地理B – 共通テストの分析&対策の指針

投稿日時:2024年1月14日

Z会の大学受験生向け講座の地理担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容やカギとなる問題の攻略ポイントなどを「速報」として解説します。 

 

共通テスト「地理B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


おもな注目ポイント

●大問数は5題、小問数は30で2023年度共通テストと同数であった。解答数も30であったが、2023年度共通テストから1減少した。

●2023年度共通テスト同様、すべての問題で資料が使用されている。資料の種類は、統計グラフ・統計表・地図・地形図・写真など多岐にわたり、複数の資料が提示された問題も多く見られた。

●2023年度共通テスト同様、グラフや地図の経年変化を読み取る問題が多く出題された

●大問ごとの出題テーマは、自然環境と自然災害、資源と産業、都市と生活文化、地誌、地域調査と、2023年度共通テストとほぼ同じであった。地誌は環太平洋地域が取り上げられ、比較地誌の出題は見られなかった。

●出題形式は、全問題の約半分に当たる16問が組合せ形式の問題であった。また、単答問題、正誤問題はすべて4択問題であった。2022年度共通テストで出題された三文正誤の8択問題は2023年度同様、出題されなかった。また、2023年度第2問問5で見られていたような、縦軸・横軸に「○○または××」のかけ合わせで合計4つの資料を示す形式の問題は、2021年度共通テスト以降連続して出題されていたが、2024年度では出題されなかった。

●資料や組合せ形式の問題の多さから、解答には時間がかかるが、題意をつかみにくい問題や判定がつきにくい設問・資料は少なかったため、全体の難易度はやや易化したといえる。


地理Bの「カギとなる問題」は?

次に、地理Bで「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問問2

緯度ごとの陸地に占める永久凍土と氷河・氷床の割合に関する正誤問題である。緯度からおおよその位置を考え、その地域の自然環境と結びつけて正誤を判定する必要があった。


第1問問4

1月と7月の1日当たりの日照時間に関する問題である。南半球の都市も含まれており判定がしづらいが、日照時間の大小は緯度による影響だけでなく、雨季、乾季などの影響があることも想起したい。


第2問問2

日本の製鉄所の立地の変化に関する正誤問題である。日本の石炭の産出が1940年代以降も行われていることに気づけたかどうかが正誤判定のカギとなった。


第3問問4

3カ国の都市圏の人口規模を示した図を判定する問題である。各都市の詳細な人口数を知らなくても、各国の大都市の分布の傾向を想起して判定したい


第4問問5

環太平洋4カ国の輸出額の変化に関する問題である。1999年と2019年の輸出額の変化を、各国の経済状況の変化と照らし合わせて判定するが、丁寧な図の理解が必要である。


第5問問3

3つの小学校区における最寄りの施設への距離別人口割合に関する問題である。図が複数あり、読み取りのポイントを見抜くのが難しい。まちづくりセンターは小学校区b、cともに分散して設置されているため、施設までの距離の偏りが少ない傾向があることに気づくと判定しやすい。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、地理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:世界の自然環境と自然災害 [標準]

・問1:イギリスとニュージーランドの標高別面積割合と土地利用割合の組合せ問題である。標高別面積割合は、イギリスは古期造山帯、ニュージーランドは新期造山帯に位置することから判定できる。また、イギリスの牧草地の割合が国土の約半分を占めることは、押さえておきたい知識である。

・問2:緯度ごとの陸地に占める永久凍土と氷河・氷床の割合に関する正誤問題である。永久凍土の分布の範囲、高原・山脈の位置や緯度ごとの気温・降雪の特徴など、様々な自然環境の分布を思い浮かべて正誤を判定する必要があった。日頃の学習で基本的な図表の特徴を押さえられているかどうかがカギとなった

・問4:1月と7月の1日当たりの日照時間に関する問題である。日照時間の大小は、都市の緯度の影響が大きいが、ムンバイは高日季に雨季となるサバナ気候区に属するため、7月の日照時間が少なくなることが解答のポイントであった。

・問5:南北アメリカ大陸の国における洪水被害の時期別発生割合に関する問題である。この地域における洪水被害の原因となる自然現象として、カリブ海やメキシコ湾で発生するハリケーンが思い浮かべられるが、高緯度地域や高山地域では氷雪が気温の上昇により融解することで起こる洪水も考えられる。南半球では季節が逆転するため、北半球と発生時期が異なることにも注意したい。


第2問:世界と日本の資源と産業の変化 [やや易]

