地理B – 共通テスト(2022年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年2月8日

Z会の大学受験生向け講座の地理担当者が、2022年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。  

 

共通テスト「地理B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


おもな注目ポイント

大問数は5題で、2021年度共通テストと同様であった。解答数は31で、2021年度共通テスト第1日程・平成30年度試行調査の32から減少した(2021年度共通テスト第2日程・平成29年度試行調査は30)。

すべての問題で資料が使用され、その数は2021年度共通テストおよびセンター試験や試行調査よりも増加した。統計グラフ・表・地図・写真など様々な種類の資料が使用されたが、最新の地形図や2021年度共通テスト・試行調査で出題された模式図は出題されなかった。また、今年度は経年変化を読み取る資料が多く使用された。

●大問ごとの出題テーマは2021年度共通テストとほぼ同じであった。センター試験で見られた「比較地誌」の出題が、2021年度共通テスト第2日程と同様、中問単位で見られた(第4問のB)。

●出題形式は、全問題の半分以上の19問が組合せ形式の問題であった。試行調査では出題されたが、2021年度共通テストでは出題されなかった、三文正誤の8択問題が出題された。

●題意をつかみにくく判断がつきにくい設問・資料が減少したため、2021年度共通テスト第1日程よりも個々の資料における読み取りの難度は下がった。しかし、資料の多さや組合せ問題が多いことから、解答には時間がかかるので、全体の難易度は昨年並といえる。


地理Bの「カギとなる問題」は?

次に、地理Bで「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問問4

オーストラリアの1月と7月の気温と降水量の分布(等値線)の判定問題である。本問は、2021年度共通テストで初めて出題された、縦軸・横軸を「○○または××」の形で示し、4つの資料を並べた問題で、資料の慎重な読解が求められた(第3問問5でも同じ形式の出題が見られた)。

南半球のオーストラリアの1月は夏であること、北部に夏・雨季で冬・乾季のサバナ気候区、内陸に砂漠気候区が分布していることを理解していれば正答にたどり着ける。日頃から地図帳・資料集などで気候区の特徴や分布を確認していることが求められた


第2問問4

環境への負荷と発電量・発電構成に関する正誤問題であるが、正誤判定には中国・アメリカ合衆国など主要国の人口の知識が必要とされた。基本的な統計知識を持っていたかがカギとなった。


第3問問3

「都市の高級化・富裕化」と定義されることもある「ジェントリフィケーション」という用語の内容を正確に理解しているか、3つの図より各地区の状況、経年変化を読み取れるかが問われた。とくに「ジェントリフィケーション」により、賃料が上昇することを想起できるかがカギとなった。


第4問問3

ブラジルの農業に関する問題である。選択肢では「コーヒー豆の輸出額は減少」の正誤が問われているが、与えられた2つのグラフを吟味して「輸出額は増加している」ことを読み取れるかがカギとなる。


第5問問4

苫小牧市の製造品出荷額に関する問題は判定に迷うが、苫小牧市が従来より製紙・パルプ工業が盛んであることを知っているかがカギとなった。本問のような日本地誌に関する問題では、中学地理の知識が役に立つ


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、地理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:世界の自然環境や自然災害 [標準]

2021年度第1日程の第1問に比べて、問題の設定などはシンプルになったが、全小問で複数の資料が提示されているので、読み解くには時間を要する

・問1:中央アメリカの大陸棚の分布の判定は難しい。プレートの境界分布などの知識が必要である。
・問5:アフリカ東部はサイクロンの影響が大きいインド洋沿岸であることに気づくと、判定は容易である。
・問6:近年、風水害の発生が年間を通して増えているので、「6~8月」「9~11月」の判定に迷うかもしれないが、北海道の雪崩の分布に気づけば「9~11月」の判定ができる。


第2問:資源と産業 [やや易]

2021年度共通テスト、試行調査で出題された探究的な学習を想定した出題が見られた。テーマはSDGsを意識したものといえる。

・問5:4つの内容を盛り込み、立体的に表現した図に戸惑うかもしれないが、林業と環境問題(森林破壊)の基本的な知識を結びつければ解答できる。
・問6:ポスターによる資料で課題と取組み(解決案)を提示する、共通テストらしい問題である。内容は易しかった。


第3問:村落・都市と人口 [標準]

出題の内容は多岐にわたるものの、出題内容、形式は従来のセンター試験ともさほど変わらない。

・問1:新旧の村落の景観の変化を読み取る問題である。従来、このような比較問題は地形図で行われてきたが、今回の共通テストでは新旧の空中写真が使用された
・問5:人口ピラミッドの判定には、図の特徴を読み取り、シンガポールとドイツの人口動態など基本的な知識を組み合わせた多角的な視点が必要である。思考力を要する共通テストらしい問題であった。国全体または外国生まれの人口ピラミッドの判別は生産年齢人口と年少人口のバランス、シンガポールとドイツの判別は老年人口の割合に着目するとよい。


第4問:ラテンアメリカ地誌 [標準]

標準的な地誌の問題である。A・Bの中問が設定され、Bではチリとニュージーランドの「比較地誌」が出題された。

・問2:ブラジルの水力発電、産油国のベネズエラ=ボリバルの火力発電といった特徴的な国の発電構成を理解しておきたい。コスタリカと再生可能エネルギーの関係を知っていると解答はさらに容易であろう。
・問5:ニュージーランドとチリは自然地理の分野で取り上げられることが多い国である。それぞれの国に関する知識が乏しくても、地図が砂漠やフィヨルドなどの分布を思い出すためのヒントになる


第5問:地域調査(北海道苫小牧市とその周辺) [標準]

全体としては、標準的な地域調査の大問である。

・問1:2021年度共通テストでの出題はなかったが試行調査で出題された、地図上でルートを示し景観を読み取らせる問題である。基本的な地図の見方を知っていれば解答できる。
・問3:資料が多く、選択肢の吟味には慎重を期する。海上貨物取扱量全体における海外との輸出入の割合から、室蘭港のほうが海外との貿易の占める割合が高いことを読み取りたい。
・問5:市中心部と郊外の住宅地区の年齢別人口構成の変化を読み取る問題であるが、高齢化が進む地区eに注目すると解答しやすい。また、地区dは社員用住宅なので、一般に定年退職を迎える60歳以上の人口が少ないことに気づきたい。写真と統計グラフの組合せ問題は珍しい


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。地理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

早めの基礎知識の定着をめざす

共通テストでは、従来のセンター試験と同様、高校地理の幅広い分野からの出題が見られる。高3の夏休みの終わりまでに高校地理の学習範囲を終えたい。単純な知識問題は出題されない傾向にあるが、教科書の本文で太字となっている用語や地名は最低限押さえるようにしよう。秋以降は、共通テスト独特の出題形式に慣れるため、模試形式の演習に多く取り組み、資料読解力を鍛えるよう心掛けたい。


日頃から資料に目を通す

土台となる知識量や地図や統計図表といった資料の読み取りが中心である点は、センター試験から変化がないが、共通テストでは扱われている資料はセンター試験より多く、多様になっており、資料の読解が複雑化している

さらに、グラフの指標だけでなく凡例についても答える問題や、地図で具体的な場所が示されない問題、複数の資料から経年変化を読み取らせる問題など、事前の資料学習の成果が発揮される出題が見られる。授業や演習で登場した地名・地域や内容について、日頃から地図帳や資料集で位置や範囲を確認し、分布や数値の特徴をつかむ習慣をつけるとよいだろう。


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