東大英語

2025年度「東大英語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会英語担当者からのメッセージ

東大英語の英文は、決して語彙・内容面で難しいものではありませんが、意味を理解しただけでは得点につながらない問題がほとんどです。つまり、解答を作成するための日本語・英語での記述力こそが最大のポイントとなります。リスニングや自由英作文、和文英訳など、あらゆる設問形式に対応する力をバランスよく身につけることも必要です。

Z会の「東大講座」では、東大で出題されるさまざまな設問形式に対応した、豊富な問題演習を行えるだけでなく、日本語・英語での柔軟な記述力を身につけることができます。また、プロの添削者による個別の添削指導を通して、その記述力を確かなものへ高めることができます。



今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 分量は2024年度並み
  • 難易度は2024年度並み

2025年度入試の特記事項

  • 難易度については、全体として目立った変化は見られず、例年通りであった。
  • 【2(A) 自由英作文】1つの主張について意見を述べる形式となった。
  • 【5 長文読解】設問の形式が大きく変わり、下線部の適切な言い換えを選ぶものが多く出題された。

合否の分かれ目はここだ!

  • 例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、確実に得点した上で、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい

さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 1(A):要約(科学の発達による「死」を定義することの難しさ) [標準] 

  • 例年通り英文の内容を70~80字の日本語で要約する問題。英文の長さについては2022〜2024年度は400語程度で変化がなかったが、2025年度は70語程度減少した。
  • 英文では、科学の発達による「死」を定義することの難しさについて、あるサイエンスライターの言葉も交えながら述べられている。
  • 具体的に要約に含める部分の選択に迷ったかもしれないが、英文の要旨は明確であり、例年に比べると取り組みやすかったと思われる。

 1(B):文補充、語句整序(人間のみの能力である言語の特徴) [標準] 

  • 「人間のみの能力である言語の特徴」についての英文。語数は選択肢を含めて900語強で、2023年度から減少が続いている。
  • (ア)の文補充では、2024年度同様空所は5箇所、不要な選択肢は1つであった。ただし、不要な選択肢の数は、2020年度以降、増減を繰り返している。空所前後の流れと、空所を含む段落のトピックを把握するという、文補充の基本的な解き方に従えば、正解に辿り着くのはそれほど大変ではなかっただろう。
  • (イ)の語句整序では、並べ換える要素の数は8個で2024年度の12個から大幅に減少し、並べ換え自体も from A to B における the study of ~ の対比構造に気づけば取り組みやすいものであった。ただし、speech の扱いに迷った受験生は多かったであろう。

 2(A):自由英作文(「意見を言わないということは同意することを意味する」という主張について、どう考えるか)[標準] 

  • 「意見を言わないということは同意することを意味する」という主張について、どう考えるかを理由とともに述べる自由英作文。
  • 2024年度は2つの主張から1つを選ぶ形式だったが、1つの主張について意見を述べる形式となった。
  • 解答の語数は例年通り60~80語。「沈黙は肯定を意味する」といった表現を耳にしたことはあると思われるが、これに同意するにしても反論するにしても説得力のある理由を短時間でまとめるのは難しいだろう。
  • 文法・語法のミスなく、読み手が納得しやすい形で論理的に述べることが求められた。

 2(B):和文英訳(土地を持つ者と持たない者) [標準] 

  • 例年通り下線部の日本語を英訳する問題。和書からの引用文で、出典は坂口恭平『モバイルハウス 三万円で家をつくる』(一部改変)。
  • 下線部が長い1文であるため、文構造が複雑になりすぎないよう複数文に分けて訳すなどの工夫が必要で、前後の繋がりに注意しつつ適切な接続表現を使用する力が試された。
  • 下線部の日本語の内容自体は、解釈に悩むような表現は少ないが、適切な主語を補ったり、訳しやすい日本語へ言い換えたりする工夫が求められた。

 3:リスニング [標準] 

  • 例年通り(A)、(B)、(C)の3題構成で、各5問・選択肢5つという形式も変化なし。
  • 中問(A)〜(C)は2022〜2024年度と同様にそれぞれ独立した内容の問題であったが、(A)と(B)は「蝶」という共通の話題が題材となっていた。2023、2024年度に引き続きダイアローグ形式の出題があった。
  • 全体としては、設問の該当箇所を特定しやすく、比較的取り組みやすい出題であった。

