東大国語

「東大国語」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 全体の分量は、文系・理系ともに昨年度と同程度。
  • 全体の難度は、文系・理系ともに昨年度とほぼ同程度。「解答で求められる内容を整理して端的に表現する」という東大国語に対応した記述力の有無が反映されやすいオーソドックスな出題であった。

2021年度入試の特記事項

  • 【文科】4題、【理科】3題の出題構成に変化はない。すべて記述式で、1行約14センチ(書けるのは30~35字程度)の解答欄で1~2行の問題が中心。第一問(現代文)では100字以上120字以内という字数制限のついた記述問題が出題されるのも例年と同様。
  • 第一問(現代文)では2017年度以降、2行解答欄の説明問題の出題数が3問、全5問の構成が定着している。
  • 第三問(漢文)は、2017~2020年度に引き続き(一)の口語訳の傍線部が3箇所となり、設問数は文系4問/理系3問(枝問も含めると文系6問/理系5問)であった。

合否の分かれ目はここだ!

第二問(古文)

登場人物の人物関係・場面状況全体の理解を念頭に置いて読解することが求められる出題。有名出典からの出題であり、演習を積んできた受験生であれば、読解に時間をかけすぎずに全体の内容をつかむことができただろう。解答欄はいずれも一行で、ポイントを落とさず端的にまとめる記述力が問われる。文法事項などの基礎知識をしっかり固めたうえで、東大国語に対応した問題の記述演習を積んできたかどうかで差がつく出題であった。

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大問別のポイント

 第一問(文理共通現代文) 出典:松嶋健「ケアと共同性―個人主義を超えて」

  • 個人あるいは社会全体を基盤におく「国家の論理」「管理と統治の論理」「私的自由の論理」「選択の論理」とは「別の仕方で生きている人たち」の事例を通じて、そこに見られる「共同的で公共的な論理」「ケアの論理」について論じた文章からの出題。対比的に示されるそれぞれの「論理」の具体的属性を丁寧に切り分けて読んでいけば、各設問の解答要素は抽出できる。
  • (一)~(三)の2行記述問題は、いずれも傍線部の内容説明問題。(一)はタイの事例、(二)はイタリアの事例に即して答える。(三)は傍線部の後の記述をまとめる。余分な内容を盛り込まずに、問題文から読み取れる内容を端的にまとめ直し、傍線部に即して筋道立てて説明する力が求められた。
  • (四)の120字記述問題は、書くべき内容そのものはとらえやすかったと思われる。これまで対比されてきた「論理」それぞれに基づく「世界像」を字数に収まるように説明する点で記述力が問われる。
  • (五)の漢字の書き取りはいずれも基本的な出題であり、満点を確保したい。

 第二問(古文)  出典:『落窪物語』

  • 入試頻出出典からの出題で、登場人物の関係や場面状況について、ある程度前提知識があった受験生もいただろう。会話文が中心となり主語の省略が多く、リード文・注の情報を踏まえて人物関係を正確に把握したうえで解答を作成する必要がある。
  • (一)の現代語訳は反語・敬語など、基本的な文法事項・語句知識を正確に理解できているかが問われる出題で、ここでの失点は避けたい。
  • 文系のみの(二)は「しふねがりて」を文脈に即して解釈することができるかがポイント。
  • 文系(三)/理系(二)は、文章全体の場面状況を踏まえて主語を把握し、解答に反映させる必要がある。
  • 文系のみの(四)は、「一つ口に」をわかりやすく簡潔に説明する記述力が問われる。
  • 文系(五)/理系(三)は、会話文の発言者を踏まえて「この殿」が道頼を指すことを押さえ、問題文全体の場面状況を踏まえて簡潔に解答をまとめなければならない。

 第三問(漢文) 出典:井上金峨『霞城講義』

  • 江戸時代の日本漢文からの出題で、政治における民衆の統治について述べた文章。逸話的な文章で読み取りやすかった2020年度に比べると、読解の難度はかなり上がっている。部分的な読解はできたものの、文章全体で筆者が述べたいことをとらえきれなかった受験生もいただろう
  • (一)ここ数年、現代語訳では漢字の解釈を問う傾向が強かったが、2021年度は句形を意識した出題。aの受身形、dの比較形ともに基本的な句形。eは、「矯」=〈矯正〉、「弊」=〈弊害〉のそれぞれの漢字の解釈が必要だが、難しくはない。基本句形を押さえたうえで正確に訳出し、確実に得点したい。
  • 文系のみの(二)は、まずは「庸愚」の意味をとらえること。なお、傍線部は問題文冒頭にあるが、傍線部だけでなく、続く「聡明之主」の記述、問題文全体の構造も踏まえて内容を押さえるとよいだろう。
  • 文系(三)/理系(二):基本的な比較・選択の句形なので、ここは落としたくないところ。文意はとらえやすいはずなので、あとは比較であることを意識して、訳出時の表現にも注意を払いたい。
  • 文系(四)/理系(三):問題文全体を踏まえて「近効」「未信之民」がなにかを正確に理解する。「未信之民」→「信」の語に着目して、問題文冒頭の「為上者、為下所信、然後令有所下。」にかかわる話であると理解できるかどうかがポイント。

