教育&入試トレンドニュース【2023年度上半期号】

2023年11月23日

カテゴリー : 教育情報全般

さまざまな教育ニュースを配信する「教育&入試トレンドニュース」上半期号です。

主なニュース

高等教育における生成AIの扱い 文部科学省が初通知

2023年7月13日、文部科学省は大学や高専での生成AIの取り扱いについて、初となる通知を出しました。
昨年以来、ChatGPTなど生成AIの利活用は、民間企業や公的機関で急速に広がっています。むろん、学校も例外ではありません。論点の洗い出し、情報収集、文章校正、翻訳やプログラミングの補助といった使い方をすれば、生成AIは主体的な学びを助ける優れたツールとなります。一方で、生成AIが出力した内容がそのままレポートとして提出される可能性もあり、学生の成績評価は非常に難しくなってきました。その他、生成された文章に虚偽が含まれる、機密情報や個人情報が意図せず流出する……など、さまざまなリスクも生じています。
今回の通知では、それぞれの学校で具体的に行われている教育の実態に合わせて対応することが要請されています。さらに、生成AI は今後も急速に進歩し、教育面への影響も変化していくと予測されることから、対応は適宜見直していくべきだという指摘も。
なお、今回の通知はあくまで大学・高専を対象としたものです。生成AIの利活用が広がれば、初等中等教育や入試(入学者選抜)での扱いも問題になるでしょう。メリット、デメリットの両面に目配りした適切な対応が求められます。

(参考)

▼大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて (文部科学省)

 

理工系学部の「女子枠」 相次ぐ導入

世界各国と比べ、日本の大学の理工系学部では女子学生が非常に少ないのが現状です。文部科学省は令和5年度大学入学者選抜実施要項(2022年6月通知)において、入学者の多様性を確保する観点から「理工系分野での女子」等を対象とする選抜方式の導入を促しました。これを受け、東京工業大学、名古屋大学、富山大学などが今年度に実施する学校推薦型選抜や総合型選抜から女子枠を設けることを決定。また、以前より女子枠での入試を実施してきた名古屋工業大学、芝浦工業大学などの私立大も、定員や規模のさらなる拡大に乗り出すことになりました。
今年度に入ってからも4月に東京理科大学が総合型選抜での実施を発表するなど、女子枠導入への動きはさらに加速。その後も全国各地の大学が相次いで導入に踏み切っています。
また、女子枠とは別に、女子大学に工学部を新設する動きもあり、2022年度に奈良女子大学に工学部が誕生。2024年度にはお茶の水女子大学に共創工学部が設置されます。
今年5月25日には、東京大学や京都大学を初めとする国立大学法人10大学の理学部が連名で「女子学生の比率が低い状況を是正する」と宣言。女子枠導入に限らず、さまざまなアプローチで理工系学部の女子学生を増やす取組みがこれから本格化しそうです。

(参考)

▼ジェンダーバランスのとれた環境を実現し、多様な人材を育成する理学部に (国立大学法人10大学理学部長会議声明)

 

その他のニュース

◆4月13日:東京都教育委員会が中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)について、2022年度の実施状況と2023年度の実施内容を公表しました。スピーキングテストは2022年度から都内の公立中学校3年生を対象に実施され、都立高校入学者選抜でも活用されています。今年度の実施日は11月26日(日)。なお、今年度から新たに中1生、中2生対象のスピーキングテストも行われます。(年明け1~3月の期間に、各中学校が日を決めて実施。)

(参考)

▼【特設ページ】中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J) (東京都教育委員会)

 

◆4月28日:芝浦工業大学は2024年4月から工学部の学科制を課程制に改組すると発表。専門分野を限る学科制に対し、課程制ではより柔軟に分野横断教育を行えるメリットがあるためです。現在の9学科は5課程・9コースに改組され、学生は入学時に選んだ主コースの他に、他のコースの副専門分野を自由度高く学べるようになります。課程制の導入としては日本最大規模で、首都圏の大学では初のケースです。

(参考)

