Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
Z会英語担当者からのメッセージ
2024年度の東大英語は大きな形式面での変更はなく、例年通りの出題となりました。
東大は大学のHPにて、「(高等学校段階までの学習で)その言語についての正確な知識に裏打ちされた論理的な思考力の養成に努めて」「ときにその言語の背景にある社会・文化への理解を要求する問題が出題される」と明言しており、英語の入試問題はまさにこのメッセージが含まれた出題となっています。
また、東大英語の英文は、決して語彙・内容面で難しいものではありませんが、意味を理解しただけでは得点につながらない問題がほとんどです。つまり、解答を作成するための日本語・英語での記述力こそが最大のポイントとなります。リスニングや自由英作文、和文英訳など、あらゆる設問形式に対応する力をバランスよく身につけることも必要です。
Z会の「東大講座」では、東大の入試を分析し尽くした上で練り上げた良質な問題を出題。東大で出題されるさまざまな設問形式に対応しているため、豊富な問題演習を行えるだけでなく、日本語・英語での柔軟な記述力を身につけることができます。また、プロの添削者による個別の添削指導を通して、その記述力を確かなものへ高めることができます。Z会で問題演習を重ねて答案の質を高め、一緒に東大合格を勝ち取りましょう!
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化
- 分量:変化なし
- 難易度:標準
2024年度入試の特記事項
- 【1(B) 長文読解】5年連続で語句整序問題が出題された。
- 【2(A) 自由英作文】2つの主張のうち1つを選び、それに対する自分の考えを述べる新傾向の問題が出題された。
- 【2(B) 和文英訳】訳すべき和文の分量が増えた。
- 【3 リスニング】 2023年度に引き続き、ダイアローグ形式の出題があった。
- 【5 長文読解】例年通りエッセイ風の英文からの出題で、語数が2023年度から150語程度増加した。
合否の分かれ目はここだ!
- 例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。
- 120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、確実に得点した上で、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい。
さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
1(A)要約
- 英文の内容を70〜80字の日本語で要約する問題で、英文の長さは2022年度以降は400語程度と変化なし。
- 英文では、宣伝活動について「プロパガンダ」という語自体の意味を絡めながら述べられている。
-
例年通り、英文の内容としては決して理解しづらいものではないが、制限字数内に収めるためにポイントを取捨選択する作業は困難だっただろう。また、「プロパガンダ」という表現の用い方や、最後の段落の内容の含め方に迷ったと思われる。
1(B)長文読解(文補充、語句整序)
- 文補充問題(ア)と語句整序問題(イ)が出題された。
- 「新聞と雑誌の記事の書き方」についての英文。語数は選択肢を含めて約980語で、2023年度より減少した。
- (ア)の文補充では、空所は例年同様5箇所であったが、不要な選択肢は2023年度から減り、1つとなった。不要な選択肢の数は、2020年度以降、増減を繰り返している。空所前後の流れと、空所を含む段落のトピックを把握するという、文補充の基本的な解き方に従えば、正解に辿り着くのはそれほど大変ではなかっただろう。
- (イ)の語句整序では、該当箇所の語数は14語であったが、並べ換える要素の数は12個であった。語数・要素の個数は、2022年度からおおむね増加傾向にある。難度は標準的であった。
2(A)自由英作文
- 与えられた2つの主張から1つを選び、理由を添えて考えを述べるという、初めて出題される形式の自由英作文。解答の語数は例年通り60〜80語。
- 「紙」と「自転車」のいずれも身近なものであり、難しい語句をあえて使わなくても書けるので、2つの主張のうち、どちらを選んでも取り組みやすかったと思われる。
- 例年さまざまな題材をもとに自由な発想が求められつつも、客観的な視点を持っているか、説得力のある根拠を提示できるかが問われている。柔軟かつ論理的な思考を養うようにしよう。
2(B)和文英訳
- 例年通り下線部の日本語を英訳する問題。1文の英訳だった2023年度と異なり、2文の英訳が求められ、訳すべき和文の分量が増えた。
- 「…されたあかつきには」「まさに…に照らして」など一部訳出しにくい箇所も見られたが、表現しやすい日本語に読み換えた上で英訳することができれば、大きな困難はなかっただろう。
- 第1文が長く、文構造がやや複雑になりがちなため、冠詞や時制など細かい部分でのミスや修飾語句などの訳しもれに注意が必要であった。
3 リスニング
- 例年通り、中問が(A)〜(C)の3つあり、2022年度・2023年度と同様にすべてが独立した内容の問題であった。2023年度に引き続き、ダイアローグ形式の出題があった。
- 例年通り、設問文・選択肢ともにすべて英語であった。問題数は中問(A)〜(C)ともに各5問あり、選択肢は各5つあった。。
- 設問の該当箇所を特定しやすく、全体として、比較的取り組みやすい出題であった。
(A)「スエズ運河の封鎖事故」について解説した記事
- (6)は What do you think the speaker meant by this? という、放送中の表現の意図を問う問題で戸惑った人もいたかもしれないが、absurd と frightening の意味を考えれば、正解に辿り着くのは難しくなかっただろう。
