2025年度「東大物理」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会物理担当者からのメッセージ

2025年度の東大物理は、ここ数年間の中では比較的解きやすかったといえます。とはいえ、考察レベルは非常に高度です。解答可能な設問を見極めて確実に得点できた人が合格圏に達したと考えられます。

東大物理の問題は、基礎的な理解を土台として考察できるように工夫された問題ですので、まずは基本事項に対する理解を深め、その上で理解した基本事項をどう適用して問題を解くのかを、良質な問題を解くことで養成していきましょう。良質な問題は、基本の理解が不十分であったことを気づかせてくれるはずで、その気づきによってさらに対応力も身についていきます。

そのための演習問題としては、東大の過去の出題傾向を十分に研究したZ会の通信教育が有効です。無理なくステップを踏みつつ、添削指導による記述力の養成を含めて合格のための力を身につけることができるように構成されています。粘り強い演習を積み重ねて、東大合格を勝ち取りましょう!



今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 難易度は2024年度から易化
  • 分量は2024年度から変化なし

2025年度入試の特記事項

  • 難易度が高かった2023、2024年度と比べると、比較的手をつけやすい問題が多かった。
  • 第2問は計算がほとんど不要で、グラフ選択・グラフ描画・回路図の選択を中心とした出題だった。

合否の分かれ目はここだ!

2025年度は極端に難しい問題はなかったが、試験時間の割に問題量が多いので、速く正確な計算力が要求される。手がつけられそうな問題を選んで、ミスなく解答することが求められた。

第1問は、冒頭のⅠから思考力が求められた。「それぞれのおもりにかかる力をすべて描いて考える」という力学の大原則に忠実に焦らず解き進めたい。第1問は設問ごとの難易度差があまりない(つまり簡単な設問がない)ので、時間との勝負でどこまで計算ミスなく解き進められたかで差がついただろう。

第2問は、計算が少ない(検算しにくい)分、ミスをすると気づきにくい。Ⅱ(2)のグラフ選択、Ⅱ(4)の回路図の選択、Ⅲのグラフ描画で差がつく。すぐにわからない場合は、考えすぎて時間を浪費しないように気をつける必要がある。

第3問では、Ⅰは確実に解き進め、Ⅱも時間が許す限り(できれば(2)までは)解きたい。

2025年度は、難易度、分量、時間を考慮すると、理科一類・二類は6割程度、三類は7割強が合格圏の目安だと思われる。

さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  力学 [標準]
3個のおもりを3本の棒で固定した物体の床上での運動

3本の棒が直角二等辺三角形をなし、その3つの頂点におもりを固定した物体の運動についての大問。床上にないおもりに糸をつけて水平方向に力を加えたときに、傾いたり滑ったりする様子について考察する。

  • Ⅰでは1個のおもりが床に固定されている。「複数の棒から受ける力」を演習する機会はそう多くはないので、各棒からどちら向きに力を受けるのか、何の式を立てるのかなど、Ⅰから悩んだ人も少なくないだろう。
  • Ⅱ以降はおもりを固定せず、1個のおもりに床から摩擦力が働く場合を扱う。設定に忠実に3個のおもりそれぞれについて力のつり合いや、力のモーメントのつり合いの式を立てていけばよい。一方で、3個のおもり(と棒)を一体(1つの物体)とみなして考える視点も必要である。

 第2問   電磁気 [やや難]
ソレノイドがつくる磁場により円形コイルが受ける力

  • Ⅰではソレノイドの基本的な性質が問われた。
  • Ⅱでは1巻きの円形コイルをソレノイドの中心軸に沿って動かしたときにコイルが受ける力について考察する。力の大きさが変化する様子を選ぶグラフ選択では、向きや大きさの変化に悩んだ人も多いだろうが、力が一定とみなせる範囲や、力が最大・最小になる位置に着目したい。
  • Ⅲでは、ソレノイドのかわりに別の円形コイルを設置した場合について考える。
  • 大問全体を通して計算がほとんどなく、磁場や電磁誘導、回路に対する定性的な理解が問われた。

 第3問   熱力学 [標準]
台車の衝突の影響を受けるピストンつき断熱容器

台車との衝突の影響を受けるピストンつき断熱容器内の気体と台車のふるまいについて、エネルギーの移り変わりや温度変化、体積変化などを考察する。Ⅰは断熱容器が1部屋だけの場合、Ⅱは壁によって2部屋に分かれている場合である。冒頭でポアソンの法則が与えられているため、これと気体の状態方程式を用いてエネルギーの変遷を考えればよいのだが、式変形がやや手間である。

 攻略のためのアドバイス

東大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 読解力

東大物理は、問題文の中に解答のカギとなる設定が記述されていたり、前半部分の設問が後半部分の設問のヒントになっていたりすることがある。分量も多く、時間的にも厳しいだけに、効率的に解答するためにも、解法の絞り込みや設問どうしの関連を意識しつつ、問題文を読み取る習慣を身につけたい。

●要求2● 現象を解釈する力

正解を得るためには、まずは、1)状況を正しく把握すること、次に、2)起こっている現象を原理や法則の観点から見極めること、そのうえで、3)設問に応じて的確に数式に落とし込むこと、が重要。近年の東大物理では、2)がカギを握ることも多い。また、3)のあとの正確な数式処理力も、正解への到達には不可欠。

●要求3●適切に記述する力

東大物理では、解答の自由度が高い解答用紙に、設問ごとに適切な解答を記述する必要がある。しかし、スペースには限りがあるため、ムダのない簡潔な解答が求められる。このような解答を作る力は、答案を書く練習を繰り返しながら身につけるしかない。

対策の進め方
基礎力の完成

まずは、要求2を満たすことを目指そう。学校の授業を大事にして、高校3年の夏までには、基礎事項を完成させたい。

レベルUP

東大物理は、とくに設問の後半になるほど、要求2の1)、2)のレベルが高くなり、解答の方針を立てるのも難しくなるが、要求1で述べた読解力が身につくと、解答の見通しがよくなる。このような構成の問題をクリアできるようになるには、良質なだけでなく、難易度としても適切な問題への取り組みが不可欠である。Z会の通信教育では、この点を踏まえた出題をしている。

東大レベルの演習

ここまでの学習が順調であれば、要求3もある程度は満たされているはずである。最後は、東大型の問題演習に取り組もう。即応した問題を解くことで、さらなる上乗せを期待できる。


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