東大国語

2025年度「東大国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会国語担当者からのメッセージ

2025年度の東大国語は、文系第四問で小説が出題されるなど、大問ごとの難度の若干の変動はあるものの、総合的には東大入試として標準的な難度の出題セットでした。いずれの大問でも出題の本質的な部分に関する傾向の変更はなく、〈自らの体験に基づいた主体的な国語の運用能力〉として【問題文を誤りなく読解し、設問で求められる内容を正しく押さえる力】【語彙力・記述力を活用し、読み取った内容を的確にまとめる力】が、これまでと同様に重視された出題だったといえます。

問題文や設問を読んだだけでは簡単に解けそうに感じても、いざ実際に答案を書くとなると難しいのが、東大国語の大きな特徴です。現・古・漢いずれの分野も、東大入試で出題される狭い解答欄に対し、的確に要素を見極めて合格水準に達する解答を作成するためには、東大に対応した文章ジャンルの演習経験を早い時期から数多く積み、実際に手を動かして答案を書く練習を重ねることが必要。加えて作成した答案の添削指導を受けることで、プロの添削者の目線からのフィードバックを通じて〈答案作成時に押さえるべき着眼点〉を知ることも重要です。

東大国語で要求される力を養うのに最適な講座として、Z会では長年の入試分析をもとに、本科「東大講座」をはじめとする東大合格までの道筋を支える講座を用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、東大合格をつかみ取りましょう!



今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(時間:文系150分 理系100分)

  • 分量:変化なし
  • 難易度:【文系】変化なし 【理系】やや易化(昨年度比)

2025年度入試の特記事項

  • 大問ごとの難度の変化はあるものの、全体としては文系は2024年度と同程度。理系は現代文がやや易化したため、2024年度よりも負担感は軽くなったといえる。出題としては解答で求められる内容を整理して端的に表現する記述力が問われるものであり、過去問を含め東大国語に照準を合わせた演習を積んでいるかどうかで差がつく、東大国語としては標準的な出題であった。
  • 文系第四問(現代文)は、例年出題される随筆ではなく、小説からの出題であった。小説の出題は、現在の出題構成になって以降初めての出題である。問題文自体は読みやすいが、解答の方向性に迷う設問もあり、解答の着地点を見出すのが難しい点ではこれまでの第四問らしい出題であった。

 

合否の分かれ目はここだ!

  • 2025年度の漢文は問題文の論旨は明快なため、解答のまとめ方で得点に差がつくだろう。現代文と同様に、具体例から筆者の主張する論旨を読み取り、一般化して解答にまとめる記述力が求められる。読めていても解答のまとめ方に不備があれば大きく減点されてしまうため、より正確な解答を練り上げることが重要である。
  • 全体として、易しい設問と難しい設問の落差が大きい出題であった。東大受験生であればほとんどの人が正解できるような問題も散見されるので、そのような基本的な問題は絶対に落とさないこと。一方で、国語が得意教科であっても得点するのが難しい設問では、諦めずに解答を作成し、少しでも部分点を獲得できるようにしたい。いずれの大問もそもそも読めない、という問題文ではないため、難度の高い設問にどこまで食らいつくことができたかで差がつく出題であった。

さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第一問(文理共通):現代文(評論)  出典:田中彰吾『身体と魂の思想史――「大きな理性」の行方』[やや易]

成長過程における自己の身体イメージの成立について論じた文章からの出題。「自己」と「他者」、「体性感覚」と「視覚」など、対比が明確で論じている内容もわかりやすく読み取りやすい文章。解答の抽出範囲も明確でシンプルな設問だった。解答の方向性に迷うことはないので、必要な解答要素を落とさないように気をつけたい

  • (一)第一・二段落の内容をまとめればよい。必要な解答要素を落とさず押さえておきたい設問。
  • (二)第五段落の内容を中心にまとめる。「回避する」理由が問われているので、乳児の〈混乱・困惑〉という点まで踏み込んでまとめられるとよい。
  • (三)傍線部の直前の箇所に着目し理由を説明する。具体を丁寧に書きすぎると解答欄に収まらなくなるので、(一)(二)よりもまとめ方が難しいが、標準的な範囲の出題である。
  • (四)自己の身体イメージの成立について、問題文全体の趣旨を踏まえて説明する。「その意味で」に着目し、傍線部直前の「鏡像認知は……他ならない」に沿って問題文の論旨を踏まえて説明する。

文章の難易度・解答の方向性の見極めもそれほど難しくないため、第一問で落とすと差がついてしまう。必要な要素を見落としたり、意味の通らない文章になったりしないよう注意し、書き終えたらもう一度解答を見直したい。

 第二問(文理共通):古文(仏教説話)  出典:『撰集抄』 [標準]

鎌倉時代の仏教説話からの出題。徳の高い僧だということを隠したい宝日上人のあり方を押さえたうえで、それを見た法院隆明の反応と筆者の評価を中心に読み取る。仏教説話であることを踏まえ、話のテーマや論の方向性を適確に把握することがカギとなる。

  • 文理共通(一)は「あさまし」「にや」「侍り」など基本単語が並ぶ。迷う部分があっても、前後の文脈から判断することが可能。理系であっても確実に得点したい設問である。
  • 文系(二)はまず基本単語「かきくらさる」の意を押さえること。「何に対する」心情かを冒頭から傍線部直前までの内容から押さえることがポイント。心情の着地点がやや難しいが、取り組みやすい出題なので確実に得点したい。
  • 文系(三)/理系(二)は傍線部直後の記述がヒントとなる。第一・二段落から状況を読み取ったうえで、宝日上人が評価されている点を押さえること。
  • 文系(四)は、まずは逐語訳で傍線部を正確に理解すること。そのうえで第一・二段落の内容と、文系(三)で評価されている価値観を踏まえると解答の方向性はつかみやすい。ここで得点できると差がつくだろう。
  • 文系(五)/理系(三)は和歌に関する設問。和歌を逐語訳は簡単なので、「中関白の御忌」などをヒントに〈世の無常〉と結び付ければよい。

