世界史B – 共通テスト(2024年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2025年1月13日
Z会の大学受験生向け講座の世界史担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。
共通テスト「世界史B」の出題内容は?
まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。
試験時間と配点
時間 / 配点:60分 / 100点
出題内容
●大問数は4題で、小問数は33問であった。2023年度共通テストから、大問数は1題、小問数は1問減少した。
●資料、およびそれに基づいた説明文・会話文が多く提示され、ほとんどの問題で、解答するためには知識だけでなく文献資料・統計資料や問題文の適切な読解が必要とされた。
●2023年度共通テストと比べ、統計資料の数はやや減少したものの、文献資料の数が大幅に増加したため全体の資料数は増加した。また、地図を用いた問題は、2023年度共通テストと同様に1問しか出題されなかった。
●2023年度共通テストに引き続き、複数の資料や会話文等から必要な情報を読み取って包括的に考えたり、複数の資料を比較・検討したりする必要のある問題が多く出題された。また、共通テスト本試験において初めて、前の問題の解答に連動して正答が変わる連動型問題が出題された。
●地域は、西ヨーロッパ・北アメリカ史からの出題が多かったほか、中国史を中心にアジア史からも多く出題された。文献資料では、とくに西ヨーロッパ・北アメリカ史のものが多く扱われた。なお、ラテンアメリカ史・アフリカ史からの出題はほとんど見られなかった。
●時代は、近世史からの出題がやや少なかったものの、概ね万遍なく出題された。2023年度共通テストではほとんど出題されなかった戦後史からも複数問出題された。
●出題分野としては、政治史からの出題が多かったが、文化史・社会経済史からの出題も見られた。
●全体的な難易度としては、2023年度共通テストよりやや易化したといえる。
世界史Bの「カギとなる問題」は?
次に、世界史で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
第1問:問1・問5
第1問問1は周の統治制度について、第1問問5は中世イングランドの国王エドワードの死後に見られた政治的動きについて、それぞれ異なる考え方が示された文献資料を用いて考察する問題であった。いずれの問題も、それぞれの資料で示された立場や考え方と、その根拠として挙げられた内容を正確に読み取る必要があった。
第2問:問4・問5
第2問問4の正答が複数あり、その解答に連動して第2問問5の正答が変わる連動型問題であった。共通テスト本試験においては初めて出題された形式であった。正答が複数あることを念頭に置きつつ、落ち着いて各選択肢の組合せを考えたい。
第3問:問7
統計資料とそれに基づいた会話文を参考にしつつ、2つのメモの正誤を判断する問題であった。メモの分量が多い上に、両方のメモの正誤を正しく判断できなければ正答にたどり着けない問題であった。会話文から読み取った情報をもとに判断すべき内容と、知識を用いて判断すべき内容とを正しく見極めつつ、慎重に正誤を判断したい。
第4問:問6
「コロンブスはスペイン人である」という誤った説について、そのような誤りを招く原因となった「思い込み」の内容、およびその背景にあった価値観について問われた。歴史的出来事について考察する際に、考察者自身の先入観によって誤った判断をした例を取り上げており、近年の共通テストで頻出となっている歴史研究的な視点の問題であった。
大問別ポイント/設問形式別ポイント
次に、世界史の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。
第1問:様々な地域や時代に見られた体制と制度 [標準]
・Aでは周と西晋の統治制度に関する3つの文献資料、Bでは中世イングランドの国王エドワードの死後に見られた政治的動きについて記した2つの文献資料、Cでは近・現代イギリスの福祉制度について述べた文章と、イギリス首相のインタビュー回答文を用いて出題された。
・問3では、「一族に対する分権の弊害が現れた出来事」として適切なものを選ぶことが求められた。挙げられた出来事が、それぞれどのような性質のものであったのかを思考する力が問われた。
・問7では、共通テスト本試験において初めて、ある出来事の時期が年表中のどこに当てはまるかを問う問題が出題された。リード文からヒントとなる情報を読み取った上で、近代ドイツ史の基本的な知識を活用して判断する必要があった。
