「東大化学」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 大幅に易化した2017年度を基点に、年々少しずつ難化している。それでも平易な小問はいくつかあるが、2020年度と比較すると、計算問題が大幅に増加した。
  • 2020年度と同様、すべての大問が中問に分かれており、中問6題であった。小問数でみると、2017年度24問→2018年度29問→2019年度32問と増加傾向にあり、2020年度で31問とわずかに減少したが、2021年度は33問と再び増加した。全体の分量も昨年度より増加した。

2021年度入試の特記事項

  • 出題順は、2017年度以降、第1問:有機、第2問:(理論・)無機、第3問:理論 で定着してきていたが、2021年度は、第1問:有機、第2問:理論、第3問:(無機・)理論 であった(2016年度以前は、第1問:理論、第2問:理論・無機、第3問:有機 の順)。
  • 論述問題はいずれも文字数指定がない形式が定着しつつある。
  • 計算問題の分量が多く、時間内に完答するにはかなりの計算力を要する
  • 昨年同様、無機の知識を必要とする出題が少なめであった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 2017年度以降、難度が上がってきているとはいえ、依然として東大としては平易な問題も多く、合格には高得点が必要になると考えられる。試験時間に対して分量が多いため、解ける問題を優先して解き、得点をしっかりと確保することが重要だっただろう。
  • ところどころに煩雑な計算を要する問題や難度の高い問題が含まれていたため、丁寧に全問を解答するより、時間をかけずに手際よく解き進めていく力が必要。ただし、答が次の設問に連動する計算問題も多かったため、計算ミスには十分気をつけたい。
  • 論述問題には文字数指定がないため、必要なポイントを押さえて的確に論述できたかどうかで差がついただろう。
東大化学を突破するために必要な
「本質の理解」につながる学習ができる!



さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問 

I <有機> 有機化合物の構造決定
C6H12Oで表わされる化合物の構造決定の問題。
ア〜エは、複雑な条件はないため、条件を整理できれば構造決定できる。ただし、特徴的な構造が少ないため、意外と該当の構造を見つけるのに時間がかかるだろう。また、化合物Hの構造決定は、ヘミアセタール構造を有していることに気づくことができたかがポイントであった。

    II <有機> アゾ染料の合成反応
    アゾ染料の合成反応と同位体に関する問題。
    扱われている反応は頻出のものであり、反応の副生成物も設問の文章から判断できるため、全体像はつかみやすい。同位体の計算は平易であり、最後の論述問題も、実験内容から推察すれば難しくないだろう。

     第2問  

    I <理論> 化学平衡
    水素吸蔵物質に関する化学平衡の問題。
    ウのグラフ選択問題以外は全て計算問題であり、計算にかなりの時間を要する。実験1、実験2は似たような条件であるが、それぞれ条件に応じて何がどのように変化するかを理解する必要がある。計算においては、水素の吸蔵が始まると水素の分圧が(式1)の圧平衡定数と等しくなることに気づけるかがポイントであった。キは、立式だけして計算を後回しにするのも一つの作戦だろう。

    II <理論> アミノ酸、反応速度
    タンパク質を題材とした、アミノ酸、熱化学、反応速度に関する問題。
    クは、アミノ酸の中和滴定における滴定曲線を選ぶ問題であり、(5)と(6)のグラフの違いに困惑した受験生もいただろう。コの熱化学に関する問題は平易。サは、立式は容易にできるが、単位に注意する必要がある。ケは、穴埋め問題ではあるが、着眼点が目新しく、思考力を要する

     第3問 

    I <理論・無機> モール法
    モール法(沈殿滴定)に関する問題。
    対照実験により、滴定の終点と当量点の差を補正しているが、計算などへの影響はない。アとイは、数少ない無機の知識を必要とする問題であった。ウ〜オは、モール法に関する問題としては頻出であるが、エでは当量点において(滴下したAgの物質量)=(試料水溶液に含まれていたClの物質量)の近似を用いることができないことに注意したい。計算量も多く、演習量によって差がついただろう。

