Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)
- 見慣れない状況設定の問題が多く、問題の分量はかなり増加した。
- 題意を把握しにくく、かなりの読解力が必要とされた。
- 上記に加えて、各設問の難易度も大幅に上がって、近年の東大物理の中でもかなり難しい問題であった。
2023年度入試の特記事項
- 例年、力学、電磁気分野から各1題、その他の分野から1題の計3題の出題構成であるが、今年度は第1問、第2問ともに分野融合的な問題であった。
- 例年、各大問ともに最初のいくつかの設問は基本理解を問う設問であったが、今年度はこの傾向が薄れ、いきなり結論を問うものもあった。
- 2022年度も、近年の傾向に沿って、一部の設問で穴埋め形式の出題があった。
- 例年同様、2023年度もグラフの選択問題が出題された。
合否の分かれ目はここだ!
- 東大入試の対策をきちんと立ててきた人にとっても、2023年度の問題は難しかったと思われ、手がつけられそうな問題を選んで、時間内にミスなく解答することが求められた。
- 見慣れない設定が多く、題意を把握するのに手間取った人が多いと思うが、状況を正しく理解できれば、解答できそうな設問を選択するのはそう難しくはない。
- 比較的解きやすかったと思われるのは、第1問Ⅰ、第2問Ⅰ、Ⅱ(1)、第3問Ⅰ、Ⅱあたりで、これらを正解できたかが分かれ目となっただろう。
- 難易度、分量、時間を考慮すると、すべてに手をつけるのは難しく、全体で5割できていれば十分合格圏に達したと思われる。
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大問別のポイント
第1問 力学、電磁気、原子 [難]
核崩壊によって生じた原子核の検出
核分裂する原子核の電磁場内での運動について考察する。核反応の問題については力学で扱う物体の衝突や分裂が基本で、本問ではそれらの要素に加えて、磁場内での円運動や電場内での放物運動、さらに放射性崩壊の半減期についての考察が必要だった。
- Ⅰ(1)、(3)は標準的で取り組みやすい。(2)は半減期を扱っており、対数計算を必要とすることに戸惑った人も多かっただろう。
- Ⅱは、電場中の荷電粒子の放物運動を扱うが、核分裂がどこで起こるかによって運動の様子が異なることを的確に見抜く必要がある。問題文の誘導に則って素直に考えていくことが必要で、どの座標系で考察しているのか判断した上で、αと分裂点との関係を念頭に置いて考察する必要がある。(2)では、2次関数の最大最小についての考察が求められた。(3)は、前問までができなくても、定性的な判断で答えることは可能だった。
第2問 電磁気、波動 [やや難]
電磁誘導、磁場内で電流が受ける力、直流回路、光の干渉
見慣れない装置のため、問題文がかなり長大で、状況を理解するのに時間がかかる。
各設問ともに導入的な設問がないので、慎重に取り組みたい。ただし、状況を把握できれば、それほど高度な考察を要求するものはなく、読解力が試される問題だった。
- Ⅰは、電磁誘導、磁場中でコイルに働く力、マイケルソン干渉計の原理などを扱う。
- Ⅱは、問題文に示された回路図を正しく理解した上で、設問で要求されていることを把握できれば、それほど難しくはない。
第3問 熱力学 [難]
ゴム風船の熱力学
Ⅰは、球形のゴム風船内の圧力と半径の関係を求める問題で、問題で与えられた仕事の関係式を用いて解答できる。
Ⅱ、Ⅲはゴム風船に気体を満たしたときの風船や風船内の圧力変化を考察する。
- Ⅱは、この現象を知らなかった人にとっては、(1)が予想と異なる結果で戸惑ったかもしれないが、(1)ができれば(2)も解答できる。
- Ⅲは、与えられたσの関数から、風船内の圧力変化の様子を把握できたかどうか。解法がすぐに思いつかなかった場合は、深追いしない方が得策だっただろう。
攻略のためのアドバイス
東大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 読解力
丁寧な説明や誘導が東大物理の特徴の一つ。現象や原理の説明が長い文章で示されることがある。長い文章の中には、解答のヒントが含まれているものである。したがって、東大物理の攻略には、限られた時間で文章から現象を正確に読み取る力が不可欠である。
●要求2● 現象を解釈する力
正解を得るためには、問題文から読み取った現象を、教科書レベルの原理、法則を用いて解釈する力が必要である。まずは、基本事項の理解を深めることを目指そう。
●要求3●適切に記述する力
東大物理では解答の自由度が高い解答用紙に、設問ごとに適切な解答を記述する必要がある。適切に解答する力は、答案を書く訓練を繰り返しながら身につけるしかない。
対策の進め方
まずは、●要求2●を満たすことを目指そう。独学が困難な物理は、授業を大事にしたい。高校3年の夏までには、基礎事項を完成させたい。Z会の本『物理 解法の焦点』は、高校物理の全範囲について、教科書だけでは学べない実戦的な解法を身につけることができるので、早い時期から取り組むことをおすすめする。
次の段階として、基本事項を東大レベルの問題に応用できる力を高めよう。そのためには、問題の意図を的確につかむこと、つまり、●要求1●を満たす必要がある。このためには、良質な問題を数多く解いておきたい。Z会の通信教育では、読解力を養うのに最適な良問を提供している。
ここまでの学習が順調であれば、●要求3●もある程度は満たされているはずである。最後は、東大型の問題演習に取り組もう。即応した問題を解くことで、さらに数点の上乗せを期待できる。
Z会で東大対策をしよう
2023年度の東大物理は、近年ではかなりの難問が出題された年と言えるでしょう。時間の割に分量が多いのは例年以上で、時間内にすべてに目を通すことも困難だったかもしれません。とはいえ、例年同様に、基本的な考え方をもとに、題意を素直に解釈して、学習したことを応用する力が問われる問題でした。難問ばかりとは言っても、解答可能な設問は見つかるはずで、これを見極めて確実に得点できた人が合格できたと考えられます。
東大物理の問題は、基礎的な理解を土台として考察できるように工夫された問題ですので、まずは基本事項に対する理解を深め、その上で理解した基本事項をどうつなげて問題を解くのかを、良質な問題を解くことで養成していきましょう。良質な問題は、基本の理解が不十分であったことを気づかせてくれるはずで、その気づきによってさらに対応力も身についていきます。
そのための演習問題として、東大の過去の出題傾向を十分に研究したZ会の通信教育、本科「東大講座」が非常に有効です。本科「東大講座」では、無理なくステップを踏みつつ、添削指導による記述力の養成を含めて合格のための力を身につけることができるように構成されています。また、特講「過去問添削 東大物理」では、本番のシミュレーションとして実際の東大物理の問題を演習できます。演習を繰り返すことで、本番であわてることなく取り組んで、合格を勝ち取りましょう。