第2問:諸勢力の支配や拡大 [やや易]
・Aではアレクサンドロス大王のアジア支配に関する4つの文献資料、Bでは19世紀における合衆国の領土に関する3つの法律文、Cでは朝鮮戦争における休戦交渉に先立ってスターリンが毛沢東に宛てて発した電報を用いて出題された。
・問1は、4つの文献資料について述べた文として適当なものを選ぶ問題であった。資料の数は多かったものの、資料1つ1つの分量は少なく、どの資料に注目すべきかも選択肢の中で明確に示されていた。難度は高くないので、落ち着いて各選択肢の正誤を判断したい。
・問2では、アレクサンドロス大王に対して異なる時代になされた評価が提示され、それぞれの評価がなされた時代背景の正誤が問われた。どの時代になされた評価であるかを問題文から読み取り、同時代の出来事として適切か否かを判断する必要があった。
第3問:交通の発達が社会に与えた影響 [標準]
・Aではインド亜大陸における交通の歴史についての授業を舞台とした会話文と2つの地図、Bでは20世紀の合衆国における鉄道の輸送量を示したグラフ、Cではロシアの歴史と文化についての授業を舞台とした会話文・グラフ・2つの文献資料を用いて出題された。
・問3は、本試験内で唯一の地図を用いた問題であった。地図の読み取りの難度、要求される知識レベルとも易しい問題であったため、手堅く得点したい。
・問6では、2つの文献資料から、著者が「いら立って」いた理由を考察する問題であった。資料の分量はそれほど多くなかったものの、著者の主張を丁寧に読解した上で、総合的に著者の態度を判断することが求められた。
第4問:言語や文字と、それを用いた人々の文化やアイデンティティ [標準]
・Aでは唐代に作られた碑の写真を見ながら生徒と先生との間で交わされた会話文、Bでは「コロンブスはスペイン人である」というかつての定説からの変化について述べた文章、Cでは書道の授業を舞台とした会話文と写真を用いて出題された。
・大問を通して文化史が多く出題された。いずれも必要とされる知識は教科書レベルであったが、中でも唐代〜宋代の文化について問われた問8は学習の盲点であった受験生もいただろう。文化史は政治史に比べ学習が手薄になりがちであるため、確実に対策しておくことが求められる。
・問5では、ポルトガル王室が最終的にコロンブスを支援しなかったことについて、理由として推測される仮説が問われた。当時のポルトガルの動向について、国内外で起こった複数の出来事から判断する必要があった。
攻略へのアドバイス
最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。世界史で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
2025年度共通テストで「歴史総合、世界史探究」を選択する場合も、以下の点を意識して学習に励みましょう。
教科書の全範囲にわたる盤石な知識を身につける
2024年度の共通テスト世界史は、概ね2023年度以前の共通テストおよび試作問題と類似した形式の問題が出題された。また、細かい内容を問われる問題は出題されず、必要とされた知識は従来のセンター試験と同じく教科書レベルの標準的なものであった。また、共通テストは様々な時代や地域から幅広く出題されるため、教科書内容の抜けのない知識を身につけておく必要がある。教科書を読むほかにも、一問一答形式の用語問題集を活用するなど、演習的な学習を行いたい。
様々な資料の読解に慣れておく
共通テストでは、文献や地図・統計資料といった様々な資料が提示された。提示された資料の多くは、教科書では扱われないような初見の資料であり、資料の読解に必要以上に時間を取られてしまった受験生も多かったであろう。初見の資料が提示されても落ち着いて読解のポイントを探し出せるように、日々の学習のうちから教科書や資料集などで資料を確認して、資料読解に慣れることを心掛けたい。また、出題される資料の中には空欄を施された文献資料も含まれる。文献資料を吟味して、流れやつながりを読み取り、空欄に入る語句を検討する必要がある。文献資料に数多く当たることで、文章読解力、思考力を磨いていきたい。
歴史事項の背景や影響といった因果関係を意識する
共通テストでは、従来のセンター試験でよく出題された知識を問う単純な形式の出題は大幅に減少し、歴史事項の背景や影響といった因果関係のほか、事項の推移を考えさせる問題が多く出題された。用語のみの表面的な知識だけでなく、教科書の文章を隅々までしっかりと読み込むことで、用語同士のつながりや因果関係も確実に理解しておきたい。
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