 第四問(文系現代文)  出典:夏目漱石「子規の画」

  • 夏目漱石が、友人であった正岡子規を偲んだ随筆からの出題。子規の形見とも言える画を起点に、画の特徴とそこから感じられる漱石の子規への想いを丁寧に読み取っていく必要がある。文章としては難しい表現もなく、場面や心情が丁寧に綴られているため、内容理解に苦労することはないだろう。設問は、傍線部の理由説明問題2問、心情説明問題2問の4問構成。問題文中で直接的には説明されていない内容についてどこまで踏みこんで解答すべきかの判断が難しい出題であった。
  • (一)、(二)は、傍線部の直接的な心情や理由を押さえるところまでは容易に対応できるが、出題としてはそこからもう一歩踏み込んだ心情や理由の解釈まで含んで解答することを求めていると思われる。
  • (三)は、子規の手による「文学」と「絵画」の対比を踏まえて、「微笑みを禁じ得ない」理由を説明すれば良い。
  • (四)は、傍線部直前にある〈子規には「拙」のところをもっと発揮してほしかった〉という趣旨の言葉を軸に、問題文全体から読み取れる漱石の子規に対する追慕を表現することが求められた。

 攻略のためのアドバイス

東大国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

東大国語では、専門的で難解な言葉はあまり出題されない。それだけに、受験生として、そして未来の東大生として必須の基本語彙を、現・古・漢において押さえていることが前提となる。語彙の学習が不足している人は、Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』『文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード』などを活用し、積極的に補っておきたい。

●要求2● 文脈を理解する読解力

東大国語でよく出題されるのは、入試頻出のジャンルで、かつ論旨やストーリー展開が明快な問題文である。書かれている内容を自分の主観で歪めずに、制限時間内に正しく読み取れるかが問われている。付け焼刃的な対策では対応できず、さまざまな文章を深く読み込んだ経験の量で差がつくようになっていると言えるだろう。

●要求3●狭い解答欄にまとめる記述力

東大国語の設問は、すべてが記述式問題である。その理由は東大が国語の知識だけではなく、言葉の運用能力を見ようとしているからだ。詳しくは、東京大学のWebサイトで公開されている「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと【国語】」をぜひ読んでもらいたい。

対策の進め方

受験生の夏までは、多様なジャンルの文章に触れながら、●要求1●と●要求2・3●に対応できる力を同時に鍛えていこう。東大は入試頻出ジャンルからの出題が多いため、Z会の通信教育の本科「東大コース」で現・古・漢の「必修テーマ」を体系的に学習すると効果的である。まずは制限時間を考えずに、読解経験を積みつつ、解答欄を埋められるようになろう

夏以降は東大即応形式の問題演習を増やしていき、●要求3●に対応する力をさらに磨いていくとよい。受験生の9月からのZ会の講座では、東大対応のオリジナル問題を出題していく。添削指導を受けることで、徐々に解答の質を高めることができるはずだ。最終的には過去問に加えて、東大型の予想問題にも取り組んでおきたい。問題に取り組む際には、大問ごとの時間配分を意識して解くなど、より本番に近い形での演習をするとよい。

「読めるけど書けない」状態からなるべく早期のうちに脱出することが、東大合格の鍵となる。Z会の教材を活用し、さらにZ会によるプロの添削指導を受けることで、東大合格に直結する語彙力・読解力・記述力をバランスよく養成してほしい。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大国語担当者からのメッセージ

2021年度の第一問(現代文)の文章は、〈社会保障の立脚点についての再考〉という、コロナ禍に揺れる現代社会において改めて私達が立ち返るべき課題を受験生に突きつけ考えさせる点が非常に印象的な出題でした。2017~2020年度に出題された文章に通底する〈学問・科学に携わる者、今後社会の中核を担うだろう者に要求される基本的な視座や認識〉というテーマと同じく、東京大学で学ぼうとする学生にどのようなことを考えてほしいのか、という大学からのメッセージを強く感じる出題といえます。

2021年度の東大国語では、いずれの大問でも出題の本質的な部分に関する傾向の変更はありませんでした。【問題文を誤りなく読解し、設問で求められる内容を正しく押さえる力】【語彙力・記述力を活用し、読み取った内容を的確にまとめる力】が、これまでと同様に重視された出題だったといえます。

東大国語対策では、東大の過去の出題傾向を十分に研究し、それに対応した問題演習を積むことが非常に重要です。Z会では長年の入試分析をもとに、本科「東大コース」をはじめ、東大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、東大合格をつかみ取りましよう!

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