「地理」2018年度東京大学個別試験分析

2018年度東京大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化(地歴…時間:2科目150分) 
・指定字数2行(60字)・3行(90字)の論述問題が中心だが,単答問題も多い。
・ほぼすべての大問において,資料(統計表・グラフ,地図など)を利用した問題が出題される。
・2017年度に比べ,問題文の量と論述字数が増加した(31行;930字→36行;1080字)が,題意をつかみにくい問題は見られず,資料数も昨年と同じであるため,難易度は昨年並(標準)であった。

■今年度入試の特記事項
・第1問の「自然環境」,第3問の「日本に関する出題」は例年通りの出題であった。第2問は例年第1次産業・第2次産業が中心であったが,今年度は海域をはさんだ地域のつながりに関する出題として,運輸とインド洋をとりまく交易や交流などに関する出題であった。
・2014年以来の,語群から任意に語句を複数選んで論述する問題が出題された。
・第3問の設問Cは,会話文をもとにした出題であった。
・第3問で,3都市について1行ずつで説明するという形式の出題が見られた。
・今年度も地形図の読図に関する出題は見られなかった。

■合否の分かれ目
・指定語句を用いた論述問題が2017年度の4問から7問に増加した。指定語句から解答の方向性をうまくつかむことができたかどうかで点差が開いたと思われる。
・単答問題は出題数が減少したものの,基本的な内容がほとんどであったため,ミスなく確実に解答できたかにより,得点の積み増しができたものと思われる。
・問題数が多いため,時間を意識し最後まで解答しきれたかどうかでも点差が開いたと思われる。
・ハリケーンやサイクロンによる洪水や土砂崩れの影響など,近年起こった災害についても出題された。時事的な出来事と地理的な視点を結びつけて考えられているかが合否の分かれ目となった。

■大問別ポイント
 第1問  
・「地球環境と気候」をテーマとする大問。全体的に基本的な問題が多く,問題の指示に従って確実に解答したい。設問A(3)や設問B(4)では,将来の変化の予測についての出題がされており,新指導要領を意識していることが感じられる。
・設問Aは,二酸化炭素濃度の変化に関する出題。(2)は二酸化炭素濃度の減少と光合成との関係が結びつけられるかどうかがポイント。(3)は指定語句の「固定」の使い方が難しい。
・設問Bは,世界の熱帯低気圧に関する出題。(1)の熱帯低気圧の名称は確実に解答したい。(2)の熱帯低気圧の進路については,問題文で進路の方角が示されているため,具体的な恒常風の名称も併せて解答したい。(3)は少々難しい。熱帯低気圧の発生のメカニズムや気候因子の存在など,幅広い角度から考えられるかがカギとなる。アタカマ砂漠の形成要因もヒントとなるだろう。(4)は被災地域をどこにするかで解答の方向性が変わる。自然的変化として高潮や森林の減少による土砂崩れの被害,社会的変化として人口増による居住地の拡大など様々な解答が考えられ,指定字数でまとめることが難しい。

 第2問  
・「世界で見られる,海域をはさんだ地域のつながり」をテーマとする大問。例年「産業」を中心とする出題であるが,今年度は運輸など第3次産業が中心であった。時事的な内容も含んでいるが,各国・地域の産業などと結びつけて考えれば難しくない。
・設問Aは,コンテナ輸送など国際海運に関する出題。(1)は時事的な内容。中国の経済発展や工業化と,表2―1の2014年の上位にそれまで下位だった上海,深圳,寧波など,同じ中国の港がランクインしたことをヒントに考えたい。(2)は鉄鉱石の輸出上位国を思い浮かべて解答したい。(ア)は東アジアの国・地域に広く輸送されていることから,距離的に近いオーストラリアと判断したい。⑶も時事的な内容である。指定語句の使い方が難しいが,問題文の説明や表2―2も参考にしよう。指定語句の「アメリカ大陸」は北アメリカだけと考えず,ブラジル・アルゼンチンからの穀物輸送の面からも考えてみよう。
・設問Bは,インド洋を取り巻くモノ・文化・ヒトの移動に関する出題。(1)のムスリム人口を擁する国は問題文もヒントにして容易に解答できるが,イランとA国(インドネシア)の国の統治のあり方の違いについての説明が難しい。イランは政治とイスラム教が深く結びついたイスラム共和制を採る一方,インドネシアでは宗教の政治への影響力は小さいことを指摘したい。(2)は両国ともにイギリスの植民地であったことは基本的な内容であるが,どの国でどの農作物の栽培が行われていたかまで確実に指摘したい。(3)は東南アジア諸国とアフリカ東南部インド洋沿岸諸国の今後の貿易や投資について推測する問題であり,新指導要領で重視されている思考力や判断力を問う問題であった。両地域の産業や経済の発展度合いの違いを明確にして解答したい。過去の東大の出題でも中国からアフリカへの資源開発についての出題が見られたため,過去問対策をしていた受験生にとっては参考になったと思われる。

