「東大化学」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 大幅に易化した2017年度を基点に、2021年度まで年々少しずつ難化していたが、2022年度は、2021年度に比べてやや易化した。ただし、2021年度と同様、計算問題の負担が大きかった
  • 2021年度と同様、すべての大問が中問に分かれており、中問6題であった。小問数は31問で、2021年度の33問に比べてわずかに減少したが、全体の分量は昨年と同程度であった。

2022年度入試の特記事項

  • 出題順は、2021年度は、第1問:有機、第2問:理論、第3問:(無機・)理論であったが、2022年度は、第1問:有機、第2問:(無機・)理論、第3問:理論であった(2017〜2020年度は、第1問:有機、第2問:(理論・)無機、第3問:理論の順)。
  • 論述問題は、2021年度と同じく2題出題されたが、2022年度は論述の負担がやや減少した。また、文字数指定がない形式が定着しつつある
  • 計算問題の分量が多く、時間内に完答するにはかなりの計算力を要する

合否の分かれ目はここだ!

  • 2017年度以降、難度が上がってきているとはいえ、依然として東大としては平易な問題も多く、合格には高得点が必要になると考えられる。試験時間に対して分量が多いため、解ける問題を優先して解き、得点をしっかりと確保することが重要だっただろう。
  • ところどころに煩雑な計算を要する問題が含まれていたため、丁寧に全問を解答するより、時間をかけずに手際よく解き進めていく力が必要であった。ただし、答が次の設問に連動する計算問題も多かったため、計算ミスには十分気をつけたい。
東大化学を突破するために必要な
「本質の理解」につながる学習ができる!



さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問 

I <有機> 油脂の構造決定

油脂に関する構造決定の問題。実験の一つとしてオゾン分解を行っているが、途中で還元的処理を行っている点は目新しい

  • ア、イは油脂の典型的な問題であり,確実に得点したい。
  • ウも、論述問題ではあるが、頻出の内容である。
  • エ、オは実験結果から油脂の構造を答える問題であり、与えられた条件を正確に理解していることが求められる

    II <有機> アルケンの構造決定

    C5H10で表されるアルケンに関する構造決定の問題であり、マルコフニコフ則とザイツェフ則がテーマであった。それぞれの法則名とその概要は知っていても、反応の仕組みまで理解していた受験生は多くないだろう。

    ただし、ク以外は法則の概要を理解していればある程度正答を導けるため、このテーマの問題を演習していた受験生は迷わず解き進められたかもしれない。初見であっても比較的取り組みやすい問題であった。

     

     第2問  

    I <理論> 熱化学

    火力発電に関する熱化学の問題。火力発電において排出されるCO2の物質量がテーマとなっており、異なる反応工程を熱化学の視点で比較している。

    いずれの設問も、熱化学方程式を正確に組み立て、係数を考慮できれば立式は難しくないが、エ以外はすべて計算問題であるため、計算にかなりの時間を要する。場合によっては立式だけして計算を後回しにするなど、時間をかけ過ぎずに解き進める必要がある


    II <理論・無機> 錯イオン

    錯イオンに関する問題。

    • カ、キは無機分野において頻出の問題であるため、確実に得点したい。
    • クは、結晶内に含まれるシアン化物イオンの数を、いかに漏れなく効率的に数えられるかがポイントとなる。
    • ケ、コは結晶と気体の性質に関する基本的な問題であるが、計算が煩雑であるため、計算ミスには十分気をつけたい

     

     第3問 

    I <理論> 二酸化炭素に関する総合問題

    二酸化炭素の回収と貯留をテーマとした、二酸化炭素に関する総合問題。

    • ア、イは鉄の製錬に関する基本的な問題であった。
    • ウ、エは海洋中の二酸化炭素に関する問題であり、テーマとしては目新しいが、問題文中にある条件を正しく用いれば正答を導ける
    • カのグラフ選択問題は、問題文の内容を正しく理解しているかが問われた。