・問2:日本の製鉄所の立地の変化に関する正誤問題である。鉄鋼業の企業再編など、近年の日本の鉄鋼業の状況についても問われている

・問4:1990年と2018年の人口1人当たりの製造業付加価値額と、GDPに占める製造業の割合に関する問題である。国ごとの工業の変化とグラフが示す意味を素早く読み取ることができたかどうかがポイントであった。

・問5:日本各地で見られる製造業の変化と土地利用の変化に関する問題である。正誤の判定はしやすいが、製造業の変化が地域へ与える影響という、幅広い視点から正誤を判定する問題であった。

・問6:製造業が地域社会に与える影響に関連して、資源や産業をめぐる新しい取組みの例を考える問題である。共通テストになって見られるようになった探究的な問題であった。


第3問:都市と生活文化 [標準]

・問3:先進国、BRICS、発展途上国の人口の変化を読み取る問題である。カは図中の点線に沿った国が多い→1990年と2015年の人口の変化が少ない先進国、キは発展途上国と同じく近年の人口増加が目立つ→近年の経済発展が著しいBRICS、などと考えるとわかりやすい。

・問4:3カ国の都市圏の人口規模を示した図を判定する問題である。スは首都ダッカに人口が集中するバングラデシュであることは判定しやすいが、サとシについては、人口数ではなく「人口規模」で示されているため区別が難しい。オーストラリアは内陸部の大部分が乾燥気候に属するため、都市は沿岸部に集中し、都市人口率が高い、という特徴も押さえておきたい。


第4問:環太平洋地域地誌 [標準]

・問1:太平洋4地域における海底の地形断面を判定する問題である。プレート境界の有無やサンゴ礁など、特徴的な地形の位置と重ね合わせながら判定したい。Bのハワイ諸島の北西部はホットスポットによる火山の跡が断続的に見られるため、西側に浅い部分が連続して見られる図を選びたい。

・問4:環太平洋の島嶼国・地域への観光客の出発地域別割合に関する問題である。出発地域からの距離が近い所への観光が多い傾向にあるが、タヒチはフランス領であることから、ヨーロッパからの観光客が多くなる点がポイントとなる。

・問5:環太平洋4カ国の輸出額の変化に関する問題である。見慣れない図であるため、図が意味することを読み取りにくいが、「輸出先」への金額を表していることに着目し、それぞれの国の経済や輸出の変化を読み取りたい。


第5問:地域調査(島根県石見地方) [やや易]

・問1:中国地方3都市の気候に関する問題である。3都市を日本海側、内陸部、瀬戸内海側に分け、それぞれの地域の気候の特徴と照らし合わせて考えたい。日照時間は1月の数値であることもポイントである

・問2:生活用品やサービスの購買・利用先を判定する問題である。この地域に限らず、通常、それぞれの品目、サービスを購入・利用する際の頻度や購入先を考えるとわかりやすい

・問5:浜田における商品流通の歴史に関する問題である。資料の地図や選択肢から多角的に考える必要があった。瀬戸内海は塩田が多かったことから、塩の流通があったと考えられる。また、石見焼の水甕は沿岸部で多く確認されていることから、海路での輸送が考えられる。

・問6:共通テストで頻出の、地域の課題に対する具体的な取組みを考える問題である。資料の内容を理解し、確実に解答したい。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。地理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
2025年度共通テストで「地理総合、地理探究」を選択する場合も、以下の点を意識して学習に励みましょう。

早めの基礎知識の定着をめざす

共通テストでは、高校地理の幅広い分野からの出題が見られる。高3の夏休みの終わりまでに高校地理の学習範囲を終えたい。単純な知識問題は出題されない傾向にあるが、教科書の本文で太字となっている用語や地名は最低限押さえるようにしよう。秋以降は、共通テスト独特の出題形式に慣れるため、模試形式の演習に多く取り組み、資料読解力を鍛えるよう心掛けたい


日頃から資料に目を通す

土台となる知識量や地図・統計図表といった資料の読み取りが中心である点は、センター試験から変化がないが、共通テストでは扱われている資料はセンター試験より多く、多様になっており、資料の読解が複雑化している。さらに、グラフの指標だけでなく凡例についても答える問題や、地図で具体的な場所が示されない問題、複数の資料から経年変化を読み取らせる問題など、事前の資料学習の成果が発揮される出題が見られる。授業や演習で登場した地名・地域や内容について、日頃から地図帳や資料集で位置や範囲を確認し、分布や数値の特徴をつかむ習慣をつけるとよいだろう。


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