2024年度「東大化学」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会化学担当者からのメッセージ

今年の東大化学でも、近年と変わらず見慣れない題材に関する出題がみられ、問題文中で与えられた情報を読み取って適用する対応力が必要となりました。2023年と比較してやや易化したものの、問題の分量は2016年度以前の水準が続いており、ところどころに高度な思考力や計算力を要する問題、難度の高い論述問題も含まれていたため、かつてのように「解かない問題を見抜く力」も必要なセットだったといえると思います。
したがって、まずは標準的な問題を確実に正解したうえで、差がつく問題をできるだけ多く正解して、高得点をめざしたいところです。分量が多いので、解く問題に優先順位をつけ、試験時間内にすばやく処理する力が求められるでしょう。
また、2023年と比較して論述問題の数が増加しています。日頃の演習や過去問演習をとおして、通り一遍の学習をするのではなく、「この現象はなぜ?」「この操作は何のために行っている?」ということを常に考えながら、それらを自分の言葉で説明できるか、という点に意識を向けて学習を進めていくとよいと思います。Z会の通信教育講座では、このような盲点になりがちな箇所を突く出題をしていきます。東大受験を目指す方には、表面的な理解にとどまらない、本当の学力を身につけていただきたいと思います。

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今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 2023年度と比べてやや易化した。しかし、ここ数年の難易度と比べて大幅に易しいというわけではない。2017年頃に大きく易化した時期もあったが、近年はそれ以前の難易度に近い水準が続いている。
  • 分量は2023年度から大きな変化はなく、計算問題の負担感は2023年度と同程度である。
  • 2022年から2023年にかけても論述問題が増加したが、2024年度ではさらに増加した
  • 2023年度と同様、すべての大問が中問に分かれており、中問6題であった。小問数は31問で、2023年度と同じであり、全体の分量も同程度であった。

2024年度入試の特記事項

  • 出題順は、第1問:有機、第2問:理論・無機、第3問:理論であった。
  • 論述問題が9問出題され、2023年度の6問と比較して増加した。また、近年は文字数指定のない形式が定着しつつあったが、2024年度では文字数指定のある形式が2問出題されたほか、行数指定のある形式も出題された。
  • 2022年度から2023年度にかけて計算問題の分量が減少し、2024年もその水準が続いている。
  • 有機分野では、有機化合物の構造決定問題が出題されなかった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 2017年頃に大幅に易化したときと比較して難度が高い傾向が続いているとはいえ、東大としては平易な問題も含まれており、合格には一定の得点が必要になると考えられる。試験時間に対して分量が多いため、解ける問題を優先して解き、得点をしっかりと確保することが重要だっただろう。
  • 論述問題の数が増えたため、ポイントを押さえて諦めずに書き上げることが重要である。
  • 計算問題については、確実に正解できそうな問題を見極めたうえで、手際よく、ミスなく解き進められるようにしたい。

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大問別のポイント

 第1問 

I <有機> エステルの合成実験

シュウ酸とエタノールから、エステル(シュウ酸ジエチル)を合成する実験を題材にした問題。構造決定の小問は出題されなかったが、論述問題が3題出題された

  • イは論述問題であり、濃硫酸を用いたエステル化反応が可逆反応であることを理解しているかが問われた。
  • ウでは、加水分解によって化合物がどのように変化するかを判断する必要があり、考察力が求められた。
  • エは、化合物の性質を考慮し、適切な分離操作を答える問題。
  • オは、反応の進行度について考察する問題。液だめ下層の水のうち、エステル化で生じた水の量を求められるかがポイントであった。
  • カは、エステル化の反応機構を確認するための実験方法を答える問題。近年では教科書で発展事項として掲載されている場合もあり、知識があれば解答しやすい問題であった。

    II <有機> 有機化合物の立体異性体、単糖の構造変化(異性化)

    有機化合物の立体異性体、単糖の構造変化(異性化)に関する問題。

    • クは、イノシトールの立体異性体を数え上げる問題。漏れなく、重複なく数え上げる必要があり、数もそれなりに多いため、手間がかかる。環状化合物が鏡像異性体をもつかどうかの判断は、経験の有無で大きな差がついたと考えられる。
    • ケは、フルクトースが還元性を示す原理を知っていれば解答しやすい。
    • コでは、図1−3と図1−4から、塩基性条件下での単糖の構造変化にどのような型があるのかを読み取ることがポイントであった。なお、糖の構造変化の原理は高校化学の範囲を大きく逸脱せずに理解できるものであり、学んだ経験があればかなり手がつけやすかっただろう。

     