    II <理論> 反応速度および化学平衡

    タンパク質における反応速度および化学平衡に関する問題。

    • キ〜コは、初めの空欄dで正答を導けないと、その後の設問で得点するのは難しい。また、設問ごとに使用可能な文字および濃度が指定されているため、それに注意して式変形する必要がある。
    • サは、異なる3種の抗体を用いた場合における、生成物の濃度変化を表すグラフを選択する問題。グラフとしては反応速度の問題でよく見かけるが、反応速度定数からグラフの形を推測させる点は目新しく、思考力を要する。反応速度定数の違いが、反応速度や平衡にどのように影響するかなど、化学平衡に関する深い理解が必要である。

     攻略のためのアドバイス

    2017年度以降、見慣れない題材について長いリード文を読むような問題はなりを潜めていたが、高校化学で扱わない内容を考察する問題として、また少しずつ姿を見せ始めている。出題傾向の変化に関わらず、必要とされる力そのものに大きな変化はない。基本的な事項を、暗記するだけではなく深く理解しておくことはもちろん、例年どおりの難度の高い応用問題が出題されても対応できるだけの十分な力をつけておくべきである。

    東大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。

    ●要求1●難問に対応する思考力と応用力

    東大化学では、高校で学習する内容をそのままあてはめるだけの問題も出題されるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて考える問題である。よって、基礎力の確立と、それを柔軟に使いこなせる思考力、応用力の養成が求められる。全分野において法則を正しく使いこなせるようになるのが第一である。

    ●要求2● 長い問題文を短時間で読み解く読解力

    東大化学では、実験操作や高校化学の範囲外の内容などに関する長い問題文を読み、題意を読み取り解答する問題が出題される。限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に理解する力が要求される。見慣れない題材・実験にも臆さないよう、他大学の過去問(京大・阪大といった難関大)にも目を向けて演習しておくとよい

    ●要求3●計算問題の解答時間を短縮する計算力

    煩雑な計算問題が出題される東大化学では、計算力を身につけることが必須である。ふだんの問題演習では、電卓を使用したり、頭の中だけで考えたりするのではなく、実際に手を動かして計算し、計算自体に早いうちからしっかり慣れておこう

    対策の進め方

    まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。近年の東大化学では、応用問題を解くうえで前提となる標準的な内容を確実に押さえることが、よりいっそう求められている。また、有機の「高分子化合物」の単元は対策が遅れがちなので、とくに意識して取り組んでおきたい。Z会の通信教育[本科]「東大コース」Z会の本『化学 解法の焦点』などを利用して、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めよう。

    高校化学全般の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。Z会の通信教育でも、さまざまなタイプの添削問題を通して、演習を積んでいく。

    演習を順調にこなしていけるようであれば、●要求3●もある程度は満たされていくであろう。自分の得意不得意、問題の難易度などを意識し、解答時間内で得点を最大化できるような自分の解き方を身につけてほしい

    Z会で東大対策をしよう

    Z会東大化学担当者からのメッセージ

    今年の東大化学は、近年の傾向と同様、奇抜な題材は少なく、東大受験生であれば見覚えのある題材が中心でした。ただし、問題の分量が2016年度以前の水準にほぼ戻り、また手間のかかる計算問題や難度の高い問題が数多く含まれていたため、かつてのように「解かない問題を見抜く力」も必要なセットだったといえると思います。

    したがって、まずは標準的な問題を確実に正解したうえで、差がつく問題をできるだけ多く正解して、高得点をめざしたいところです。分量が多いので、解く問題に優先順位をつけ、試験時間内にすばやく処理する力が求められるでしょう。

    また、高校化学で扱わない内容について考察する問題も、また少しずつ出題されるようになってきています。日頃の演習や過去問演習をとおして、通り一遍の学習をするのではなく、「この現象はなぜ? この操作は何のために行っている?」ということを常に考えながら学習を進めていくとよいと思います。

    Z会の大学受験生向けコース[本科]「東大コース」では、このような盲点になりがちな箇所を突く出題をしていきます。東大受験を目指す方には、表面的な理解にとどまらない、本当の学力を身につけていただきたいと思います。

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