国語 – 共通テストの分析&対策の指針

投稿日時:2024年1月13日

Z会の大学受験生向け講座の国語担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「国語」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:80分 / 200点


全体の傾向

評論・小説・古文・漢文の全4題の出題という形式は例年と同様。

実用文の読解やグラフを用いた出題などは見られず、複数文章や授業の会話場面・生徒の学習活動を想定した出題が見られたのは、例年どおり。ただし、例年と比べると、漢文以外は〈複数文章の関連づけ〉がそれほど多くは求められず、落ち着いて情報を整理しながら読めばよい。昨年までは文章の比較に手間取ったのに対し、今年は読解自体にしっかり時間をとられる出題であった。

古文は、設問自体はそこまで難しくはないものの、問題文の読解に時間をかけすぎるとつまずいただろう。漢文も解きごたえのある問題だったため、〈古文漢文の時間配分〉がカギとなった。

全体の難易度としては標準的な範囲の出題であり、国語の読解演習にきちんと取り組んでいた受験生であれば、対応できただろう。


国語の「カギとなる問題」は?

次に、国語で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問(評論):問6

第1問(評論)の問6は、問題文を踏まえて生徒が書いた【文章】が提示され、それを推敲する、という場面設定の出題。例年の本試験に比べて「書く」活動に重点が置かれており、(ⅱ)の脱文補充も含め目新しい出題だった。一方で、問題文を組み合わせた複合的な読解は例年ほどには求められておらず、いずれの枝問も正解を選ぶこと自体は比較的難しくない。【文章】全体の趣旨をつかんで落ち着いて取り組むことがカギとなった。


第2問(小説):問3~問5

第2問(小説)は、問題文・設問ともに小説の出題として比較的オーソドックスなものだった。問題文が標準的で読みやすいので、問3~問5の登場人物の心情に関する読解問題で確実に正解することがカギとなる。問題文から正解の根拠となる箇所が見つけづらい設問もあったかもしれないが、いずれも難易度が高すぎるということはないので、消去法で選択肢を選んでいけば正解にたどり着けるだろう。


第3問(古文):全体

第3問(古文)は、受験生にとって馴染みのない出典からの出題であった。リード文の情報も少なく、問題文全体の読解にはやや苦労しただろう。しかし、問1・問2は基本的な古文知識で解答ができる。問4は示された文章を踏まえ、該当箇所を正しく読解できれば正答を選ぶことができる。大問全体を通じて、設問文や解説の文章から本文を読み解いていく、という問題を意識した演習を積んでいたかどうかで差がついただろう。


第4問(漢文):問5・問6

第4問(漢文)は、楊貴妃のために玄宗が茘枝を献上させたことに関する詩と、関連する資料4つが示された。漢詩は2022年度以来の出題。漢文全体としての読解量は例年と同等だが、各資料が短文であることもあり内容はとらえやすく、例年より読解自体の負担感は少ないだろう。カギとなる設問は問5・問6。詩・資料に書かれている内容を読み取るだけでなく、それぞれを照らし合わせてその関係性を自分で整理・理解する必要があるため、難度が高い。とはいえ、順を追ってきちんと考えれば正解は選べるので、焦らず一つひとつ丁寧に確認していきたい。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、国語の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:現代文(評論) 渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学―境界線上の音楽』 [標準]

・モーツァルト没後200年の節目に行われた追悼ミサの事例を切り口に、「音楽」や「芸術」という概念のとらえ方について、現代に起きている状況を踏まえて論じた文章からの出題。2022・2023年度には2つの問題文を提示した出題が続いていたが、2024年度は問題文の他に問6で生徒が書いた【文章】が提示され、その推敲の仕方を問う枝問が3問出題された

・問1の漢字問題は、2021年度から3年ぶりに傍線部に相当する漢字を含む選択肢を選ぶ問題5問の形式に戻った。なお、漢字問題はセンター試験では5択が定番だったが、共通テストに変わってからは4択に変化・定着してきている。

・問2~4は問題文の部分読解に関する設問、問5は問題文の各段落の役割に着目した、文章全体の構成・展開に関する設問が出題された。各設問で問われている文章範囲は明確であり、一部の選択肢でやや紛らわしい表現を含むものの、読解や選択肢吟味の難度は標準的なものであった。

・問6は、【文章】自体の趣旨をとらえ、〈小説を読むことで現実世界の見方が変わる〉〈現実世界を巡り歩くことで小説のイメージが変わる〉という相互の関係性に留意して選択肢を吟味できれば、いずれの枝問も正解するのは難しくない


