東大英語

2023年度「東大英語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 分量:減少
  • 難易度:標準

2023年度入試の特記事項

  • 【1(B) 長文読解】4年連続で語句整序問題が出題された。
  • 【3 リスニング】3つのパートがすべて独立した内容であり、(C)では対話形式が復活した
  • 【4(A) 文法】5年連続で正誤問題が出題された。本文語数は大幅に減少した
  • 【4(B) 英文和訳】内容を明示して和訳する問題は出題されなかった。
  • 【5 長文読解】刑務所廃止論に関するエッセイ風の文章であった。本文語数は大幅に減少した

合否の分かれ目はここだ!

  • 例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。
  • 120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、確実に得点した上で、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 1(A)要約  

  • 約420語の「現代人の時間不足の要因とその影響」についての英文を読んで、70〜80字の日本語で要約する問題。
  • 英文では、社会の変化とともに時間不足に陥っている現代人について述べられている。
  • 例年通り、英文の内容は理解しやすいが、制限字数内に収めるためにポイントを絞って取捨選択する作業は困難だったと思われる。

 1(B)長文読解(文補充、語句整序)  

  • 「人間が笑う理由と様々な種類の笑いの意味」について論じた英文。語数は選択肢を含めて約1040語で、2022年度よりやや増加した。
  • 英文テーマ、パラグラフ展開共にわかりやすかったため、内容把握はそれほど難しくはなかっただろう。
  • (ア)は例年出題されている文補充。空所は例年同様5箇所であったが、ダミー選択肢は2022年度から1つ増え、2つになった。ダミー選択肢の数は、2020年度以降、2→3→1→2と増減を繰り返している。キーワードを手がかりに、選択肢がどのあたりのパラグラフに入るのかを推測することができ、また、空所前後の流れを捉えられていれば、ダミー選択肢を見分けて、正解に辿り着くことはそれほど難しくなかっただろう。
  • (イ)は2020年度から4年連続で1(B)での出題となる語句整序。該当箇所の語数は12語であったが、並べ換える要素の数は10個であった。2つの as と fellow の使い方がポイントとなった。

 2(A)自由英作文  

  • 「30年後の移動手段はどうなっているか」について、理由を添えて考えを述べる自由英作文。解答の語数は2022年度から変わらず60〜80語。
  • 抽象度の高かった2022年度の出題と比べて、「30年後の移動手段」という具体的な内容であり取り組みやすかったと思われる。環境問題やAI(人工知能)、労働力不足に絡めると無理なく書け、かつ説得力のある答案になるだろう。
  • なお、2008年度には「今から50年の間に起こる交通手段の変化とその影響」を論じる自由英作文が出題されている。

 2(B)和文英訳   

  • 下線部の日本語を英訳する問題。2022年度と同様に和書からの引用文で、出典は草光俊雄『歴史の工房 英国で学んだこと』。
  • 2022年度に続き、比較的英訳しやすい日本文であった。「さらにもう少し掘り下げてみると」の部分は戸惑ったかもしれないが、下線部前後の文脈もふまえ、具体的に読み換えて訳出することができれば、大きな困難はなかっただろう。
  • 1文が長いので、文構造が複雑になりすぎないよう、文を構成しやすい日本語に読み換えた上で訳したり、挿入句を用いたりする等、工夫が必要であった。

 3 リスニング   

2022年度同様、出題形式はすべて英問英答の選択式。問題数は各5問あり、選択肢はそれぞれ5つあった。

中問(A)〜(C)は2022年度と同様にすべて独立した内容の問題であった。また、2022年度はモノローグと講義だったが、(C)でダイアローグ(インタビュー形式)が復活した

設問の該当箇所を特定しやすく、全体に比較的取り組みやすい出題であった。


(A):「伝書鳩の帰巣の特性」に関する研究

  • 正解の根拠となる箇所を特定しやすく、選択肢でも放送される表現をわかりやすく言い換えているので取り組みやすかったと思われる。

(B):「大気中の二酸化炭素削減の取り組み」に関する説明

  • 放送される英文について、やや難度の高い語注が付いているが、わかりやすい言い回しで説明されているので理解しやすかったと思われる。
  • 選択肢の平均的な語数は6語程度であり、(長くても11語と)全体的に短いため、余裕をもって取り組めたであろう。
  • (14)では放送される英文とまったく同じ表現が正解の選択肢に用いられていた。
  • 5問中2問が内容不一致選択であった。一致しないものを選ぶということは、5つのうち4つの選択肢について該当箇所を特定しなければならず、手間がかかる。

