東大国語

2024年度「東大国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会国語担当者からのメッセージ

2024年度の東大国語は、大問ごとの難度は若干変動したものの、総合的には東大入試として標準的な難度の出題セットでした。いずれの大問でも出題の本質的な部分に関する傾向の変更はなく、〈自らの体験に基づいた主体的な国語の運用能力〉として【問題文を誤りなく読解し、設問で求められる内容を正しく押さえる力】【語彙力・記述力を活用し、読み取った内容を的確にまとめる力】が、これまでと同様に重視された出題だったといえます。

問題文や設問を読んだだけでは解きやすそうに感じても、いざ実際に答案を書くとなると難しいのが、東大国語の大きな特徴です。現・古・漢いずれの分野も、東大入試で出題される狭い解答欄に対し、的確に要素を見極めて合格水準に達する解答を作成するためには、東大に対応した文章ジャンルの演習経験を早い時期から数多く積み、実際に手を動かして答案を書く練習を重ねることが必要。加えて作成した答案の添削指導を受けることで、プロの添削者の目線からのフィードバックを通じて〈答案作成時に押さえるべき着眼点〉を知ることも重要です。

東大国語で要求される力を養うのに最適な講座として、Z会では長年の入試分析をもとに、本科「東大講座」をはじめとする東大合格までの道筋を支える講座を用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、東大合格をつかみ取りましょう!

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今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(時間:文系150分 理系100分)

  • 分量:大問ごとに多少の増減はあるものの、文系・理系ともに全体としては2023年度と同程度。
  • 全体の難度:大問ごとの難度の変化はあるものの、全体としては文系は2023年度と同程度。理系は古文の難化の影響を受け、2023年度よりやや難しくなった。

出題としては解答で求められる内容を整理して端的に表現する記述力が問われるものであり、過去問を含め東大国語に照準を合わせた演習を積んでいるかどうかで差がつく、東大国語としては標準的な出題であった。

2024年度入試の特記事項

  • 【文科】4題、【理科】3題の出題構成に変化はない。すべて記述式で、1行約14センチ(書けるのは30~35字程度)の解答欄で1~2行の問題が中心。第一問(現代文)では100字以上120字以内という字数制限のついた記述問題が出題されるのも例年と同様。
  • 2023年度は、古漢の取り組みが容易であったぶん取組時間を短縮して現代文の時間を確保する必要があった一方、2024年度は全体として標準的なセットであるため、各大問に割り振られた時間内で解答の精度を高める必要がある。

 

合否の分かれ目はここだ!

  • 2024年度の古文は問題文自体の難度が高かったため、問題文の理解度がダイレクトに得点に響くだろう。ただし、読解自体は難しいものの、設問としての難度は標準的。文法・単語・古典常識などの基礎知識を駆使して取り組めば決して解けない問題ではないので、諦めることなく取り組み、部分点を勝ち取りたい
  • 2024年度の現代文・漢文は読みやすい文章であった一方、例年以上に「問われていることに対して適切に解答をまとめる」「必要な解答要素を漏れなく盛り込む」といった解答作成の精度が問われた。「読めたつもり」でも解答のまとめ方に不備があれば大きく減点されてしまうため、より高い次元で解答を練り上げることが重要である。

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大問別のポイント

 第一問(文理共通現代文)  出典:小川さやか「時間を与えあう―商業経済と人間経済の連環を築く「負債」をめぐって」

タンザニアの行商人が行っていた掛け売りについて、「贈与交換」の側面に着目して考察した文章からの出題。2023年度に引き続き文化人類学系の文章だが、テーマが具体的でわかりやすく、問題文自体は読みやすかっただろう。解答の抽出範囲は明確でシンプルだが、具体例から論旨をとらえて説明する必要があり、いざ書くとなると何をどうまとめて着地させるかが難しい出題だった。