第2問:現代文(小説) 牧田真有子「桟橋」 [やや易]

・高校生の「イチナ」と8歳年上の「おば」が登場する現代小説からの出題。2017年に発表された比較的新しい小説で、2023年度の小説よりも読みやすく、取り組みやすいと感じた受験生も多かったと思われる。

・問1では、2021年度以来出題されていなかった語句の意味を問う問題が出題されたが、問われている語句自体は比較的簡単なものだった。

・問2~5は、例年どおり心情や状況にかかわる問題が中心で、オーソドックスな出題であった。ここでは時間を取られすぎず、確実に正解しておきたい。

・問6は、本文の表現についての問題。「適当でないもの」を選ぶ問題だったため、「適当なもの」を選ぶよりも正解を見つけやすかっただろう。

・問7は、【資料】(太田省吾「自然と工作―現在的断章」)に基づいた教師と生徒の対話の空欄補充問題。複数テキストの問題ではあるが、本文の読解問題と言える範囲にとどまっており、また選択肢の数も少ないため、さほど難しくはないだろう。


第3問:古文 天野政徳『草縁集』「車中雪」 [標準]

・2018年度の本居宣長『石上私淑言』以来となる、近世に書かれた文章からの出題。主人公が従者を連れて桂の別邸に向かう道中の雪の風景とその美しさが中心に描かれる。大きな話の展開が含まれる内容ではないため、文章全体の内容把握よりも、要所要所を正しく読解できたかどうかが問われている。

・問1の語句解釈問題はいずれも頻出の重要語句を問うもので、確実に得点したい問である。

・問2の語句と表現に関する問題は、助動詞と敬語が中心に問われており、基本的な文法知識で選択肢を絞り込むことができる。

・問3は和歌に関する設問。前後の文脈を踏まえて和歌の主題を押さえる必要がある。

・問4では、例年見られた本文に関連する古文ではなく、本文を解説した現代文が示された。資料から空欄と対応する本文の箇所を見つけ、それらを丁寧に読解することが重要。(ⅲ)は該当箇所の文脈が追いにくいため、やや解きづらい。


第4問:漢文 杜牧「華清宮」/蔡正孫『詩林広記』/程大昌『考古編』[標準]

・楊貴妃のために玄宗が茘枝を献上させたことに関する【詩】と、関連する【資料】4つが示された。2021・2022年度と同様、漢詩の出題であった。

・全体としての読解量は例年と同等だが、各資料が短文であることもあり内容はとらえやすく、例年より読解自体の負担感は少ないだろう。

・問1は、詩の「形式」と「押韻」の理解を問うもの。基本中の基本といえる知識問題なので、確実に正解したい。

・問2は語句の意味。(ア)「百姓」・(ウ)「因」は漢文における基本語。(イ)「膾炙」は「人口に膾炙する」という表現が思い浮かべられれば容易に選べただろう。

・問3は返り点・書き下し文の問題。文意が通るものを選択すればよいので、難しくはない。

・問4は、資料I・IIをふまえた詩の解釈を問う問題。注を参照し、人物関係・描かれている内容を押さえる。

・問5は資料III・IVと詩との関係性を、問6は全資料から導くことができる詩の解釈を問う問題。各資料の内容を把握する「本文読解」は大前提としたうえで、さらに読み取った内容を整理し、論理的に捉える力が求められる


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。国語で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

早い時期から本番を意識した問題演習を重ね、多様な出題形式に対応できる力を身につける

共通テストで高得点をおさめるためには、〈複数の文章・資料を組み合わせた問題〉を〈限られた時間の中で解き切る〉必要がある。「提示された問題文・資料を正確に読み取る読解力」が求められるのはもちろんだが、解くスピードをあげるために、設問で問われている内容が文章・資料のどこで示されているのかを探す「情報把握力」も大切だ。

また、2025年度から新課程入試が始まり、国語の共通テストは試験時間が10分増えて「90分」になるとともに、「言語活動」を重視した新たな大問(新第3問)が追加される。国語は他教科に比べ共通テスト対策がおろそかになりがちだが、早い時期から共通テストならではの出題形式に触れ、問題演習を重ねることが重要である。

Z会の専科「共通テスト攻略演習」では、さまざまな文章ジャンル・出題パターンを網羅しているので、共通テストで求められる力をバランスよく鍛えることができる。また、自分での対策が難しい新第3問についても一部の月(教材お届け月)で情報の提供・演習問題の出題を行うため、ぜひ活用してほしい。


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