「東大日本史」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)

  • 例年通り、第1問-古代、第2問-中世、第3問-近世、第4問-近・現代という出題構成であった。
  • 小問数は7問で、2020年度と同じであった。
  • 総字数は630字で、2020年度から30字減少した。
  • 小問の最小字数は60字、最大字数は150字であった。
  • 全体的な難易度は標準的であり、前年度比でやや難化した2020年度に比べると、やや易化した。

2021年度入試の特記事項

  • 第1問〜第3問は従来の提示文型であり、第4問は史料が提示された。
  • 2020年度第2問で出題されたような図版を用いた問題は見られなかった。
  • 2019年度に出題された昭和戦後期の設問は、2020年度に続き出題されなかった。

 

合否の分かれ目はここだ!

  • 第2問は、設問A・Bともにいずれも取り組みやすい問題であった。ここで確実に高得点を取ることが大切である。
  • 150字と字数の多い第1問と、提示文の情報をもとに考察が求められた第3問Bは、やや難しい問題であったが、提示文を丁寧に読み取ることで、得点につながる要素を1つでも多く解答に盛り込み、得点を積み重ねたい。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

A:9世紀後半における政治体制安定の背景(5行:150字)

  • 9世紀後半以降,皇位継承をめぐるクーデター・争いが見られなくなった背景にある変化が問われた。
  • 提示文から読み取った情報を踏まえて考察し、「政治体制の変化」を説明していく。
  • 解答に盛り込むべき要素を見極め、150字にまとめることに苦戦した受験生も多かっただろう

 第2問  

A:荘園領主による検注の目的(2行:60字)

  • 多くの受験生は「検注」を知らないだろうが、その意味は提示文で述べられている。
  • 提示文(1)(2)から読み取れることを中心に、解答をまとめればよい。提示文を丁寧に読めば十分に対応できるので、確実に解答したい。

B:地頭の荘園支配における地頭請の役割(3行:90字)

  • 地頭請に対する基本的な知識と、提示文(3)(4)に示された情報をもとに、地頭の荘園支配において地頭請が果たした役割を考える。検注の拒否と地頭請を結びつけて述べたい。

 第3問  

A:17世紀後半以降の幕府財政問題(2行:60字)

  • 提示文に示された1707年の富士山大噴火に際して幕府が採った被災地救済への対応策を踏まえて、「17世紀後半以降の幕府財政上の問題」を述べる。
  • 「17世紀後半」から、4代将軍徳川家綱や5代将軍徳川綱吉の治世を想起したい。この時期の江戸幕府の財政難について、知識をもとに述べていけばよい。
  • 教科書レベルの知識で対応でき、取り組みやすかった。

B:江戸幕府の被災地救済策(3行:90字)

  • 1707年の富士山噴火に際しての、被災地救済策について問われた。提示文に示されている幕府の対応から、幕府の救済策の「方針」と「問題」を考え、解答にまとめることが求められた。
  • まずは、提示文(2)(3)で取り上げられた地域の相違点を明らかにしよう。
  • 教科書では扱われないテーマ・切り口であり解答の方針が思い浮かびにくい。提示文の情報を、どのように設問要求と結びつければよいか迷っただろう。

 第4問  

A:華族令の意図(3行:90字)

  • 1884年の華族令制定により生じた「華族の構成の変化」と変化の「意図」が問われた。
  • 華族の構成変化については、問題文冒頭の1869年時点での華族と、史料(1)で示された公爵の構成を比較すればよい。
  • 華族令の「意図」と、背景にある当時の政治情勢は、知識から導き出したい。

B:高橋是清の衆議院議員総選挙立候補(3行:90字)

  • 立憲政友会総裁の高橋是清が、隠居し、貴族院議員を辞職して、衆議院議員の選挙に立候補した理由が問われた。一見すると何を解答すべきか迷うが、「1924年」「清浦奎吾内閣」から、第二次護憲運動を想起できれば、解答の糸口が見える。
  • 提示史料から、高橋是清が隠居・貴族院議員辞職という行動を採った理由は判断できる。あとは、当時の国内政治の状況に関する知識を活用して、高橋の行動の理由を考えていく。

 攻略のためのアドバイス

東大日本史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 全時代・全分野についての正確な知識・理解
当然だが、日本史についての知識・理解があることが問題を解く上での前提となる。学習の際には、歴史事項の正確な意味内容や、事項の流れに加えて、律令制や幕藩体制といった、各時代を考える際の本質的な事項の理解の両方を身につけることを心掛けよう。

●要求2●提示文・設問文の把握
東大日本史では、与えられた提示文や史・資料すべてをうまく活用すること、設問文の要求や意図を読み取ることが重要になる。東大型の問題演習を通じて、提示文を利用し、設問の趣旨にあった解答を作成する力をつけていこう。

●要求3● 要求された字数に応じて論をまとめる記述力
東大日本史で出題される字数は30字~180字と幅広い。そのため、設問の要求だけでなく、各設問で指定された字数に合わせて、情報を取捨選択し、論旨をまとめる高度な記述力が必要である。定期的な論述演習で、設問の要求を満たした論を作成する力を養っていこう。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大日本史担当者からのメッセージ
  • 2021年度は、第1問と第3問Bで、解答をまとめる際にやや苦戦するものの、その他は比較的取り組みやすい問題が多く見られました。また、2019年度入試内容に関連した出題が数問見られるなど、過去問研究を行っていたかどうかでも差がついたと考えられます。
  • 取り組みやすい問題が多かった2021年度は、例年以上に、「日本史で差をつけられないこと」が合格へのカギになったでしょう。

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