「政治・経済」2019年度センター試験分析

投稿日時:2019年9月9日

■分量と難度の変化(時間/配点: 60分 / 100点 ) ・2018年度と同様、大問数は4題、小問数は34問となっている。 ・一部にやや細かい知識を問う選択肢があるものの、基本知識で正誤を判断できる内容が中心であり、全体的な難易度としては昨年並みの標準レベルである。 ■今年度入試の特記事項 ・2016年度からの出題構成である、大問4題、かつ各大問が政治・経済・国際政治・国際経済の中から複数の分野が融合的に出題される、という形が踏襲された。 ・図表や統計資料を使った設問が7問出題され、選択肢が示す内容の国を特定した上で資料を読み解く、といった知識判断と読解の2段階を踏む必要がある問題も見られた。 ・2016年度以降出題のなかった、すべての選択肢の正誤を判断する正誤組合せ問題が復活した。 ・信用創造・為替レート・図表読取りで、計算を伴う問題が出題された。 ■いま解いておきたい問題 ・第1問-問3は、国民経済計算の指標に関連して、国民純生産(NNP)と国内総生産(GDP)の定義と算出方法を説明する空欄補充問題であった。 ・国民経済計算の指標は、教科書にも図解が載っているが、この問題ではそれぞれの指標の関連性を自分の言葉で説明できるかが、改めて問われた。そのためには、「固定資本減耗」「中間生産物」とは何か、「付加価値」とは何か、「間接税を引き補助金を加える」のはなぜか、意味を理解する必要がある。 ・国民経済指標や国民所得の三面等価、フローとストックなどに関する出題は、定義を理解していれば得点源となるので、しっかりと身につけておきたい。 ■大問別ポイント 第1問 ・グローバル化と地域経済統合をテーマとして、すべての分野から幅広く出題された。 ・問2の正誤組合せ問題では、常任理事国・非常任理事国の数を把握した上で、安全保障理事会の手続事項と実質事項の表決に合致する文を選ぶことが求められた。 ・問5は、ロシア経済が盲点であったが、慌てずに他の2国を特定し、グラフを丁寧に読み取れば、正答を導くのは容易である。 ・問8の需要曲線・供給曲線の問題は、毎年出題される定番の問題である。設問文で述べられている条件が需要曲線・供給曲線にどう影響するのかをしっかりと見極めて解答を導きたい。 ・問9では金融政策に関連して、時事的な知識にも絡めた細かい知識を要する出題がされた。こうした問題に対応するためには、日頃から社会・経済の話題に関心を払っておきたい。 第2問 ・冷戦終結と新たな課題についての会話文を題材に、第二次世界大戦後の政治・経済・国際政治・国際経済の各分野から出題された。 ・問4は、信用創造の総額(預金の増加額)を計算で求める問題であった。信用創造の仕組みをある程度理解していたとしても、実際に計算式を用いて解いた経験があるかないかで差がついたであろう。 ・問5は、購買力平価説に基づき、為替レートを導く計算問題であった。為替レートを導くことができれば、円高・円安の判断は容易である。 ・問6は、表中のA・B・Cの特定が最初のポイントとなる。表の読取りは、計算は必要であるものの、知識は不要である。 ・問8は、1989年から30年間の国際政治・国際経済についての年代整序問題が出題された。比較的狭い範囲であるため、正確な時期の判断が求められた。 第3問 ・憲法の人権保障と政治をテーマとして、政治・経済の各分野から出題された。 ・問3は、日本の社会保障制度に関して、法律名や時事的知識を要する問題であった。選択肢に用語が多く含まれるが、明らかな誤りの箇所を慎重に判断したい。 ・問7は、地方議会と首長に関する空欄補充の組合せ問題であった。首長の不信任決議の成立要件の知識がやや細かく難しい。 ・問5・問6・問8は、いずれも基本的な知識を問うものだが、各事項の内容を正確に理解している必要があった。日本国憲法で定める国会・内閣や選挙制度について、丁寧な学習が望まれる。 第4問 ・地球規模の環境保全政策をテーマとして、経済・国際経済分野から出題された。概ね基本的な知識で正答を判断できる問題であったため、手堅く得点したい。 ・問2では、「資産効果」「集積の利益」といった語句に聞き覚えがなくても、文脈をよく読み取り正解を導き出したい。 ・問4は、グラフの読取り問題であった。消費税率以外は、前提となる知識がなくとも解答可能である。 ・問7は、「コンパクトシティ」「ふるさと納税」という時事的な用語が問われた。

攻略へのアドバイス

●教科書の全範囲の知識は必須。その上で、ニュース・新聞などで日頃から社会の出来事に関心を払っておこう。 公民は、ほかの教科に比べて対策が遅れがちになるが、必要とされる知識量は多く、学習を後回しにしていると直前になって大きな負担を抱えることになりかねない。高3の秋以降に個別試験で必要な教科の対策に十分な時間を確保するためにも、公民は早期から計画的に学習を進めることを意識しておきたい。 センター試験の政治・経済では、政治・経済・国際政治・国際経済のいずれの分野も、教科書・資料集などで学習できる知識は確実に身につけておく必要がある。高3の夏休みが終わるまでには、一通りの知識を学習し終えられるような計画を立ててほしい。その際には、用語の定義や法律の内容、経済の仕組みなどを1つ1つ丁寧に理解することを心掛けよう。また、時事的な知識が解答のカギとなる問題も出題されるので、日頃から興味対象を広く持って社会の出来事を把握しておこう。

●センター試験の形式に慣れるための演習を重ねよう。 そして高3の秋以降は、より今日的な課題を意識しながら実戦形式での問題演習でトレーニングを積みたい。Z会の通信教育の専科「センター攻略演習セット」の政治・経済では、夏までに全範囲を網羅し、秋以降はより実戦に近い形でセンター試験型の出題をしているので、知識の確認、応用力の養成をはかりつつ、センター試験独特の形式に慣れていくことができる。学習のペースメーカーとして、取り組んでいくとよいだろう。また、Z会の映像「センター講座:政治・経済」では、政治・経済の重要テーマについて、「センター試験でどのように出題されるか」を意識した詳しい講義と、厳選した問題演習に取り組み、効率よく実戦力を身につけることができる。

▼政治・経済担当者からのメッセージ ・政治・経済の試験では、例年、基本的な事項に関する知識が重視される出題がされており、2019年度もその傾向は変わっていません。単に知識の有無を問うだけでなく、知識をもとに具体的な事例を考察する問題も出題されます。さらに近年では、より踏み込んだ思考が必要な出題が見られるようになっています。ただ知識を覚えているだけではなく、その知識を資料の読取りに活用する、具体的な事例と結びつける力が必要とされているといえるでしょう。こうした問題に対応するためにも、様々な視点から知識を習得し、問題演習を積むことで知識を活用する力を身につけていきましょう。 ・日頃から「今、日本では、世界では何が話題となっているのか」「政治や経済上の課題は何なのか」といったことに意識を向けておくことは政治・経済の学習において非常に重要です。2019年度の出題でも、「現在の日本および世界の政治・経済状況に照らせばこの文章は成り立たないな」とか「最近こんなことが話題になっていることを踏まえたらこうかな」といった思考力を働かせることで、正誤を判断できる選択肢が見られました。そうした思考力・判断力を働かせるためにも、日頃からニュースや新聞の話題に注目し、政治・経済で学習したこととどう関連しているのかを意識するようにしましょう。また、政治・経済の学習を“受験のための勉強”で終わらせてしまうのではなく、日本・世界の現状や課題を理解し、それらを解決するために役立てる力としていってほしいと思います。

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