見えてくる

── 大木さんは、個人としても都市部と地方をつなぐ活動などに取り組まれていらっしゃいますが、どのような経緯で社会課題の解決に取り組まれるようになったのでしょうか?

最初のきっかけは、地球温暖化を警鐘する映画「不都合な真実」(2007年公開)を見たことです。それまでは環境問題にまったく興味がなかったのですが、映画を見て環境問題の深刻さに相当なショックを受けたんです。「このままじゃ地球はダメになるんじゃないか。今何かを変えないとまずい」と。そしてすぐにビジネスの面から環境問題の改善に取り組む部署への異動を会社に願い出ました。少しでもこの会社が環境問題の改善に貢献できるようになるといいなと思ったんです。

なんとか異動することができ、環境問題について啓発する取り組みや、顧客企業の環境問題への取り組みを社会に知らせるためのアドバイザーの仕事に情熱を持って取り組んでいました。ただその後、2011年に東日本大震災が起こったことで、私自身の活動の視点が少し変わりました。現在は、「都市と地域の人をつなぐ」「やりたいことを形にする支援」という2つのテーマを設定して、社外にて活動を行うことが増えました。

大木さんは環境問題について企業ができることを真剣に考え、取り組んだ
大木さんは環境問題について企業ができることを真剣に考え、取り組んだ

── 環境問題から地域・個人の支援に移られたのは、どうしてだったのでしょうか?

東日本大震災が起こり、私の実家がある栃木県にも被害が及びました。この危機的状況下で、私も何かお役に立ちたいと、休日に被災地へたびたび向かうようになりました。

被災地では地域コミュニティが崩壊して支援が必要な状況で、私はワークショップや対話の場づくりなどによってコミュニティを再びつくる取り組みに携わりました。そこで地域の中で課題を感じて「やらなきゃ」と思っている人に接していると、広く「環境問題をがんばろう」と呼びかけても届きづらく、地域ごとの具体的なアクションにしていかないと進まない、と考えるようになりました。次第に、地域や個人の思いに根ざした具体的なアクションづくりを支援することにシフトしていきました。

 

── 個人的な地域貢献について、具体的にどのような活動をされているのですか?

まず、「都市と地域の人をつなぐ」というテーマでは、私の出身地である栃木県を中心に首都圏からの体験視察ツアーを行ったり、首都圏に住む栃木県出身者の交流会を東京で開いたりして、自分が今住んでいる場所とは別の場所に、何かあったときに頼りになる「第二のふるさと」をいくつかつくっておくといいんじゃないか、という提案をしています。その活動が縁で、生まれ故郷である栃木県さくら市の移住者づくりや地域づくりのお手伝いも行っています。

「やりたいことを形にする支援」としては、企画書講座や報告書講座、栃木県宇都宮市の高校生による「宇都宮・高校生まちづくりプロジェクト」の支援などに取り組んでいます。

実は、私個人の活動として一番やりたいのは、この「やりたいことを形にする支援」なんです。東日本大震災の直後にワークショップがはやり、私自身、さまざまなワークショップに携わりました。ただ、H-CAMPもそうですが、ワークショップだけだとどうしても企画づくりで終わってしまって、実現に向けて行動することはほとんどありません。仕方のないことではありますが、企画を作ったなら形にするまで取り組まないと中途半端な気がして、これらの活動を行っています。

 

── アイデアを形にするという経験は、中高生の段階から経験しておくとよいことでしょうか?

そうですね。「やれ」と言われてやるんじゃなくて、「やりたい」と思ったことをやってみた経験を中学校・高校時代で持つのはすごく大切だと思いますね。そういう経験を持つことによって、自分に自信を持つことができます。すると、大学での過ごし方が変わって、大学での過ごし方が変わると、将来の仕事選びや、社会人になってからの生き方にも影響してくるはず。できることならぜひ、経験してほしいですね。

「OPEN-CAMP」では、アイデアを形にする発想体験ワークを定期的に行っている
「OPEN-CAMP」では、アイデアを形にする発想体験ワークを定期的に行っている

── これからの社会では、発想して発信する力とともに、ほかの人を巻き込んで、一緒に何かを作り上げていく力も重要かと思います。その点についてはどのようにお考えですか?

私も、企画を形にするまでの併走を栃木で大人向けに取り組んでいますので、巻き込む力の大切さはよく認識しています。

ただ、巻き込むためにまず必要なのが、自分がやりたいことを周りに伝えることだと思うんですよ。旗を立てるいうか、「私、これがやりたい!」と周りに発信できてこそ、賛同者を集めることができるのだと思います。

 

まずは、「好きなこと」や「こだわり」を見つけることが大事

── 社内外で精力的に活動されている大木さんですが、これからの社会を生き抜くために中高生が身につけたいスキルについて、どのようにお考えですか?

一つ挙げるとすると、自分の好きなことやこだわりたいことを見つけることでしょうか。そして、それを人に言えること。「これ、好きなんだ。なぜかというと、こういうところがすごくいいんだよ」と言えるものが一つでもあると、より深めるために努力したいという思いが芽生えると思います。つまずいたり、くじけそうになったりしたときの心の支えにもなるでしょう。

実際、好きなものや自分なりのこだわりを人に言える子は目がキラキラしていて、発想も豊かです。アニメでも、ゲームでも、音楽でも、演劇でも、絵を描くことでも、何でも構いません。もちろん、途中で変わっちゃってもいい。

中高生と話していると、好きなものや興味のあることが「ない」と話す子でも、どんどん聞いていくと、心の奥に何かしらの思いを抱えていることが多いんですよ。でも、周りの人とは当たり障りのない会話ばかりで、自分の思いに気づいたり、それを言葉にしたりする機会がない。だからこそ、思っていることを自由に話し合う環境や、自分の好きなものを「好き」と言える場や、何かを生み出してみたり、生み出したものを褒められる機会が必要です。OPEN-CAMPが、微力ながらそのきっかけになればと思って取り組んでいます。

 

大木さんが主宰している「OPEN-CAMP」のWebサイト

プロフィール

大木浩士(おおき・ひろし)
株式会社博報堂 広報室 CSRグループ CSRプロデューサー

1968年、栃木県生まれ。広告会社、シンクタンクを経て、2001年、株式会社博報堂に入社。顧客企業のマーケティング戦略立案、商品開発業務などを担当したのち、2007年より環境コミュニケーションのプランニング・コンサルティングを担当。2012年に広報室 CSRグループに移り、社員のCSR活動のアドバイザーや「H-CAMP」の企画・運営などを担当している。個人としては、「都市と地域の人をつなぐ」「やりたいことを形にする支援」という2つのテーマを掲げ、都市部と地方とをつなぐ活動「里都(さと)プロジェクト」や、出身地である栃木県の各自治体のまちづくり、移住促進のサポートなど、地域や個人が抱える課題の解決に向けた活動を積極的に行っている。

 

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