  • (一)書くべき要素自体は明確で、傍線部を含む段落の要点を押さえればよい。要素を削らず解答欄内にコンパクトに記述することがカギとなる。
  • (二)「まだ返してもらっていない」と言うタンザニアの行商人の“認識”について説明する設問。「贈与」のニュアンスまで明確にできるとよい。
  • (三)傍線部を含む段落の内容をまとめればよいが、具体例から論旨をとらえ、傍線部に即して説明する必要がある。
  • (四)まずは「余韻」「ステップ」などのキーワードを押さえ傍線部に即して説明すること。そのうえで、問題文全体の趣旨を踏まえて〈贈与交換に基づくあり方を社会ベースで成立させる土台になっている〉点まで説明できると差がつく。

いずれの設問も解答要素が多いので、必要な要素を落としたり、意味の通らない文章になったりしないよう注意し、書き終えたらもう一度解答を見直したい。

 第二問(古文)  出典:藤原長子『讃岐典侍日記』

平安時代の女流日記からの出題。宮仕えに対する筆者・藤原長子の複雑な心境が描かれている。筆者が〈堀河天皇に親しく仕えていたこと〉〈鳥羽天皇への再出仕を快く思っていなかったこと〉を事前に知っていれば、読解のヒントとなった。逆に事前知識のない受験生にとっては厳しい出題であっただろう。制限時間内での問題文の緻密な読解は難しいかもしれないが、易しい設問もいくつかある。取り組みやすい設問で得点を稼ぎ、それ以外の設問にどれだけ食らいつくことができたかがカギとなる。

  • 文理共通(一)は「年ごろ」「ありがたさ」「ゆかし」「まゐらす」など基本単語が並ぶ。「心づから」がやや押さえにくいが、「手づから」の連想で意味を推測したい。確実に得点したい設問である。
  • 文理共通(二)は「参らん」から主体を押さえたうえで、何を「いつしか」と思っているのかを読み取るのがポイント。「周防の内侍」の注もヒントになる
  • 文系(三)は傍線部の前後の解釈がカギ。傍線部の説明問題なので、何をする「ついで」なのかをとらえることに加え、その「ついで」の実現が困難な点まで押さえる必要があるだろう。
  • 文系(四)は傍線部直前の「昔のみ恋しくて」を押さえるのが第一歩。「過ぎにし年月だに……」の内容も踏まえて、「良いとは思わない」だろう姿勢がどういうものかをとらえたい。
  • 文系(五)/理系(三)は和歌に関する設問。「墨染めの袂」「袖のひまなくぬるれば」など、比較的解釈がしやすい。理系であっても得点したい設問だ。

 第三問(漢文)  出典:方東樹『書林揚觶』

思想を著作として表現する者がとるべき姿勢を論じた文章からの出題。「古来の礼賛と現代批判」という主張文の典型パターンを取る文章であり、漢文における頻出ジャンルに対応した問題演習を十分に積んでいれば、論の方向性をとらえやすかっただろう。

  • 文理共通(一)は例年同様、漢字の解釈がカギとなる。加えて並列表現や対句表現も参考にして、文脈上最適な訳を検討したい。文理共通b「敷衍流宕、放言高論」からの並列で〈論を並べ立てて得られる一時の満足感〉を押さえる。文系d/理系c「丘山之利」「毫末之損」の対句表現から、「丘山」は〈高く積もった=莫大な〉の意で押さえる。文系e/理系d「偏(=かたよる)」「雖(=~といえども)」はともに漢文頻出語句であり、確実に解答したい。
  • 文理共通(二)は「已むを得ずして言有るに本づく」の解釈がポイント。直後で筆者が批判している〈不要な・不確かなことまで含めて節度なく述べ立てるさま〉との対比を踏まえて、「已むを得ずして」語るべき内容とはどういうものかを説明する。
  • 文系(三)は「寒・暑」「昼・夜」の並列をとらえ、直後の「布帛菽粟」と合わせて〈日常のあらゆる場面〉で「君子之言」が疑いなく妥当性をもつさまを説明する。
  • 文系(四)/理系(三)は「此」が指すものを、直前で述べられている〈剽窃に頼る昨今の文筆家の弊〉を踏まえてまとめる。「Aすら且つ~、況んやBをや」「豈に~ざらんや」など、文中の抑揚・反語表現を文脈を外さず確実に押さえた解釈が求められる

