Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)
- 指定字数2行(60字)・3行(90字)の論述問題が中心だが、問題数が多く、単答問題も出題される。
- 統計表・グラフ、地図など、資料を利用した問題が多く見られる。
- 論述の問題数、総字数は2022年度に比べて減少したものの、単答の問題数が増え、判断に迷う問題も見られたため、全体としての難度は例年並(標準)である。
2023年度入試の特記事項
- 論述の問題数は2022年度の19問(39行;1,170字)から17問(33行;990字)に減少した。また、60字の論述問題数が12と、全体の7割を占めた。
- 単答の問題数が10から19に増加した。
- 第3問で、地形図の読図を扱った問題が見られた。地形図の読図は2022年度から連続して出題されている。
- 時代・年代で起きた出来事に関連した出題が多く見られた。
- 新しい地質区分やPM2.5、防災など、時事的な内容を扱った問題が見られた。
合否の分かれ目はここだ!
- 問題ごとの論述字数は少ないが、問題数が多いため、時間を意識し最後まで解答しきれたか。
- 日本の社会状況について、基本的な知識を土台にしてまとめ上げることができたか。
- 時事的なテーマや地形図の読図も含め、地理の学習内容を偏りなく対策できたか。
- 自然環境・産業の分布など、普段から地図を用いた学習を行うことができたか。
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さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
第1問
「人間活動と地球環境の関わり」をテーマとする大問。
設問A:新しい地質時代の案とされる「人新世」について、始まりとされる時期の人間活動や地球環境への影響に関する問題。
- 提示された時代で起きた出来事を踏まえて解答する必要があった。
- (3)は問題文に「放射性物質」という記述があるものの、「核実験の増加」を想起するのは難しい。
- (4)は図におけるA〜Cのスケールが異なることもヒントにして考えたい。
設問B:南アジアにおける人間活動と地球環境への影響に関する問題。
- (1)の農作物名はAの地域における農業分布も想起しながら解答したい。
- (2)の「野焼き」による環境への影響は取り上げられている教材が少ないため難しい。
第2問
「第一次産業の国際比較」をテーマとする大問。
設問A:水産物の養殖業に関する問題。
- 全体的に時事的なテーマが多く、日頃から時事情報を意識して取り込んでいるかどうかが点差が開くポイントとなった。
- (3)はAの水産物の名称、生態環境ともに想起するのが難しい。3カ国で食される料理など、幅広い視点から考えたい。
- (4)は指定語句「稚魚」から課題の解決策の1つとして「栽培漁業」が想起できるかがポイントであった。
設問B:4カ国の小麦の単位収量の推移に関する問題。
- 第1問の設問Aと同様、各時代で起きた出来事を踏まえて解答する問題が多く見られた。
- (2)は「1990年代」の記述から、この時期の社会の変革による影響を説明したい。
- (3)は指定語句「食料安全保障」の使い方が難しい。
第3問
「日本の居住と自然環境」をテーマとする大問。
設問A:広島県広島市の地形図の読図をもとにした、自然災害に関する問題。2022年度から連続して地形図の読図に関する出題が見られた。
- (1)は等高線を丁寧に読み取って解答したい。
- (3)は人工構造物が谷を塞ぐように建設されていることを確認したい。また、前問(2)の土地被覆と地形も踏まえて考えるとわかりやすい。
- (4)は2018年度の第3問でも同様の出題が見られる。地形図から地域の状況を幅広く読み取り、説明できるかどうかがポイントであった。
設問B:日本の住宅と居住に関する問題。
- (4)は地方の過疎化や「高齢化」だけでなく、「世帯規模」の変化が住宅総数の増加につながることについても触れる必要があった。
攻略のためのアドバイス
東大地理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 使いこなせる知識力
東大地理では、全分野・地域の基本事項を覚え、使いこなす“知識力”が求められる。とくに自然地理や日本地誌は毎年出題されるため、知識を確実なものにしておく必要がある。また、学習が手薄な分野・地域をつくらないように努めよう。
●要求2● 多くの情報を読み取る資料読解力
東大地理では、“資料読解力”を必要とする問題が多い。数値の大小を見るだけでなく、統計の持つ意味も理解するようにしよう。また、地形図の読図問題が出題されることもあるので、地形図の基本的な読み取りもマスターしたい。
●要求3● 簡潔・確実に解答できる表現力
東大地理の論述は問題ごとの字数が少ないが、問題で要求された条件を、過不足なく解答すると字数が不足する可能性がある。そのため、少ない字数で必要十分な解答を作成する“表現力”が求められる。解答の作成には、題意を正確に把握し、資料の意味を読み取り、それらへの配慮がわかるような表現を織り込むことが重要である。
また、地理は問題数が多いため、過去問なども使い、時間配分を意識した演習も重要である。
Z会で東大対策をしよう
2023年の東大地理は、基本的な内容が多いものの、複数の学習範囲を組み合わせた問題や、歴史的な出来事に関連した問題が多く見られました。基礎知識は早いうちに完璧にしておきましょう。
東大地理は単答問題も多いのが特徴的です。難度はそれほど高くないですが、第2問設問Aのように、後の問題に関連することもあるため、確実に解答し、得点につなげましょう。
東大地理では、現代社会の諸課題をもとにした問題が多く出題されます。ニュースなどから地理に関連しそうなテーマをピックアップし、地図帳なども用いて概要をまとめておくこともお勧めします。
本科「東大講座 地理」では、東大地理の出題内容を分析し、基礎知識の確認や図表の読み取りをもとにした論述問題を、幅広い範囲から多数出題しています。東大をめざすみなさん、Z会と一緒に頑張っていきましょう!