Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
Z会数学担当者からのメッセージ
東大理系数学では、解法パターンを覚えているだけでは太刀打ちできない、難度の高い思考力を要求される問題が出題される。このような問題を本番で解けるようにするためには、自分で試行錯誤して考えないと解けないような問題に、日頃から取り組んでおくことが必須である。
Z会の「東大講座」では、過去の東大の出題を踏まえた良質な問題を出題しているので、本番さながらの演習で思考力を養い、東大合格を勝ち取ろう。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化
- 難易度は2024年度からやや難化
- 分量は2024年度並み
2025年度入試の特記事項
- 2024年度に続き、文系との共通問題や類題が見られなかった。
- 整数や場合の数、数列といった東大頻出の分野からの出題もあり、差がつきやすい東大らしいセットであった。
- 2024年度に比べて、完答しにくい問題が増え、やや難化した。
合否の分かれ目はここだ!
- 大問の難易度には適度に差があるのが通例。また、難しい大問では、手のつけやすい(1)が設けられていることが多いが、年度や問題によっては、前半の小問が考えにくいこともあるので、大問や小問の順番に関係なく、易しい問題を見きわめて得点を重ねることが重要である。
- 2025年度では、まず比較的取り組みやすい第1問を確保した上で、やや難度の高い第2問と第5問は(1)のみを着実に得点し、残る第3問、第4問、第6問から得意分野を中心にどれだけ完答を積み上げられるかが勝負である。これら3問から合計2問程度完答できれば、十分合格ラインといえるだろう。
さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
第1問:平面座標、微積分 [標準]
- 座標平面上の点の軌跡について、パラメータ表示、面積、曲線の長さを求めていく問題。丁寧に処理して、確実に得点したいが、最後の曲線の長さの根号の処理で少し迷うかもしれない。
第2問:微積分 [やや難]
- 定積分で表された数列の極限をテーマとする問題。(1)は誘導となる不等式の証明であり、(2)でこの不等式を使ってハサミウチの原理を利用するという方針は立てやすい。ただし、与えられているのは1つの不等式のみで、もう一方の不等式を自ら考える必要もあり、この種の極限値の問題としてはやや難度が高いだろう。
第3問:三角関数 [標準]
- 与えられた平行四辺形に外接する長方形の面積の最大値を求める問題。(1)で変数θも設定されているので、方針に迷うところはないが、やや処理量が多いかもしれない。場合分けなども含めて、丁寧に処理することで、得点につなげたい。
第4問:整数 [標準]
- 正の整数 a に対して、 n2 + n – a が平方数になるような正の整数 n について考察する問題。(1)、(2)ともに、どのように手をつければよいか、処理の方針をつかみにくいかもしれない。しかし、問題の設定から、(1)は大小関係に注目して評価すること(不等式を考えること)、(2)は 4a + 1が素数かどうかに注目して処理すること、という見通しを持って考えれば、論証の糸口が見えてくる。
- 東大頻出の整数問題でもあり、差がつきやすい問題といえるだろう。
第5問:場合の数、数列 [やや難]
- n 枚のカードをある操作で並べ替えたときに、1、2、…、n の順になるような並べ方の数 cn について考える問題。(1)で左端の2枚のカードについて調べているので、(2)はこれを用いて場合分けして、cn を cn – 1 と cn – 2 に帰着させることを考えていけばよい。ただし、操作がやや複雑なため、正確に(漏れや重複なく)考察を行い、答案にまとめるのはやや難しいかもしれない。
第6問:複素数平面 [標準]
- 複素数平面上における円と「逆数をとる」という変換を題材とした問題であり、点の存在範囲や最大・最小を考えるもの。極形式を活用して考えること、また実部と虚部に分けてxy 平面上の問題として考えることの両方を用いていくとよく、総合的な数学力が試される。
攻略のためのアドバイス
東大理系数学を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。
●要求1● 高度な思考力
特別な知識は要求しないが、高いレベルの思考力、発想力を試す問題が多く出題される。他の大学では、一目で典型問題だとわかる出題が多いが、東大では出題の仕方がかなり工夫され、すぐには問題の解法が浮かびにくいものが多い。初見の問題に色々な面からアプローチして、解法を決める力が求められる。確率、整数の問題で主にこの力が問われる。
●要求2● 速く正確な処理力
例年、処理量の多い問題が出題され、比較的処理量の少ないものでも、1問あたり20~30分くらいかかるものもある。とくに微積分の問題で、ハードな計算を要求するものが多い。また、やや高度な出題も見られるが、処理力重視の問題は、方針が立てやすい。数式処理力の差は直接得点差につながりやすいので、速く正確に処理できる力を充実させておきたい。
●要求3●解ける問題を見きわめる力
例年、5割程度取れれば合格ラインといえる量とレベルであることが多い。そのため、全問を解く必要はなく、解く問題の選択が合否を分けるといえるだろう。過去問演習などで完答できる問題を見きわめる力を養いたい。それ以外の大問でも、解ける小問はもちろん解くべきである。
対策の進め方
苦手分野の克服+東大レベルの問題を解く
苦手分野があれば、遅くとも受験生の夏休みまでには克服したい。ただし、基本的なことばかりやっていては、高度な思考力が要求される東大入試には太刀打ちできなくなる。高2の秋以降、東大レベルの問題に接していくことでライバルに差をつけよう。Z会の講座では、東大入試で重要な単元の内容を確認しながら、東大レベルの問題の学習を進められる。
レベルUP
受験生の秋以降は実戦的な演習を行い、得点力アップを図ろう。また、答案を作成する力の養成も意識したい。受験生用のZ会の講座では、東大で頻出の確率、整数、図形、微積分を中心とした東大対応の演習をする。
東大レベルの演習
共通テストが終わったあとは、東大入試に即応したZ会の問題で、最後の総仕上げをしよう。解答を作成する時間や、採点者にきちんと内容の伝わる答案作りを意識し、実戦力を完成させよう。
Z会でできる東大対策・ご案内
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