2024年度「東大生物」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

Z会生物担当者からのメッセージ

2023年度に引き続き、2024年度も時間をかければ解けると思える問題が多く、時間配分に迷った方が多いのではないでしょうか。「もう少しで解けそう」という問題に次々取り組むと、時間が足りなくなってしまいます。先に確実に解ける問題に取り組む、迷う問題・時間のかかる問題は後回しにするなど、時間を意識しながら解き進めましょう

東大入試の記述問題では、100文字程度で伝えたいことを抜けもれなく、かつ素早く書く必要があります。読み手に意図が伝わる文章になっているか、不安な場合にはZ会の通信教育「東大講座」を活用して、添削指導を受けることがおすすめです。論述力は一朝一夕には身に付きませんから、早めの対策を行っていきましょう!


今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 大問数は3題。大問1題当たりの分量は多い。
  • 各大問は分野融合となっており、「遺伝情報の発現」に関わる出題が多い。
  • 用語、正誤判断、論述が中心であるが、年度により数学的な分析や解釈を要する問題も出題される。
  • 解答用紙は、1題当たり横35文字、縦25行程度の文字が書けるように罫線が入っている。論述問題は字数ではなく行数で指定される。

2024年度入試の特記事項

  • 全体のページ数や設問数は2023年度と同程度だが、論述量がやや増え、負担感は増した
  • 各大問の冒頭には4〜5ページ相当のリード文等があり、文章が長い上に図表も多く、また、図表の説明も複雑なので、理解に時間が取られる出題だった。
  • 要求される知識の程度はばらけており、基礎的なものも例年より多かった。
  • 論述問題について、2023年度は行数ではなく字数指定の出題もあったが、2024年度はすべて行数での指定である。

合否の分かれ目はここだ!

  • どの大問も、複数の実験結果を統合して考察する設問が多く、時間配分が難しい。見慣れない図やグラフの検討にも時間を取られただろう。解ける設問を見抜いて素早く処理し、考察問題では解答に必要な情報が何かを素早く取捨選択して効率よく理解を進めていくことが、点数を重ねるポイントになった。
  • 2024年度の知識問題は、2023年度に比較して増えており、また取り組みやすい設問が多かったので、取りこぼさずに解答していきたい。

さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

I  転写の進行とRNAポリメラーゼ末端のリン酸化

  • 遺伝子Xの転写の進行過程と、RNAポリメラーゼのC末端領域のリン酸化の関わりが題材である。
  • Eの論述は難易度が高く、また、Hの論述は方針はみえてもまとめ方に迷うかもしれない。

II 肢原基で転写される遺伝子の活性化とエンハンサーの働き

  • マウスの肢原基で発現する遺伝子Sの転写を活性化するエンハンサーZについて3つの実験が示され、それぞれの解釈と、そのうちの一つの検証実験が問われた。
  • 個々の設問は、独立していて I よりも取り組みやすい。

 第2問 

I  フロリゲンが発現する環境要因と、発現をする制御する機構

  • 長日植物であるシロイヌナズナと、シロイヌナズナに近縁の多年草の、フロリゲンの発現制御が題材である。
  • 正誤判断が「全て選べ」とあるため、迷う選択肢があるかもしれないが、2024年度の設問数と論述量からしてとりあえずの解答を書いて先に進み、じっくり検討することは時間に余裕があればにしたい。

II 花芽形成に関する遺伝子に注目した北海道のイネ品種の改良

  • イネの品種改良を題材に、減数分裂や変異体の選抜などについて問われた。
  • Nは、交配育種であることから、組換えに注目して考える。

 第3問  

I  神経管の発生と分化に関する脊索の関わり

  • 発生の基本的な知識と、神経管の細胞で発現する遺伝子A・B・Cおよび脊索から分泌されるタンパク質Dの相互作用が問われた。
  • Fのグラフ選択は、図3-4の結果をプロットすれば求められる。

II 神経管を構成する細胞の細胞選別と細胞間の接着力

  • 細胞間の接着力と、接着力に影響する遺伝子を欠損させた実験が題材である。
  • 第1問のIIと同等に解きやすい設問が並んだ。

 攻略のためのアドバイス

東大生物を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 正確な 知識力

各大問の前半に知識問題が出題されることが多い。ハイレベルな勝負になる東大生物では、知識問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく、関連する生命現象とあわせて、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。

●要求2● 素早く要点をおさえる 読解力

問題の分量が多いので、リード文はすばやく的確に読み解く必要がある。そのためには、内容を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルのリード文を読む訓練から始めて、徐々に東大レベルに近づけていこう。

また、解答時間を意識しながらの演習は、スピードアップに効果的。また、問題演習などで表・グラフをみるときは、大小関係や変化の様子をつかむことを意識しよう。

●要求3●読解力と知識力に基づく 考察力+論述力

基本となる見慣れない考察問題攻略のコツは、実戦演習を重ねる中で、仮説→実験→結果→考察という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけること。また、論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。独りよがりな答案になっていないか、添削をしてもらうとよい。

対策の進め方

なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏を目指そう)。とくに、「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので、計画的に学習を進めようZ会の本『生物 知識の焦点』は、高校生物の全範囲について、教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので、知識力完成に役立つだろう。

次のステップとして、入試形式の演習問題になるべく数多くあたり、●要求2●●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育「東大講座」でも、東大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。

最後に、問題の分量が多い東大生物では、なるべく全部の設問に手をつけられるよう、問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して、時間配分にも気を配った演習を積もう。

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