- 全体的には、正解の根拠となる箇所を特定しやすく、選択肢でも放送される表現をわかりやすく言い換えているので取り組みやすかったと思われる。
(B)「配送業が抱える問題」に関するラジオ番組
- (14)は紛らわしい選択肢が含まれており、正解の根拠となる箇所の that free delivery isn’t really free の “free” の意味を前後の文脈から正しく把握する必要があった。
- 2023年度と同様に、放送された内容と一致しないものを選ぶ問題が出題された。
(C)「パプア・ニューギニアの言語的多様性」についての講義
- 抽象度の高い内容だった2023年度と比べると、言語という馴染みのあるテーマで、理解しやすかっただろう。
- (17)では数字の聞き取りが問われた。
- (19)と(20)では放送された内容を端的にまとめた選択肢を選ぶ必要があった。
4(A)文法
- 6年連続で、英文中の下線部から誤りを含むものを選ぶという正誤問題が出題されている。英文は5つの段落に分かれており、各段落にそれぞれ5つの下線が引かれているという点も例年通り。
- 「心拍と時間の感覚との関係」について述べた英文。語数は約440語で、2023年度から大きな変化はない。
- 例年、文法・語法面からだけでなく内容面からも誤りの有無を判断する必要があるが、2024年度はその点について、「文法上または内容上の誤りがある」と設問文にも明記されていた。問われている文法・語法のレベルは例年通り基本的なものが大半であったが、特に(24)は文法・語法上の誤りは含んでいないため、文脈を正確に把握していないと正解するのが難しかった。
- 英文内容を把握しにくく、誤りを含まない箇所についても「正しい」と確信を持ちにくいことから、正解を絞り込む際に迷った人もいただろう。確かな文法・語法知識と高い読解力の両方が求められる設問である。
4(B)英文和訳
- 例年通り、英文中の下線部を和訳する問題。
- 動物と人間に対する筆者の子供の頃の考えを述べた、約320語の英文であった。
- 和訳する下線部は3箇所で、例年と変化なし。内容を明示して和訳する問題は出題されなかった。
- 文構造はおおむね把握しやすかっただろう。修飾・非修飾関係や代名詞、前置詞など、細かな部分まで正確に訳出したい。
- (ア)の rip handfuls out は単語自体の意味を知らなくても、文脈から推測して訳出できるとよかっただろう。
5 長文読解
- 「歩くこと」を軸に母国ジャマイカとアメリカでの筆者の経験について書かれた、エッセイ風の英文からの出題。英文語数は約960語で、2023年度より150語程度増加した。
- 時系列に沿って話が展開されていて、エッセイや小説特有の省略や口語表現等も多く見られなかったため、正しく内容を把握するのはそこまで難しくなかっただろう。
- 客観式問題+記述式問題混合。問題の形式・分量ともに、2023年度から大きな変化はないが、2023年度に下線部の説明として適切なものを選ぶ問題が出題された(D)(ウ)が、例年通り、本文の内容と一致するものを選ぶ問題に戻った。
- 設問は比較的取り組みやすいものが多かったと思われる。特に(C)は例年に比べて書くべき内容が判断しやすく、該当箇所の訳出もしやすかっただろう。客観式問題(D)(イ)は空所を含む文に否定語が複数含まれるため、文意の把握がややこしく、注意が必要であった。
攻略のためのアドバイス
東大英語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。
難易度が高い語句はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にしたり、基本語の盲点となる用法を設問としたりすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない。
●要求2●高度なリスニング力を身につけよう。
東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしており、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。
●要求3●時間管理力をつけよう。
東大入試英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な問題に適切に解答できるかどうかである。
まずは時間を意識して問題を解くこと。要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから答案作成→第三者による添削→添削内容の習得・答案改善のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない。
対策の進め方
まずは基礎力の完成を目指すこと。文法事項を網羅的に習得した上で、さまざまな英文を正確に読めるようにしておこう。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい。
基礎力が身についたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう。
最後に、自分で納得できる答案を試験時間内に書けるような時間配分を感覚として身につけておいてほしい。試験本番は必要以上に時間をかけて問題に臨んでしまい、時間配分がうまくいかないこともある。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、問題に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける。
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