 第三問(文理共通):漢文(散文)  出典:雲棲袾宏『竹窓二筆』 [標準]

明代の僧侶による随筆からの出題。物事の道を極めるには、それを好んで執着することが大事だということを論じた文章。具体と抽象を見分けて、論旨を読み取っていく必要があるが、論の方向性はとらえやすかっただろう。

  • 文理共通(一)は例年同様、漢字の解釈がカギとなる。a「概」b「声」など、直前の内容を踏まえて適切に訳出したい。いずれもオーソドックスな出題であり、確実に得点したい。
  • 文理共通(二)は「之」の内容を第一段落からまとめること。具体と抽象を切り分け、論旨を押さえることがポイント。慣用表現「何独」も正確に訳出すること。
  • 文系(三)は比喩の内容説明。傍線部前後の「悠悠蕩蕩」「何益之有」から〈無益に過ごすこと〉の比喩であることを押さえること。
  • 文系(四)/理系(三)は論旨を踏まえたうえで、「執滞之着」と「執持之着」の対比を説明する。字義の解釈に迷うかもしれないが、「執滞之着」は直前の一文、「執持之着」は第一・二段落の内容を指していることに気づき、本文の趣旨を踏まえてまとめることがポイント。

問題文自体は読み取りやすいが、具体例や比喩の意味するところから筆者の主張を導く必要があり、いざ解答にまとめようとすると難しい出題。「執着」などのキーワードを押さえ、論旨と結び付けて傍線部を解釈していけば決して解けない問題ではないので、諦めることなく取り組み、得点したい。

 第四問(文科のみ):現代文(小説)  出典:佐多稲子「狭い庭」 [標準]

例年出題される随筆ではなく、小説からの出題だった。小説の出題は、現行の出題構成になって以降初めての出題である。苗木屋に対する主人公の心情を描いた文章。昭和期の古い文章ではあるが、読み取りに苦労することはない。解答の方向性や着地点に迷う設問もあり、小説とはいえ従来の第四問らしい出題であった。

  • (一)順吉と苗木屋の関係を前提に、順吉の行動とともに、苗木屋に対する心情を説明する。不足なく解答要素を押さえて説明したい。
  • (二)苗木屋に対するしげのの心情を説明する。「割り切った」しげのの発言が、順吉の心情を慮ってのものである点を考えられるとよい。
  • (三)傍線部からどのようなことがうかがわれるかを説明する設問。何をどこまで書くかが難しい点で、特に例年の第四問らしい設問と言える。〈「すぐ檜葉はおおきくな」ると苗木屋が言ったとおりになり、結果として苗木屋は夫妻の要望に応えた〉という点を中心に、問題文から読み取れる範囲の事実を丁寧に拾いつつ、解答を練り上げる。
  • (四)順吉の「勤め先」での出来事をふまえ、苗木屋の行動と対比して順吉の心情をとらえる。「同感」「羨望」「なつかしさ」といった表現を丁寧に説明することがポイント。

 攻略のためのアドバイス

東大国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

東大国語では、専門的で難解な言葉はあまり出題されない。それだけに、受験生として、そして未来の東大生として必須の基本語彙を、現・古・漢において押さえていることが前提となる。語彙の学習が不足している人は、Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』『文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード』などを活用し、積極的に補っておきたい。

●要求2● 文脈を理解する読解力

東大国語でよく出題されるのは、入試頻出のジャンルで、かつ論旨やストーリー展開が明快な問題文である。書かれている内容を自分の主観で歪めずに、制限時間内に正しく読み取れるかが問われている。付け焼刃的な対策では対応できずさまざまな文章を深く読み込んだ経験の量で差がつくようになっていると言えるだろう。

●要求3●狭い解答欄にまとめる記述力

東大国語の設問はすべてが記述式問題であり、解答欄も狭いため、解答すべき内容を適切に言い改めて説明することが求められる。その理由は東大が国語の知識だけではなく、言葉の運用能力を見ようとしているからだ。詳しくは、東京大学のWebサイトで公開されている「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと【国語】」をぜひ読んでもらいたい。

対策の進め方

受験生の夏までは、多様なジャンルの文章に触れながら、要求①と要求②・③に対応できる力を同時に鍛えていこう。東大は入試頻出ジャンルからの出題が多いため、Z会の通信教育の本科「東大講座」で現・古・漢の頻出テーマを体系的に学習すると効果的である。まずは制限時間を考えずに、読解経験を積みつつ、解答欄を埋められるようになろう。

夏以降は東大即応形式の問題演習を増やしていき、要求③に対応する力をさらに磨いていくとよい。9月からのZ会の通信教育の本科「東大講座」では、東大対応のオリジナル問題を出題していく。添削指導を受けることで、徐々に解答の質を高めることができるはずだ。

最終的には過去問に加えて、東大型の予想問題にも取り組んでおきたい。問題に取り組む際には、大問ごとの時間配分(現代文:50~60分、古文漢文:25~30分)を意識して解くなど、より本番に近い形での演習をするとよい。

「読めるけど書けない」状態からなるべく早期のうちに脱出することが、東大合格のカギとなる。Z会の教材を活用し、さらにZ会によるプロの添削指導を受けることで、東大合格に直結する語彙力・読解力・記述力をバランスよく養成してほしい。


Z会でできる東大対策・ご案内




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