2024年度「東大文系数学」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 難易度は2023年度よりやや難化
  • 分量は2023年度並み

2024年度入試の特記事項

  • 易しかった2023年度に比べるとやや難化したが、東大文系としては少し易しめの難易度である。
  • 東大文系としては珍しく、指数・対数(大小評価)に関する問題が出題された。
  • 例年、理系との共通問題や類題が1問程度出題されるが、2024年度はそのような問題は見られなかった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 全体を通して小問による誘導がある大問が多いので、完答できなくても部分点をできるだけ確保したい
  • 処理力重視の第1問と第3問、および第2問(1)を中心に取り組み、全体で5割以上を確保したい。先の大問や設問を確保した上で、本セットでは難しめの第2問(2)や第4問で部分点がとれれば御の字である。

さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

  • (1)は放物線と円が2点で接する条件、(2)は面積の計算、(3)は不等式の証明と、様々な分野の内容が含まれる問題であるが、どの設問においても、数式の処理力が重視されている点は変わらない。
  • (3)の不等式の証明は様々な解法が考えられるが、いずれの場合も、不等式を示しやすい形にうまく読み替えられるかがポイントである。

 第2問  

  • べき乗で表された整数について大小評価をする問題。(1)はよくある問題であるが、2の常用対数の値が不等式で与えられているので、近似値0.3010が使えない点に注意が必要である。
  • (2)は、(1)のような機械的な処理ではうまくいかない問題であり、答えを予測して示すことが必要とされる。数の大きさを大雑把に見積もる数値感覚があるかどうかで差がつくだろう。

 第3問  

  • 座標平面上の2つの動点P、Qに関する問題。(1)では、角度が等しい条件をもとに、直線QMの傾きを捉えられるかどうかがポイント。そこさえクリアできれば、(2)、(3)を含め、ほぼ計算するだけの問題となる。(1)が解けた受験生にとっては完答しやすい問題であっただろう。

 第4問  

  • 円に内接する正n角形から4つの頂点を選んでできる四角形が円の中心を内部に含む確率を求める問題(nは5以上の奇数)。小問による誘導がなく、自力で方針や手順を組み立てる力が必要な問題であった。まず、選べる点の制約が多い方が考えやすいことから、余事象に着目できるかがポイントである。以降は様々な方法が考えられるが、4点のうちどの点を先に決めると処理がラクになるかをうまく見きわめたい。

 攻略のためのアドバイス

東大文系数学を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 高度な思考力

特別な知識は要求されないものの、 高いレベルの思考力、 発想力を試す問題も多く出題されている。 他の大学では、一見しただけで典型問題だとわかる出題が多いが、 東大では出題の仕方がかなり工夫されており、 すぐには問題の解法が浮かびにくいものが多く、 解法を決める力が求められる。

●要求2● 速く正確な処理力

例年、東大の数学では処理量の多い問題が出題され、複数の文字を含むものや絶対値記号を含む問題などが好まれている。 やや高度な出題も見られるが、 処理力重視の問題は、 答えまでの見通しを立てやすいものが多い。 数式処理力の差は直接得点差につながるので、 速く正確に処理できる力を充実させておきたい

●要求3●解ける問題を見きわめる力

東大の数学では、 一部の易しい年を除いて、例年5割程度取れれば合格ラインといえる量とレベルのセットで出題されている。 つまり、 全問を解く必要はなく、 解く問題の選択が合否を分けるといえるだろう。 過去問演習などをとおして、 完答できる問題を見きわめる力を養っておきたい。 また、 完答できない大問でも、 小問単位で解ける問題がある場合には、 もちろん解かなくてはならない。

対策の進め方

まずは、苦手分野があれば、受験生の夏までには克服したい。ただし、基本的なことばかりやっていては、高度な思考力を要求される東大入試には太刀打ちできなくなる。

受験生の秋以降はより実戦的な演習を行い、得点力アップを図ろう。また、答案を作成する力の養成も意識したい。

共通テストが終わったあとは、東大入試に即応した問題で、最後の総仕上げをしよう。解答を作成する時間や、採点者にきちんと伝わる答案作りを意識し、実戦力を完成させよう
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