数学Ⅰ・A – 共通テスト(2023年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2023年2月1日
Z会の大学受験生向け講座の数学担当者が、2023年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。
共通テスト「数学Ⅰ・A 」の出題内容は?
まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。
試験時間と配点
時間 / 配点:70分 / 100点
全体の傾向
・大問5題構成であり、第1問と第2問は必答問題、第3問~第5問についてはこれら3題から2題を選択する選択問題である。
・単なる数値を求める問題だけでなく、
- 正しい(あるいは誤っている)選択肢を選ぶ問題
- 具体的な実社会での設定がなされ、それに対して数学を適用し、解釈をしていく問題
- 複数の登場人物が会話をしており、その人物の考えを踏まえて解答していく問題
など、2022年度と同様に、共通テストらしい出題が目立つ。
2022年度との比較
・大問構成と各分野の出題バランスは、2022年とほぼ同じである一方で、問題の並びが易しいものからやや難しいものの順になっている大問があり、2022年度よりも受験生の数学の力を適切に得点に結びつけようという工夫が見受けられる。
・難易度は2022年度と比較して、必答問題(第1問、第2問)では同水準である一方、選択問題(第3問~第5問)では低くなっており、全体的に簡単になっている。思考力を要する設問が減り、公式や定義を理解していれば解答できる設問が増えたことが要因と考えられる。
・第1問、第2問について、2022年度は中問3題構成であったが、2023年度は中問2題構成となった。
数学Ⅰ・A の「カギとなる問題」は?
次に、数学Ⅰ・A で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
・各大問、および中問での最後の問題はやや難易度が高く設定されており、高得点をねらうためには、これらのうちどのくらいを処理できるかがカギとなってくる。
・共通テストの特徴が強く現れている第2問は、グラフを読み解く力や計算力、問題文を正確に理解する力が求められた。とくに第2問[2]は計算、読解の処理量が多いため、全体の時間配分を考えながら解き進める必要があった。こうした問題は慣れているかどうかで解答時間や得点に差がつきやすいため、できるだけ早い段階で経験を積んで、対応力を磨いておきたい。
大問別ポイント/設問形式別ポイント
次に、数学Ⅰ・Aの出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。
第1問〔1〕:数と式 [やや易]
・絶対値を含む不等式に関する問題。
・x→(1-√3)(a-b)(c-d)の置き換えに気づけるかがポイント。全体的に丁寧な誘導がついており方針が見えやすいため、ここは確実に得点しておきたいところである。
第1問〔2〕:図形と計量 [標準]
・円に内接する三角形の面積、球に内接する三角錐の体積に関する問題。
・正弦定理や余弦定理など、円と三角形に関係する様々な公式を即座に解答に結びつけることができるか、また、面積や体積が最大となるときの図形の様子を正しく捉えることができるかがポイントであった。
第2問〔1〕:データの分析 [やや易]
・「データの分析」の用語理解とグラフの読み取りに関する問題。
・「地域による食文化の違い」を題材に、数学を利用して様々な観点で分析するという、共通テストらしい出題である。用語の定義やグラフの意味をしっかり理解できていれば解答に困ることはない内容なので、確実に得点したい。文章量が多いので、素早く読み取る力も必要だ。
第2問〔2〕:2次関数 [やや難]
・ある点を通る2次関数のグラフの頂点や方程式に関する問題。
・「シュートしたボールの軌道」を題材に、実社会の現象を数学で考察するという、[1]と同様に共通テストらしい問題である。仮定や会話文から必要な情報を読み取り、問われている内容と数式の対応を把握することに時間がかかる一方で、図や計算結果を与えることで受験生の負担を軽くする配慮もみられ、純粋な思考力を測ろうという出題者の意図を感じる。
第3問:場合の数と確率 [やや易]
・何本かのひもでつながれた、区別された複数の球の色の塗り方を考える問題。
・(1)~(4)は確実に得点したいところ。(5)は焦らず誘導にのることができるかで差がつくだろう。(6)は誘導がないが、(5)の考えを応用すればよいことや、応用の仕方に気づけるかがポイントであり、共通テストらしい思考力を試す出題である。
第4問:整数の性質 [標準]
・長方形をいくつか並べて正方形や長方形を作る問題。
・(2)の最後の問題を除いて求めるべきものが明確で、約数と倍数に関する基本的な知識があれば得点できる。一方で、(2)の最後の問題は誘導がなく、3元1次不定方程式もしくは数個の2元1次不定方程式について考察する必要があるため、難易度は高い。
第5問:図形の性質 [標準]
・与えられた手順で作図し、その図形がもつ特徴を考察する問題。
・(1)は誘導に沿って円に内接する四角形の性質や円周角の定理についての知識を用いることができるかが重要で、図形問題の基本が身についていれば解ききれるだろう。(2)は自力ですべてを作図したり、作図後に(1)の考えを応用しなければならない。さらに「円の半径を求めるために必要な図形の性質を考え、さらにその性質が成り立つための条件を予測し、成立を確かめる」といった、数段階の思考を要するため、差がつく問題といえるだろう。
攻略へのアドバイス
最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。数学Ⅰ・Aで求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
教科書の知識をしっかりと身につける
共通テストでは、思考力や判断力を問う出題が多く見られるが、こうした問題はそもそも基礎的な知識が身についていることが前提で出題される。教科書に載っている知識をすべて身につけ、扱えるようにしておこう。
探究心を大切にする
思考力や判断力を問うと一口に言っても、「グラフを読み解く」、「知識を発展させる」、「深堀りさせる」など、さまざまなバリエーションがみられるが、いずれも、慣れていないと時間がかかってしまったり、方針に気づけなかったりする。ここでいう「慣れ」とは、問題をたくさん解くことだけでなく、一度考えた内容を振り返ることで身につけられるものであることを意識してほしい。取り組んだ問題の量だけが大切なのではなく、1つの問題に対する取り組み方も同じく大切で、たとえば「別の考え方でも解けないか」、「こういうときはどう考えよう」など、さらに視野を広げて探究することで、様々な状況への対応力や考える力を身につけることができる。
「自分を信じる力」を本番で維持できるかが最も大切
「自分を信じる力」を本番で維持できるか、一番大事なのはそこである。そのために、良質な演習の積み重ねが大事。早い時期から、さまざまなレベル・ジャンルの問題に触れて、万全の対策を進めておこう。
Z会には、共通テストを徹底分析して作り上げた対策講座である専科「共通テスト攻略演習」がある。共通テストで求められる力をバランスよく鍛えるために、ぜひ活用しよう。そして、「何でもドンと来い!」というゆるぎない自信をもって来年の本番を迎えてほしい。
◆[専科]共通テスト攻略演習
共通テストの傾向をふまえた教材に取り組みます。毎月の演習で、基礎固めから最終仕上げまで段階的に対策を進められます。
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