「現代社会」2019年度センター試験分析

投稿日時:2019年9月9日

■分量と難度の変化(地歴公民…時間/配点: 1科目60分/1科目100点) ・大問6題、小問数(マーク数)36は昨年度と同様。分量も昨年度並みである。 ・全体の難易度は昨年度並み標準レベルであった。例年の傾向と同様、基本的な知識を中心とした出題であったが、政治・経済分野で踏み込んだ出題が見られるなど、正確な知識が求められた。 ■今年度入試の特記事項 ・アメリカのTPP離脱、日本とEUのEPA交渉妥結、GPS捜査の是非など、最近の出来事が出題された。 ・資料(表・図)を読み取る問題が2問出題されたが、いずれも煩雑な計算を必要とせず、資料と選択肢の対応もわかりやすく、取り組みやすい問題であった。 ・定番の「課題追究学習(調べ学習)」に関する問題が1問出題された。 ・2017・2018年度と続けて出題された、写真を用いた世界遺産に関する問題や、リード文の趣旨を読み取る問題は出題されなかった。 ・2017・2018年度に見られたような、設問の条件に当てはまるものを「すべて選び、その組合せとして最も適当なもの」を解答する形式の出題は見られなかった。 ■いま解いておきたい問題 第1問問7は、1980年代~2010年代の世界的な経済危機に関する正誤問題であった。 本問は、教科書で学んだ内容の他に、時事的な知識も求められた問題であり、2010年代に起こったユーロ危機の要因を押えられていたかがポイントになった。 今年度は本問の他にも、第1問問8や第4問問4、第6問問1で、時事的な知識が必要となる出題が見られた。このようにセンター試験では、例年、時事的な事柄が出題されている。現代社会の学習においては、教科書の内容をきちんと押さえるだけでなく、日ごろからニュースをチェックし、学習した知識と時事的な話題を結びつけて理解しておくことが求められる。 ■大問別ポイント 第1問 ・経済のグローバル化をテーマとして、国際経済のしくみや現状など国際経済に関する出題が中心であった。 ・問4は、国際連盟と国際連合についての基礎的な問題であった。両者の違いを意識して学習しておきたい。 ・1980年代~2010年代の世界的な経済危機を取り上げた問7、経済的地域統合を問うた問8では、2010年代のユーロ危機やアメリカのTPP離脱など、時事的な知識が求められた。 第2問 ・情報社会における基本的人権を題材に、人間の尊厳、日本における自由と権利、日本の司法など、幅広く出題された。いずれも基本的な知識を問う出題であり、確実に正解したい。 ・問2で出題されたアーレントはなじみがない受験生もいただろうが、本問はカントとJ.S.ミルについて押さえられていれば解答できた。見慣れない人名や用語があっても、焦らずに他の選択肢を検討して解答を絞っていけばよい。 第3問 ・「ありがとう」という言葉をテーマに、人の社会性、人間の欲求や葛藤、日本における社会保障をめぐる判決などが取り上げられた。 ・問2では、マズローによる人間の欲求階層説について出題された。欲求の階層構造は知識としても押さえておきたいが、空欄A~Cを含む文章全体を丁寧に読むことでも、解答は判断できただろう。 ・問3も青年期に関する出題であった。レヴィンによる葛藤の分類に関して、当てはまる具体的な例を選ぶ問題であった。「接近」「回避」という抽象的な概念を、具体的な事象に結びつけて理解していることが求められた。 ・問5は、例年出題が見られる、調べ学習の手法に関する出題であった。確実に正解したい。 第4問 ・大学生と大学教員の会話文をリード文として、日本の家族や労働をめぐる法制度、日本の民法・刑事手続き・企業、人口構造、世界の社会保障制度など、幅広い分野が取り上げられた。 ・問2は、4カ国の高齢者の生活と意識に関する調査結果を読み取る問題であった。知識は必要なく、表と選択肢を丁寧につきあわせて検討していけば確実に解答できる。 ・問3では様々な契約について出題された。「18歳成人」が決まったことを受けて、成年になると何ができ、どのような責任を負うことになるのか、時事的な内容と関連させて確認しておきたい。 第5問 ・「地方創生」をテーマとしてデータ活用について述べたリード文を題材に、日本の財政や経済の原理など経済分野から出題された。 ・問1~問4は、基本的な知識を確実に押さえている受験生にとっては取り組みやすかっただろう。 ・問5は、5項目についての目的別歳出決算額を指数化した図を読み取る問題であった。項目数が多く手間取ったであろうが、第4問問4と同様、知識は必要なく、図と選択肢を丁寧に見ていけば確実に解答できる。 第6問 ・EUの主要機関である欧州議会をテーマに、EU、選挙制度、外国の政治制度、政治の原理など、政治分野を中心に出題された。 ・問1は、イギリスの離脱をめぐり注目を集めているEUに関する出題であった。日本とEUのEPA交渉妥結という時事的な事柄が問われた。 ・問2の選挙制度や、問4・問5の政治の原理・思想に関する出題は、頻出事項であり取りこぼしのないようにしたい。  

攻略へのアドバイス

「常識」だけでは対応は難しい。教科書全範囲の正確な理解と確実な知識が必要。その上で、時事テーマにも関心を持とう。 現代社会は「常識で解ける」と語られることがあるが、常識や思考力で対応できるのは、資料読取り問題や、調べ学習に関する問題などの数問程度に限られている。大部分の問題は正確な知識がなければ得点することは難しい。教科書を中心とした学習を行い、高3の夏休みの終わりまでに教科書全範囲の重要語句の内容を押さえること、経済分野の理論や仕組みを正確に理解することを目標に学習を進めてほしい。ただ、現代社会は教科書範囲を超えた詳細な事柄が問われることがある。高得点を狙うためには、秋以降に過去問や類似の問題の演習を積み、復習をしながら不足している知識を補っていくことが大切である。また、時事対策も欠かせないため、新聞やニュースで話題になっている時事テーマに関心を持つようにしたい。 Z会の通信教育の専科「センター攻略演習セット」の現代社会では、夏までに全範囲を網羅し、秋以降はより実戦に近い形でセンター試験型の出題をしているので、各単元の内容が定着しているかを確かめる学習のペースメーカーとして、取り組んでいくとよいだろう。また、Z会の映像「センター講座:現代社会」では、現代社会の重要テーマについて、「センター試験でどのように出題されるか」を意識した詳しい講義と、厳選した問題演習に取り組み、効率よく実戦力を身につけることができる。

 

現代社会担当者からのメッセージ ・今年度は、2018年度から出題形式に大きな変化はなく、過去問演習を積んで対策してきた受験生にとっては取り組みやすかったと思います。また、教科書で扱われていない用語が一部で見られたものの、教科書レベルの知識を確認する問題が中心であり、現代社会の学習を丁寧に行っていれば得点の取れる問題であったように感じます。 ・今年度も時事的な出題が見られました。現代社会の学習では、教科書に基づいた学習に加えて、日ごろからニュースを気にかけておき、時事対策を行うことも大切です。 ・センター現代社会では、政治・経済・現代社会の各分野から、幅広い事項が問われます。苦手分野や学習が手薄な分野を作らないよう、万遍なく基本的な知識のインプットを行いましょう。また、過去問演習を行った際は、「解説」や正解以外の選択肢にも目を通すなどして丁寧に復習し、知識を補っていくことが大切です。特に誤りの選択肢は、どこが誤っているのかを必ず確かめ、1つ1つ着実に知識を身につけるようにしましょう。

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