数学Ⅰ・A – 共通テスト(2022年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年2月8日
Z会の大学受験生向け講座の数学担当者が、2022年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。
共通テスト「数学Ⅰ・A 」の出題内容は?
まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。
試験時間と配点
時間 / 配点:70分 / 100点
全体の傾向
◆大問5題構成であり、第1問と第2問は必答問題、第3問~第5問についてはこれら3題から2題を選択する選択問題である。
◆単なる数値を求める問題だけでなく、
- 正しい(あるいは誤っている)選択肢を選ぶ問題
- 具体的な実社会での設定がなされ、それに対して数学を適用し、解釈をしていく問題
- 複数の登場人物が会話をしており、その人物の考えを踏まえて解答していく問題
など、2021年度同様に、共通テストらしい出題が目立つ。
2021年度との比較
●大問構成と、各分野の出題バランスは2021年度の共通テストや、試行調査やセンター試験とほぼ同じである。
●出題方針は試行調査を踏襲しているが、共通テスト初年度の2021年度より、本来の共通テストの主旨に近い出題を意識しているように感じられる。
●2021年度に比べて、必答問題(第1問、第2問)の難易度が高くなっており、全体的に難しくなっていると考えてよいだろう。2021年度は必ず得点しなければならない設問がある中問が多かったが、2022年度はこのような設問が減り、加えてヒントとなるような記述が少なくなったことが要因と考えられる。
●第1問について、2021年度は中問2題構成であったが、2022年度は中問3題構成となった。
数学Ⅰ・A の「カギとなる問題」は?
次に、数学Ⅰ・A で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
●各大問、および中問での最後の問題はやや難易度が高く設定されており、高得点をねらうためには、これらのうちどのくらいを処理できるかがカギとなってくる。
●共通テストの特徴が強く現れている問題は、必答問題では第1問〔2〕と第2問〔1〕であり、選択問題のすべてである。これらの問題の対策は日ごろからの数学の学習の仕方にもかかわってくるので、できるだけ早い段階で、これらの問題の経験をし、数学の問題演習に対する姿勢を見直しておきたい。
大問別ポイント/設問形式別ポイント
次に、数学Ⅰ・Aの出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。
第1問〔1〕:数と式、対称式 [標準]
・対称式に関する出題であり、(1)が3つの文字、(2)が2つの文字についての問題である。まずは序盤戦として、本中問は確実に得点し、勢いに乗りたいところである。
・(1)は基本問題であるが、(2)は設問の意味(対称式を誘導していること)に気づくことがポイント。文字が多いため、やや気づきにくいかもしれない。
第1問〔2〕:図形と計量 [標準]
・ガイドブックや地図アプリの情報と、三角比(数学)の知識を組み合わせて、実際の「見上げる角度」について考察していく問題。資料、会話文、選択肢、四捨五入して値を求めることなど、共通テストの特徴が凝縮された問題である。
・数学としては決して難しくないが、正しく設定を読み取り、他者の考えを参考にしながら、資料をフル活用して、目標を得るための方針を考えるところが難しい。
・共通テストの対策がきちんとできていたかどうかで差がついたと思われる。
第1問〔3〕:図形と計量 [標準]
・平面図形を題材にした三角比の問題であり、後半では2次関数と融合される。内容としては標準的であり、これらの内容がきちんと身についているか、適材適所で活用できるかが試される。
・(2)の冒頭、ABのとり得る長さの範囲を求めるところで、迷った受験生もいたかもしれない。
第2問〔1〕:2次方程式、2次関数 [やや難]
・2つの2次方程式のいずれかまたは両方をみたす実数の個数の考察を太郎さんと花子さんの考えにしたがって考察していく問題。共通解の処理や2次関数のグラフ、必要条件・十分条件など分野横断の色も強く、実力差が得点に現れやすい問題である。
・本問も、共通テストの特徴が色濃く現れており、パターン暗記を中心に学習を積み重ねてきた受験生には難しく感じたであろう。
第2問〔2〕:データの分析 [標準]
・「海外日本語教育機関調査」を題材としたデータ分析の問題である。
・いくつかの資料から情報を読み取り分析していくことが要求されており、実社会に数学を適用する力を試すという共通テストの特徴がストレートに現れている。
・読解量が多いが、内容は比較的取り組みやすく、本問は確実に得点しておきたい問題であろう。
第3問:場合の数と確率 [やや難]
・複数人がそれぞれプレゼントを1つずつ持ち寄って交換するとき、どの人も自分の持ってきたプレゼントにならないような交換となる事象を題材とした確率の問題である。
・(1)では丁寧な誘導がついているので、まずはしっかり得点しておこう。(2)以降では、前問の考え方を振り返ることが大切である。人数が増えた場合にどのように考えていけばよいか、試験場で臨機応変に対応する力が問われる。
第4問:整数の性質 [やや難]
・1次不定方程式を題材にした問題である。ただし、1次不定方程式を解くとき、まず具体的な1組の整数解をユークリッドの互除法などで求めることが多いが、本問は割り算による余りを利用した方法を誘導しており、経験済みの受験生は少なかったと思われる。
・本問では、(3)以降において、誘導の意味や振り返りができないと処理が難しく、出来が分かれたであろう。
第5問:図形の性質 [やや難]
・平面上の三角形を題材にした図形問題であり、メネラウスの定理が主役といえそうである。
・「△ABCの形状に関係なく」や「点Fの位置に関係なく」といった本来意識しなければならないところを丁寧に見ると難しいが、答えのみが要求されるテストであることを踏まえて、ある程度、割り切って処理できれば、だいぶ処理しやすくなる。このあたりの判断によっても差がついたかもしれない。
攻略へのアドバイス
最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。数学Ⅰ・Aで求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
教科書の知識をしっかりと身につける
知識を発展させたり、深堀させる出題、多様な知識を問う出題と様々なバリエーションがみられる。どの知識を問われるかは出題されるまでわからないので、教科書に載っている知識はすべて扱えるようにしておこう。
探求心を大切にする
2022年度の「共通テスト」でも至るところで見受けられたが、一度考えた内容を「振り返る」ことが大切である。これは普段の学習において、問題が解けることだけが大切なのではなく、たとえば、平面から空間(2次元から3次元)への拡張、発展的な知識の類推など、ある知識を得て「何かに発展できないだろうか」という探求心を日ごろからもつことを「共通テスト」が要求していることの現れである。
「自分を信じる力」を本番で維持できるかが最も大切
「自分を信じる力」を本番で維持できるか、一番大事なのはそこである。そのために、良質な演習の積み重ねが大事。早い時期から、さまざまなレベル・ジャンルの問題に触れて、万全の対策を進めておこう。
Z会では、共通テストを徹底分析し、専科「共通テスト攻略」を制作している。共通テストで求められる力をバランスよく鍛えるために、ぜひ活用しよう。そして、「何でもドンと来い!」というゆるぎない自信をもって来年の本番を迎えてほしい。
◆[専科]共通テスト攻略演習
共通テストの傾向をふまえた教材に取り組みます。毎月の演習で、基礎固めから最終仕上げまで段階的に対策を進められます。
◆[Z会の映像]共通テスト対策映像授業
「授業」を中心に学習を進めたい方におすすめ。Z会精鋭講師陣による質の高い解説講義(映像授業)で、共通テストの攻略ポイントを学びます。
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