    II <理論> 水素吸蔵合金
    水素吸蔵合金の結晶構造に関する問題。
    カを除き、数学的な要素が強い内容であった。キの原子どうしの距離を求める問題は、見慣れていない受験生も多いだろうが、図をもとに考えれば正答を導ける。 コは、水素を吸蔵した合金の体積を求める問題で、立式は難しくないが、計算が非常に煩雑である。

     攻略のためのアドバイス

    2017年度以降、見慣れない題材について長いリード文を読むような問題はなりを潜めていたが、高校化学で扱わない内容を考察する問題として、また少しずつ姿を見せ始めている。出題傾向の変化に関わらず、必要とされる力そのものに大きな変化はない。基本的な事項を、暗記するだけではなく深く理解しておくことはもちろん、例年どおりの難度の高い応用問題が出題されても対応できるだけの十分な力をつけておくべきである。

    東大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。

    ●要求1●難問に対応する思考力と応用力

    東大化学では、高校で学習する内容をそのままあてはめるだけの問題も出題されるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて考える問題である。よって、基礎力の確立と、それを柔軟に使いこなせる思考力、応用力の養成が求められる。全分野において法則を正しく使いこなせるようになるのが第一である。

    ●要求2● 長い問題文を短時間で読み解く読解力

    東大化学では、実験操作や高校化学の範囲外の内容などに関する長い問題文を読み、題意を読み取り解答する問題が出題される。限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に理解する力が要求される。見慣れない題材・実験にも臆さないよう、他大学の過去問(京大・阪大といった難関大)にも目を向けて演習しておくとよい

    ●要求3●計算問題の解答時間を短縮する計算力

    煩雑な計算問題が出題される東大化学では、計算力を身につけることが必須である。ふだんの問題演習では、電卓を使用したり、頭の中だけで考えたりするのではなく、実際に手を動かして計算し、計算自体に早いうちからしっかり慣れておこう

    対策の進め方

    まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。近年の東大化学では、応用問題を解くうえで前提となる標準的な内容を確実に押さえることが、よりいっそう求められている。また、有機の「高分子化合物」の単元は対策が遅れがちなので、とくに意識して取り組んでおきたい。Z会の大学受験生向けコース[本科]「東大コース」Z会の本『化学 解法の焦点』などを利用して、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めよう。

    高校化学全般の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。Z会の通信教育でも、さまざまなタイプの添削問題を通して、演習を積んでいく。

    演習を順調にこなしていけるようであれば、●要求3●もある程度は満たされていくであろう。自分の得意不得意、問題の難易度などを意識し、解答時間内で得点を最大化できるような自分の解き方を身につけてほしい

    Z会で東大対策をしよう

    Z会東大化学担当者からのメッセージ

    今年の東大化学は、近年の傾向と同様、奇抜な題材は少なく、東大受験生であれば見覚えのある題材が中心でした。ただし、問題の分量が2016年度以前の水準にほぼ戻り、また手間のかかる計算問題や難度の高い問題が数多く含まれていたため、かつてのように「解かない問題を見抜く力」も必要なセットだったといえると思います。

    したがって、まずは標準的な問題を確実に正解したうえで、差がつく問題をできるだけ多く正解して、高得点をめざしたいところです。分量が多いので、解く問題に優先順位をつけ、試験時間内にすばやく処理する力が求められるでしょう。

    また、高校化学で扱わない内容について考察する問題も、また少しずつ出題されるようになってきています。日頃の演習や過去問演習をとおして、通り一遍の学習をするのではなく、「この現象はなぜ? この操作は何のために行っている?」ということを常に考えながら学習を進めていくとよいと思います。

    Z会の大学受験生向けコース[本科]「東大コース」では、このような盲点になりがちな箇所を突く出題をしていきます。東大受験を目指す方には、表面的な理解にとどまらない、本当の学力を身につけていただきたいと思います。

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