▼2024年4月に日本最大規模となる工学部の改組を実施 首都圏初の「課程制」本格導入へ (芝浦工業大学)

 

◆5月9日:立命館大学は2023年度入学者選抜から、AI学習プログラムの修了を出願要件に取り入れた独自の総合型選抜を始めていますが、2024年度は新たに薬学部にも拡大して実施すると発表しました。用いられるAI学習プログラム「atama+」では、入学後の学びに必要となる科目を各単元レベルまで細分化して習得可能。前年に実施した3学部が指定した科目は数学でしたが、薬学部では化学が指定されます。

(参考)

▼UNITE Program 第2期 5月9日より出願開始 (立命館大学)

 

◆7月4日:立命館アジア太平洋大学(APU)は今年度から、パソコンやスマホで全国どこからでも受験可能な「スマート入試」を導入すると発表。APUはコロナ禍の時期にいち早くオンライン筆記試験、オンライン面接を導入してきましたが、今回はパートナー企業2社の協力を得て実現した新たなオンライン試験システムを用いて実施。2つのカメラと7つのAIを駆使することで、試験中の不正行為を防止します。

(参考)

▼~パソコンとスマホで全国どこからでも受験可能~ 新たにオンライン試験システム「スマート入試」を導入 (立命館アジア太平洋大学)

 

◆2023年8月21日:兵庫県の齋藤知事は県立大学(兵庫県立大学・芸術文化観光専門職大学)の入学金と授業料について、県内在住者ならば所得に関わらず無償化する方針を表明しました。低所得世帯の学生の学費を免除・軽減する制度がある大学は少なくないですし、2020年に全国で始まった返済不要の給付型奨学金も来年度からさらに拡充されます。しかし、学費自体を無料化してしまうケースは異例。他の公立大にも広がるか、注目されます。

(参考)

▼県立大学の授業料等無償化 (兵庫県)

 

◆2023年8月30日:日本私立学校振興・共済事業団が2023年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を公表し、定員割れに陥った大学が調査開始以来、初めて5割を超えたことがわかりました。集計した大学600校のうち、定員割れの大学は320校に及びます。2010年代にはかろうじて横ばいで推移していた18歳人口は2020年代になって減少局面に突入しており、今後、大学の経営はさらに厳しい局面を迎えることになります。

(参考)

▼令和5(2023)年度私立大学・短期大学等入学志願動向 (日本私立学校振興・共済事業団)

 

◆2023年9月1日:世界最高水準の研究が期待できる大学を認定し、大学ファンドを活用して支援する「国際卓越研究大学」について、文部科学省は東北大学が初めての認定候補に選ばれたことを公表。今後、一定の条件を満たせば正式に認定されます。国際卓越研究大学の初回認定を目指して申請したのは全国の10大学。最終的に東京大学・京都大学・東北大学の3校に絞られ、有識者会議は東北大学の計画・戦略の明確さを評価しました。

(参考)

▼国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)による審査の状況を公表します (文部科学省)

 

◆2023年9月4日:明治学院大学が申請していた情報数理学部の新設が認可され、2024年4月にスタートすることが決まりました。明治学院大学はこれまで文・経済・社会・法・国際・心理の6学部を擁する文系の総合大学として知られ、情報数理学部は初めての理系学部。理系学部への転換を支援する国の方針も追い風となり、これまで文系のカラーが強かった大学が理系(とくに情報系)学部を新設する動きが目立ってきています。

(参考)

▼情報数理学部サイト (明治学院大学)

 

◆9月29日:日本英語検定協会が、英検の「準2級」と「2級」のあいだに新しい級を設けることを発表。英検は高1で準2級、高卒時点で2級を取得することを目標に設定されていますが、「準2級」に比べて「2級」はかなり難しく、なかなか合格できないという声が上がっていました。このギャップを埋めるために31年ぶりに新しい級を導入し、学習者のモチベーション維持をはかるのがねらい。新しい級の検定試験は2025年度から始まる予定です。

(参考)

▼英検に新設級(準2級と2級の間)導入のお知らせ (日本英語検定協会)

 

 

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