     第2問  

    I <理論・無機> 両性金属、酸化還元滴定

    両性金属やそのイオンの反応、沈殿生成、酸化還元滴定に関する問題。

    • ア、イは、硫化物沈殿に関する知識問題。
    • ウは文字数が指定された論述問題であるが、希硫酸と鉛の反応に関する基礎的な内容であるため、確実に得点したい
    • エでは、二クロム酸イオンとクロム酸イオンの平衡を表すイオン反応式が問われた。
    • オの論述はやや思考力を要するが、エの平衡と、クロム酸鉛の溶解度の低さをうまく結びつけられれば解答できる。
    • キは、酸化還元滴定に関する典型的な問題であるが、S2O32−に関するイオン反応式が与えられておらず、覚えていなかった受験生は苦労しただろう。

    II <理論・無機> 11族元素(金、銀)

    金、銀を題材にした、無機化学・理論化学の総合的な問題。

    • ケは目新しいが、まずはeを含むイオン反応式を列挙し、電子を消去することを試みればよい。
    • コはイオンの存在割合に関する図を読み取り、平衡定数の値を考察する問題。問い方は斬新であるが、K1K2ともに、考えるべきは「濃度」ではなく「濃度比」であることに注意すれば、手早く解くことができる。
    • サは、質量変化から沈殿の化学式を推定する問題。
    • シは、電気分解の基本的な問題であり、計算の負担も大きくないので、確実に正解したい。

     

     第3問 

    I <理論> 気体の溶解度、ヘンリーの法則

    二酸化炭素の水への溶解についての問題。二酸化炭素の出入りがない容器においては、気体部分に含まれる二酸化炭素の物質量と、液体部分に含まれる二酸化炭素の物質量の和が一定であることがポイントである。

    • アは、理想気体と実在気体に関する基本的な知識問題で、確実に正解したい。
    • イは典型的な問題だが、与えられた条件をうまく用いれば、気体定数Rが関わる計算を回避して計算量を減らすことができる。
    • ウも、イと考え方は同様であるが、混合気体においてヘンリーの法則を用いる場合は、全圧ではなく成分気体(ここでは二酸化炭素)の分圧を用いることがポイントである。
    • エは、イ、ウと同様に考えてkHと1/Tの関係式を導き、グラフを描いて曲線との交点を求めればよいが、その過程には手間がかかる。

    II <理論> リン酸緩衝液、電離平衡

    リン酸緩衝液を題材に、緩衝液のpHや塩の加水分解など、電離平衡に関して考察する問題。

    • オは、緩衝作用の原理を問う問題であり、基本的な内容なので正解したい。
    • カでは、第二中和点では塩の加水分解を考えればよい。
    • キは、緩衝作用を示すときの酸と、酸のイオンの濃度比に着目すれば正答を導くことができる。
    • クは、第一中和点までに生じたNaH2PO4が、第一中和点以降にNaOHと反応して減少することに気付くのがやや難しい。
    • ケは一転して基本的な論述問題なので、正解しておきたい。

     攻略のためのアドバイス

    見慣れない題材について長いリード文を読むような問題はなりを潜めていた時期もあったが、高校化学で扱わない内容を考察する問題として、また姿が見られるようになってきている。出題傾向の変化に関わらず、必要とされる力そのものに大きな変化はない。基本的な事項を、暗記するだけではなく深く理解しておくことはもちろん、例年どおりの難度の高い応用問題が出題されても対応できるだけの十分な力をつけておくべきである。

    東大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。

    ●要求1●難問に対応する思考力と応用力

    東大化学では、高校で学習する内容をそのままあてはめるだけの問題も出題されるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて考える問題である。よって、基礎力の確立と、それを柔軟に使いこなせる思考力、応用力の養成が求められる。全分野において法則を正しく使いこなせるようになるのが第一である。

    ●要求2● 長い問題文を短時間で読み解く読解力

    東大化学では、実験操作や高校化学の範囲外の内容などに関する長い問題文を読み、題意を読み取り解答する問題が出題される。限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に理解する力が要求される。見慣れない題材・実験にも臆さないよう、他大学の過去問(京大・阪大といった難関大)にも目を向けて演習しておくとよい。

    ●要求3●計算問題の解答時間を短縮する計算力

    煩雑な計算問題が出題される東大化学では、計算力を身につけることが必須である。ふだんの問題演習では、電卓を使用したり、頭の中だけで考えたりするのではなく、実際に手を動かして計算し、計算自体に早いうちからしっかり慣れておこう。

    対策の進め方

    まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。近年の東大化学では、応用問題を解くうえで前提となる標準的な内容を確実に押さえることが、よりいっそう求められている。また、有機の「高分子化合物」の単元は対策が遅れがちなので、とくに意識して取り組んでおきたい。Z会の通信教育やZ会の本『化学 解法の焦点』などを利用して、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めよう。

    高校化学全般の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。Z会の通信教育でも、さまざまなタイプの添削問題を通して、演習を積んでいく。

    演習を順調にこなしていけるようであれば、●要求3●もある程度は満たされていくであろう。自分の得意不得意、問題の難易度などを意識し、解答時間内で得点を最大化できるような自分の解き方を身につけてほしい

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