(A)「北米の蝶の長距離移動」についての文章

  • (7)は、蝶の世代による特徴を聞き取りで正確に理解するのはやや難しかったかもしれない。
  • (10)は正解の選択肢の意味が捉えづらかったかもしれないが、「今(now)」に関する質問であることに注意して、終盤の My milkweed has just emerged from the soil という部分を聞き取ることができれば、他に当てはまるものはないと判断できただろう。

(B)「蝶の生態」に関するラジオ番組

  • 全体としては該当箇所がわかりやすく、紛らわしい選択肢もあまりなかった。
  • (12)は該当箇所の説明が細かく、聞き取りでは詳細を理解しづらかったかもしれないが、要旨を理解した上で、それを arrangement と一言でまとめた選択肢の意味がわかれば正解できただろう。

(C)「都市の植生」についての講義

  • (17)の誤った選択肢を選ぶ問題は、「十分な対策ができていない」という論旨だけの理解では正解を判断できない問題であった。
  • (19)は as they compete for light and nutrients という終盤の内容が、「他の木が原因となって(木が死ぬ)」という理由を表しているという難度の高い言い換えの理解が求められた。

 4(A):正誤問題(ゲームにおけるルールの在り方) [標準] 

  • 7年連続で、英文中の下線部から誤りを含むものを選ぶという正誤問題が出題されている。英文は5つの段落に分かれており、各段落にそれぞれ5つの下線が引かれているという点も例年通り。
  • 英文は「ゲームにおけるルールの在り方」について述べた内容。語数は約460語で、2024年度からわずかに増加した。
  • 例年、文法・語法面からだけでなく内容面からも誤りの有無を判断する必要がある。2024年度は文法・語法上の誤りは含まず、内容面の誤りのみから正答を導く必要のある設問も見られたが、2025年度は基本的な文法・語法についての知識があればおおむね正答を導くことが可能であった。
  • 抽象的な英文であったため、内容を把握しにくく、誤りを含まない箇所についても「正しい」と確信を持ちにくいことから、正答を絞り込む際に迷った人もいただろう。確かな文法・語法知識と高い読解力の両方が求められる設問である。

 4(B):下線部和訳(検閲の起源とそれに対する人々の行動) [標準] 

  • 検閲の起源とそれに対する人々の行動について述べた約270語の英文。2024年度からは50語ほど減少した。
  • 和訳する下線部は3箇所で、例年と変化なし。内容を明示して和訳する問題は出題されなかった。
  • 文構造は難しいものではなかったが、適切な訳語をあてるのが難しい語や表現が多く、文脈を正確に理解した上で訳す必要があった。
  • 特に(イ)は got it や succeeding の訳し方に注意が必要。

 5:長文読解(ラマダーンについてのエッセイ) [標準] 

  • イスラーム信徒にとっての重要な期間であるラマダーンについて、筆者の経験をもとにつづったエッセイからの出題。英文語数は約900語で、2024年度より60語程度減少した。
  • 多くの受験生にとってなじみの薄い題材ではあるが、英文自体は平易で意味をつかみづらい表現も少なかったため、正しく内容を把握するのはそこまで難しくなかっただろう。
  • 記述式問題では、例年出題されていた語句整序問題が出題されなかった。また、例年内容説明問題2問が出題されていたが、内容説明と下線部和訳の各1問となるなど、全体的に取り組みやすくなった
  • 例年6問出題されていた共通の選択肢群での単語の空所補充問題が出題されず、本文から1語を抜き出して答える空所補充問題が1問出題された。
  • 客観式問題では、本文との合致を判断する問題の他に、語義を問うものや、下線部と意味内容が最も近いものを選ぶもの、空所補充が出題された。単語は平易でも意味の取りにくい英文を文脈を踏まえて理解することや、本文全体に散らばった該当箇所を探して正誤を判断することが求められた。

攻略のためのアドバイス

東大英語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。

難易度が高い語句はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にすることや、基本語の盲点となる用法を設問とすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない

●要求2●高度なリスニング力を身につけよう。

東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしており、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。

●要求3●時間管理力をつけよう。

東大英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な量の問題に適切に解答できるかどうかである。まずは時間を意識して問題を解くこと。大意要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから〈答案作成→第三者による添削→指摘された内容をふまえての答案改善〉のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない。

東大英語攻略のために
基礎力の完成

文法事項を網羅的に習得した上で、さまざまな英文を正確に読めるようにしておくこと。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい。

精度の向上と時間管理

基礎力が身についたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう。

過去問を使った演習

試験本番では必要以上に時間をかけてしまい、時間配分がうまくいかないこともあるだろう。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、出題構成と問題量に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける。


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