「東大物理」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 全体として、分量、難易度とも昨年並みで、東大物理として標準的な問題であった。
  • 一部で穴埋め形式の設問があるが、基本は記述形式である。
  • 例年、力学、電磁気分野から各1題、その他の分野から1題の計3題の出題。
  • グラフを選択させる問題が毎年のように出題されている。
  • 解答用紙は、1題当たり横35文字、縦25行程度の文字が書けるように罫線が入っている。

2022年度入試の特記事項

  • 2022年度も、近年の傾向に沿って、一部の設問で穴埋め形式の出題があった。
  • 2022年度も、例年同様に、グラフの選択問題が出題された。
  • 力学、電磁気以外の分野からは熱力学が出題された(2021年度は波動・原子、2020年度は熱力学、2019年度は波動)。なお、2020〜21年度と他分野との融合の形で原子分野からの出題があったが、2022年度はなかった

合否の分かれ目はここだ!

東大入試の対策をきちんと立ててきた人にとっては、手がつけられないような問題はないが、時間内にすべてを解き切ることは難しい。自分にとって得意な分野、容易に解答できそうな設問を選んで手をつけていくのが得策である。各大問とも初めの設問は基本〜標準的であるので、時間配分に気をつけて取りこぼさないようにすることが合格の条件となろう。

  • 比較的解きやすかったと思われるのは、第1問Ⅰ、Ⅱ(1)、第2問Ⅰ、Ⅱ、第3問Ⅰあたりで、これらは正確に得点しておくことが鍵であった。
  • 時間的に完答するのは難しく、全体では6割程度の得点を目指したい試験であった。
東大物理の突破に直結する
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  力学 [やや難]
潮汐力

潮汐力について定量的に扱った問題はあまり見ないので、戸惑った人も多かっただろう。

  • Ⅰは教科書レベルの基本問題でミスできない。
  • Ⅱ(1)も基本的な問題である。(2)、(3)が本問のヤマで、ここで躓くと後の問を正解できない。(2)、(3)は、素直に与えられた図から座標を求めて、点Xの運動を解釈すればよいが、重心点Oを中心に回転するはずなどと考えると混乱する。(3)までできれば(4)は容易。
  • Ⅲは、Ⅱまでの結果を用いた数値計算だが、微小量の近似に慣れていないと厳しかっただろう。

 第2問  電磁気 [標準]
電磁誘導、ダイオードを含む回路

  • Ⅰは、一巻コイルの電磁誘導についての基本問題であるが、解答に用いるべき文字に注意したい。
  • Ⅱは、コイルに電池とダイオードが含まれる場合を考察する。ダイオードと電池の起電力の向きが逆になっているが、「磁場を通過することによって減速した」ことから、電磁誘導による起電力が電池の起電力より大きいことを見抜くのが第一のポイント。さらに、コイルが磁場から出ていく際には電流が流れないことを見抜くのが第二のポイントである。(4)、(5)は磁場中の導線レール上を運動する導体棒が一定速度に達する場合と同様である。
  • Ⅲは、コイルが二巻でダイオードがつながれた回路を考える。電磁誘導の起電力を電池と見立てて、回路の各点の電位変化の様子を慎重に考えればよい。

 第3問  熱力学 [やや易]
半透膜で分けられた混合気体

半透膜で仕切られたシリンダーに二種の気体が封じられ、一方のみが膜を通過できる場合を考察する。Ⅰで分子運動論から各室の圧力を求めるが、化学で扱うドルトンの分圧の法則が成り立っていることに気づけば理解しやすい

  • Ⅰは、気体分子運動論の基本で、題意を素直に解釈して解答したい。(4)は単純に合計2モルの気体の温度がTであるとすればよい。
  • Ⅱは、断熱変化における気体の微小変化を考察する。気体Xが全体に圧力p1で分布していると解釈できれば、問題なかっただろう。
  • Ⅲ(1)も気体Xについてのみ考察すればよい。(2)は、素直に熱力学第1法則を立式すればよい。

     攻略のためのアドバイス

    東大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

    ●要求1● 読解力

    丁寧な説明や誘導が東大物理の特徴の一つ。現象や原理の説明が長い文章で示されることがある。長い文章の中には、解答のヒントが含まれているものである。したがって、東大物理の攻略には、限られた時間で文章から現象を正確に読み取る力が不可欠である。

    ●要求2● 現象を解釈する力

    正解を得るためには、問題文から読み取った現象を、教科書レベルの原理、法則を用いて解釈する力が必要である。まずは、基本事項の理解を深めることを目指そう。

    ●要求3●適切に記述する力

    東大物理では解答の自由度が高い解答用紙に、設問ごとに適切な解答を記述する必要がある。適切に解答する力は、答案を書く訓練を繰り返しながら身につけるしかない。

    対策の進め方

    まずは、●要求2●を満たすことを目指そう。独学が困難な物理は、授業を大事にしたい。高校3年の夏までには、基礎事項を完成させたい。Z会の本『物理 解法の焦点』は、高校物理の全範囲について、教科書だけでは学べない実戦的な解法を身につけることができるので、早い時期から取り組むことをおすすめする。

    次の段階として、基本事項を東大レベルの問題に応用できる力を高めよう。そのためには、問題の意図を的確につかむこと、つまり、●要求1●を満たす必要がある。このためには、良質な問題を数多く解いておきたいZ会の通信教育[本科]「東大コース」では、読解力を養うのに最適な良問を提供している。

    ここまでの学習が順調であれば、●要求3●もある程度は満たされているはずである。最後は、東大型の問題演習に取り組もう。即応した問題を解くことで、さらに数点の上乗せを期待できる

    Z会で東大対策をしよう

    Z会東大物理担当者からのメッセージ

    2022年度の東大物理は難問といえるような出題はなく、全体として標準的な問題でした。とはいえ、教科書や参考書に掲載されている典型的な問題は最初の設問だけで、題意を素直に解釈して、基本事項を応用する力が問われました。時間の割に分量が多いのは例年同様で、時間内にすべてを解き切ることは困難です。あたりまえのことですが、できる設問を見極めて確実に得点できた人が合格できたと考えられます。各大問とも、最初の基本的な設問をミスせずに解答することが重要でした。

    東大物理の問題は、基礎的な理解を土台として考察できるように工夫された問題ですので、まずは基本事項に対する理解を深め、その上で理解した基本事項をどうつなげて問題を解くのかを、良質な問題を解くことで養成していきましょう。良質な問題は、基本の理解が不十分であったことを気づかせてくれるはずで、その気づきによってさらに対応力も身についていきます。

    そのための演習問題として、東大の過去の出題傾向を十分に研究したZ会の通信教育[本科]「東大コース」が非常に有効です。本科「東大コース」では、無理なくステップを踏みつつ、添削指導による記述力の養成を含めて合格のための力を身につけることができるように構成されています。

    また、Z会の通信教育[特講]「過去問添削」では、本番のシミュレーションとして実際の東大物理の問題を演習できます。演習を繰り返すことで、本番であわてることなく取り組んで、合格を勝ち取りましょう。

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