Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
Z会物理担当者からのメッセージ
2024年度の東大物理は、2023年度ほどではないにしても、時間の割に分量が多く、時間内にすべてに目を通すことも困難だったかもしれません。とはいえ、例年同様に、基本的な考え方をもとに、題意を素直に解釈して、学習したことを応用する力が問われる問題でした。難問ばかりとは言っても、解答可能な設問は見つかるはずで、これを見極めて確実に得点できた人が合格できたと考えられます。
東大物理の問題は、基礎的な理解を土台として考察できるように工夫された問題ですので、まずは基本事項に対する理解を深め、その上で理解した基本事項をどうつなげて問題を解くのかを、良質な問題を解くことで養成していきましょう。良質な問題は、基本の理解が不十分であったことを気づかせてくれるはずで、その気づきによってさらに対応力も身についていきます。
そのための演習問題として、東大の過去の出題傾向を十分に研究したZ会の通信教育、本科「東大講座」が非常に有効です。本科「東大講座」では、無理なくステップを踏みつつ、添削指導による記述力の養成を含めて合格のための力を身につけることができるように構成されています。また、特講「過去問添削 東大物理」では、本番のシミュレーションとして実際の東大物理の問題を演習できます。演習を繰り返すことで、本番であわてることなく取り組んで、合格を勝ち取りましょう。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)
- 難易度が極端に高かった2023年度に比べれば易しくなり、2022年度程度の難易度に戻った。
- 要求される考察のレベルは非常に高く、問題の分量は2023年度並に多い。
2024年度入試の特記事項
- 数式で表せる現象が中心だったためか、グラフ選択・穴埋め形式の設問がなく、計算問題が多かった。
- 微小量の近似計算や微積分の考え方を使った計算のような、高度な数学的処理はなかった。
- 2022年度以前のように、前半の設問は易しく、後半に進むにつれて難易度が上がる構成に戻った。
- 難関大志望者には馴染みのある状況設定なので、比較的イメージしやすかったと思われるが、次々と変わる状況に正確に対応するのが難しかった。
合否の分かれ目はここだ!
- 難易度の高かった2023年度に比べれば、手がつけられない問題のセットではなかったと思われる。手がつけられそうな問題を選んで、ミスなく解答することが求められた。設定の変化に応じた状況把握が正しくできれば、解答できそうな設問を選択するのはそう難しくはない。試験時間の割に問題量や計算量が多いので、素早い判断力かつ早く正確な計算力が要求される。
- 第1問では、ⅠおよびⅢ(1)(2)を必ず正解したい。ⅡおよびⅢ(3)(4)の出来で差がつく。
- 第2問では、Ⅰ(1)(2)は必須。以降は、後半に進むにつれて難しくなるが、設問ごとの難易度の差はあまり大きくない。状況把握力および素早く正確な計算力によって、第2問全体の得点に差がついたと思われる。
- 第3問では、Ⅰを必ず正解したい。Ⅱをどれだけ要領よく計算できるかで差がつく。
- 難易度、分量、時間を考慮すると、すべてに手をつけるのは難しく、全体で6割できていれば合格圏に達したと思われる。
さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
第1問 力学 [やや難]
ベルト上の物体の運動、単振動、重心運動、相対運動
- 斜めに設置されたベルト上の物体の運動を考察する。等加速度運動、重心運動、相対運動などを扱う。
- Ⅰではベルトが静止しており、ベルト上の物体は等加速度運動を行う。(2)では答の正負に注意。
- Ⅱ以降、ベルトは一定の速さで動く。Ⅱは(1)と(2)で異なる初速度で置かれた物体の、その後の速度を求める。物体がベルトに対して静止することがあるかないか、正しく判断して答える必要があった。