(C):「脱成長」に関するインタビュー

  • (A)と(B)に比べて、内容の抽象度が高く、取り組みにくかったかもしれない
  • 「degrowth」や「the steady-state」など聞き慣れない表現が出てくるが、該当表現が放送されるタイミングを逃さずしっかり聞き取ることが肝要である。
  • このインタビューは「degrowth」がテーマであったが、(17)ではその対義語である「growth」の意味が問われた。一般的な概念とは違うこと、またゲストの発言から要素を抽出して、整理し直す必要があったことから、正解を絞り込むのが難しかったと思われる。

 4(A)文法  

  • 5年連続で、英文中の下線部から誤りを含むものを選ぶという正誤問題が出題されている。英文は5つの段落に分かれており、各段落にそれぞれ5つの下線が引かれているという点も例年通り。
  • 「共通言語としての英語」について述べた英文。語数は約480語で、2022年度より100語程度減少している。
  • 英文レベルは高いが、問われている文法・語法のレベルは基本的なものであるという点は例年通り。文法・語法面からだけでなく文脈の面からも誤りの有無を判断する必要があるというのが近年の傾向であるが、2023年度は文法・語法面から判断しやすい設問が多く、2022年度よりは比較的取り組みやすかったと言える。しかし、英文内容を把握しにくく、誤りを含まない箇所についても「正しい」と確信を持ちにくいことから、正解を絞り込む際に迷った人もいただろう。確かな文法・語法知識と高い読解力の両方が求められる設問である。

 4(B)英文和訳  

  • 「コンフォート・フード」に関する約340語の英文。
  • 和訳する下線部は3箇所で、例年と変化なし。内容を明示して和訳する問題は出題されなかった。
  • やや込み入った並列構造や省略などもあったが、全体的に文構造は把握しやすかっただろう。
  • (イ)は as young as one day old の訳出に苦戦した人もいたと思われる。下線部内にある soothe については、その意味を知らなくとも、文脈から推測して訳出するのはそれほど困難ではなかっただろう。

 5 長文読解  

  • 刑務所廃止論者の話とそれに対する子供たちの反応について書かれた、エッセイ風の英文からの出題。英文語数は約810語で、2022年度より150語以上減少している。
  • あまり馴染みのないテーマで戸惑った人もいるかもしれないが、時系列に沿って話が展開されており、エッセイや小説特有の省略や口語表現等も多く見られなかったため、正しく内容を把握するのはそこまで難しくなかっただろう。
  • 客観式問題+記述式問題混合。問題の形式・分量ともに、2022年度から大きな変化はないが、例年本文の内容と一致するものを選ぶ問題が出題される(D)(ウ)が、下線部の説明として適切なものを選ぶ問題に変わった。
  • 客観式問題の(D)は比較的取り組みやすかったと思われる。(B)は、下線部直後の文を解答のベースとしながら、下線部より前の部分で述べられた具体的な内容もふまえて正確にまとめる必要があった。(A)の語句整序問題は、どういった内容になるように語句を組み立てればよいかが思いつきにくかっただろう。

攻略のためのアドバイス

東大英語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。

難易度が高い語彙はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にしたり、基本語の盲点となる用法を設問としたりすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない

●要求2●高度なリスニング力を身に付けよう。

東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしており、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。

●要求3●時間管理力を付けよう。

東大入試英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な問題に適切に解答できるかどうかである。

まずは時間を意識して問題を解くこと。大意要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから答案作成→第三者による添削→添削内容の習得・答案改善のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない

対策の進め方

まずは基礎力の完成を目指すこと。文法事項を網羅的に習得した上で、さまざまな英文を正確に読めるようにしておこう。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい

基礎力が身についたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう

最後に、自分で納得できる答案を試験時間内に書けるような時間配分を感覚として身につけておいてほしい。試験本番は必要以上に時間をかけて問題に臨んでしまい、時間配分がうまくいかないこともある。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、問題に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける

Z会で東大対策をしよう

Z会東大英語担当者からのメッセージ

東大は大学のHPにて、「(高等学校段階までの学習で)その言語についての正確な知識に裏打ちされた論理的な思考力の養成に努めて」「ときにその言語の背景にある社会・文化への理解を要求する問題が出題される」と明言しています。東大英語の問題全体を見れば、このメッセージが含まれていることがわかりますね。

東大英語の英文は、決して語彙・内容面で難しいものではありませんが、意味を理解しただけでは得点につながらない問題がほとんどです。つまり、解答を作成するための日本語・英語での記述力こそが最大のポイントとなります。また、リスニングや自由英作文など、あらゆる出題形式に対応する力をバランスよく身につける必要があります。

Z会の「東大講座」では、東大の入試を分析し尽くした上で練り上げた良質な問題を出題。さまざまな出題形式に対応しているため、柔軟なアウトプット力を身につけることができます。プロの添削者による個別の添削指導も受けられるので、実戦力が確実に上がります。Z会で問題演習を重ねて解答の質を高め、一緒に東大合格を勝ち取りましょう!

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