 第四問(文系現代文)  出典:菅原百合絵「クレリエール」

仏文学者・歌人の菅原百合絵の随筆。外国語を学ぶことでもたらされたものについて述べている。2023年度と同様に「言葉」をテーマとしているが、2023年度の文章が詩人らしく個性的な比喩を多用したものであるのと比べると読みやすく、比喩もわかりやすいものになっている。特に(一)~(三)の解答要素はわかりやすいので、まとめ方で差がついただろう。東大型の記述練習が特に活きる設問であった。

  • (一)「ガラス」という比喩が表すものを説明する。意味するところはつかみやすいが、限られた解答欄の中で説明するのが厄介。
  • (二)「たとえば」以降で示された例を一般化して説明する。「具体的に説明」するとは、具体例を述べるのではない点に注意。『羅生門』の事例も含めて要素を抽出する。「世界の見方が変容する」をどう言い換えるかがカギであり、〈新しい見方ができる〉ぐらいには説明したい。
  • (三)傍線部前後の記述から説明する。〈母語ではないからこそ、図らずも言語化されてしまう〉という点を押さえる。「口から飛び出てくる」とあることから、〈意図せずに〉という要素も落とさずに入れる
  • (四)全体のまとめにあたる設問だが、主に(三)の内容を受けている。なぜ「静かな慰めを与えてくれる」のかは文中に明示されていないので、自分で推測しなければならない。随筆独特の論理の飛躍する部分を、読み取れる範囲で丁寧に追っていくことがポイント。

 攻略のためのアドバイス

東大国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

東大国語では、専門的で難解な言葉はあまり出題されない。それだけに、受験生として、そして未来の東大生として必須の基本語彙を、現・古・漢において押さえていることが前提となる。語彙の学習が不足している人は、Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』『文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード』などを活用し、積極的に補っておきたい。

●要求2● 文脈を理解する読解力

東大国語でよく出題されるのは、入試頻出のジャンルで、かつ論旨やストーリー展開が明快な問題文である。書かれている内容を自分の主観で歪めずに、制限時間内に正しく読み取れるかが問われている。付け焼刃的な対策では対応できず、さまざまな文章を深く読み込んだ経験の量で差がつくようになっていると言えるだろう。

●要求3●狭い解答欄にまとめる記述力

東大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、解答欄も狭いため、解答すべき内容を、適切に言い改めて説明することが求められる。その理由は東大が国語の知識だけではなく、言葉の運用能力を見ようとしているからだ。詳しくは、東京大学のWebサイトで公開されている「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと【国語】」をぜひ読んでもらいたい。

対策の進め方

受験生の夏までは、多様なジャンルの文章に触れながら、●要求1●と●要求2・3●に対応できる力を同時に鍛えていこう。東大は入試頻出ジャンルからの出題が多いため、Z会の通信教育の本科「東大講座」で現・古・漢の頻出テーマを体系的に学習すると効果的である。まずは制限時間を考えずに、読解経験を積みつつ、解答欄を埋められるようになろう。

夏以降は東大即応形式の問題演習を増やしていき、●要求3●に対応する力をさらに磨いていくとよい。9月からのZ会の通信教育の本科「東大講座」では、東大対応のオリジナル問題を出題していく。添削指導を受けることで、徐々に解答の質を高めることができるはずだ。最終的には過去問に加えて、東大型の予想問題にも取り組んでおきたい。問題に取り組む際には、大問ごとの時間配分を意識して解くなど、より本番に近い形での演習をするとよい。

「読めるけど書けない」状態からなるべく早期のうちに脱出することが、東大合格のカギとなる。Z会の教材を活用し、さらにZ会によるプロの添削指導を受けることで、東大合格に直結する語彙力・読解力・記述力をバランスよく養成してほしい。

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