- Ⅲでは、ばねでつながれた2物体がベルト上にあり、上側の物体だけがベルトから摩擦力を受ける場合を扱う。2物体が静止している(2)までは解きやすい。(3)では重心Gの速度を求めるが、2物体からなる系に働く外力の和が0なので、系の運動量の和が保存されることに気づくことができれば、すばやく処理できる。(4)は重心Gから見た2物体の単振動に関する設問である。重心Gから見た2物体の初速度の大きさと向き、およびその後の単振動をイメージできたかどうかがポイント。そのイメージがつかめれば、問題文に盛り込まれたヒントを使って答にたどりつけただろう。続く(5)と(6)は、上側の物体の速度が大きくなってベルトと同じ速度になった後の運動を扱う。今度は、上側の物体から見た下側の物体の初速度の大きさと向き、およびその後の単振動のイメージが重要となる。
第2問 電磁気 [標準]
コンデンサー、金属板間に生じる引力
- 固体中に電荷が固定された物体はエレクトレットと呼ばれ、そのモデルを用いた装置を考える。
- 電荷を帯びた水平な金属板が1枚あり、その上下を誘電体で挟み、さらにその上下を、抵抗とスイッチからなる導線でつながれた金属板で挟む。一番上の金属板のみ上下に移動可能で、この金属板にはばねが取り付けられている。3枚の金属板はコンデンサーを形成する。
- Ⅰの前半は、金属板の電位や電荷を求める基本的な問題。Ⅰの後半は、金属板の力のつり合いや電位を考える問題で、電場に関する正確な理解と計算力が要求された。
- Ⅱでは、複数の操作により回路が元の状態に戻るまでの、抵抗の発熱量などを求める。おもりに働く重力の仕事が抵抗の発熱量の合計になるという見通しが立ち、それによって多少は緩和されるものの、全体的にかなりの計算量を要する。
- ばねが自然長の状態での金属板の高さとも、つり合い位置での金属板の高さとも異なる位置に、座標軸の原点が設定されているので、弾性力の計算に手間取る。その他、状況把握という観点では、金属板に蓄えられる電荷の変化や、おもりを載せられたことで生じる、ばねが取り付けられた金属板の上下動の様子を正確にとらえる必要があった。
第3問 波動 [標準]
ドップラー効果、うなり
- 同一直線上に音源、観測者、反射板があり、それらが静止していたり、一定速度で運動していたりする状況下で、観測される振動数やうなりを計算する。時刻も問われるので、時刻とともに変化する、音源、観測者、反射板の位置関係やそれらの距離の把握が必要となる。
- 音源の振動数が一定の場合をⅠで、音源の振動数が一次関数的に変化する場合をⅡで扱う。
- Ⅱ(3)(4)は、音源からの直接音の振動数と反射板での反射音の振動数のどちらが大きいかに迷う。ここは、答で使用できる文字を確認しつつ、要領よく計算する柔軟性が求められた。
- 物理的に難しいわけではないが、計算ミスをしやすい問題であった。
攻略のためのアドバイス
東大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 読解力
丁寧な説明や誘導が東大物理の特徴の一つ。現象や原理の説明が長い文章で示されることがある。長い文章の中には、解答のヒントが含まれているものである。したがって、東大物理の攻略には、限られた時間で文章から現象を正確に読み取る力が不可欠である。
●要求2● 現象を解釈する力
正解を得るためには、問題文から読み取った現象を、教科書レベルの原理、法則を用いて解釈する力が必要である。まずは、基本事項の理解を深めることを目指そう。
●要求3●適切に記述する力
東大物理では解答の自由度が高い解答用紙に、設問ごとに適切な解答を記述する必要がある。適切に解答する力は、答案を書く訓練を繰り返しながら身につけるしかない。
対策の進め方
まずは、●要求2●を満たすことを目指そう。独学が困難な物理は、授業を大事にしたい。高校3年の夏までには、基礎事項を完成させたい。
次の段階として、基本事項を東大レベルの問題に応用できる力を高めよう。そのためには、問題の意図を的確につかむこと、つまり、●要求1●を満たす必要がある。このためには、良質な問題を数多く解いておきたい。Z会の通信教育では、読解力を養うのに最適な良問を提供している。
ここまでの学習が順調であれば、●要求3●もある程度は満たされているはずである。最後は、東大型の問題演習に取り組もう。即応した問題を解くことで、さらに数点の上乗せを期待できる。
Z会でできる東大対策
大学受験生向け東大講座
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