 第3問  
・日本における「人口と都市」をテーマとする大問。論述字数が多く,語群から任意に複数の語句を選ぶ出題もあるが,内容は基本的であり解答しやすい。
・設問Aは,近年人口が増加した都県を中心とした出題。(1)の都県の判別は,人口が急激に増加した時期に特徴があるため判定しやすい。(2)は各県と大都市との距離だけでなく,地形や交通手段の有無など地域の特徴についても触れたい。(3)の2は中国地方の瀬戸内海側と日本海側の県を例に考えるとわかりやすい。
・設問Bは,城下町を由来とする3都市の立地を,地形の面から読み解く出題。(1)は地図からも地形の特徴を導き出せる。(2)は集中豪雨や台風による土砂災害や高潮について触れておきたい。
・設問Cは,会話文をもとに,大都市の土地利用について説明する出題。(1)は大都市における業務地区と生活圏の違いを,指定語句をヒントに明確にしたい。(2)は居住地の現在の人口数や居住者の構成はどのような状況にあるかを明確にしつつ解答したい。

 

東大地理攻略のためのアドバイス

東大地理を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 使いこなせる知識力
東大地理では,全分野・地域の基本事項を覚え,使いこなせる“知識力”が求められる。なかでも,自然地理(地形・気候・植生など)に関する出題とそれに関連する農牧業・文化・環境問題の出題が多い。これらに対応するため,自然地理に関する知識をとくに確実なものにしておく必要がある。

●要求2● 多くの情報を読み取る資料読解力
東大地理では,統計資料・地図などから多くの情報を読み取る“資料読解力”を必要とする問題が多い。とくに資料から国名・品名などを判定する問題に正解することは,合格点確保には必須である。また,地形図の読図問題が出題されることもあるので,基本的な地形図の読図力も養っておきたい。

●要求3● 簡潔・確実に解答できる表現力
東大地理の出題形式の中心は,60字・90字の論述問題である。このような指定字数の少ない論述問題に対応するには,問題で要求された条件に対して,簡潔・確実に解答できる“表現力”が求められる。それには,「題意を正確に把握し,聞かれていることだけに答えること」「掲載資料・リード文の意味を読み取り,それらへの配慮がわかるような表現を織り込むこと」を意識した論述演習が必要である。
まずは,東大地理を攻略するために,基礎力を完成させよう。それには,●要求1●を満たすため,教科書学習を中心に,学習が手薄な分野・地域をつくらないように努めよう。Z会の通信教育の本科「東大地理」を利用するなどして,高校3年生の夏までには教科書の全範囲の学習を終わらせておきたい。とくに,東大地理で頻出の自然地理(地形・気候)や日本地理(とくに人口・都市・工業)の苦手分野は必ずなくしておくこと。
また,●要求2●を養うため,統計集や地図帳に日頃から目を通す習慣をつけ,統計の持つ意味を理解しておくことが重要である。
次に東大型の問題への取り組みを始めよう。実際の入試で総字数1,000字程度の論述問題を75分ほどで取り組むことを想定すると,基礎力の完成を待って論述対策を始めるのは得策ではない。遅くとも高校3年生の夏までに,論述力養成にも着手しておきたい。また,東大地理の攻略には,過去問などで傾向を知り,東大型の問題演習を繰り返し行うことが有効かつ効率的である。とくに高校3年生の秋以降は,Z会の通信教育で,これまで身につけた●要求1●・●要求2●の力を試しながら「複数資料の比較」や「芋づる式」といった東大型の問題に取り組み,添削指導を受けることで,●要求3●を磨いていこう。
最後は実戦演習を行おう。最終的には,「素早く」「確実に」資料判読を行うことで失点を抑え,答案の完成度を高めて得点の上積みができるようにしておきたい。●要求1●~●要求3●をすべて身につけた上で,Z会の通信教育で,制限時間・時間配分や問題に取り組む順序などを意識し,より本番に近い形で得点力のある答案を作成する訓練を積もう。

▼「東大コース」地理担当者からのメッセージ
第1問の環境問題は頻出のテーマですが,指定語句の使い方のイメージがつかない,という受験生も多かったかもしれません。地理は問題数が多いので,その問題だけに引っかかってしまうと,他の正解できたかもしれない問題も時間切れで失点してしまうおそれがあります。東大の問題では,時間配分を意識し,別の問題に取り組むなどの「戦略」が重要です。多くの東大型の問題に取り組むことで対策しましょう。なお,設問A⑵の二酸化炭素濃度の変化の図は,2017年度の本科「東大コース」でも取り上げていました!「資料判読のポイント」をチェックしていれば,解答の方向性を難なく決めることができたでしょう。また,第2問の設問A(1)の「シンガポールとホンコンのコンテナ取扱量の変化」は2017年度の特講「直前予想演習 東大即応地理」第2回の大問2でも出題していました! 本問を丁寧に学習していれば,確実に得点できたはずです!
・東大地理では,日本地理を完璧にしておくことをおすすめします。2018年入試も,日本についてやや詳細な内容が問われました。日本地理は対策が手薄になりがちですが,中学校で使用した教科書や参考書なども活用して,しっかり対策しましょう。