東大国語

「東大国語」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 全体の分量は、文系・理系ともに昨年度と同程度。
  • 全体の難度は、文系・理系ともに昨年度よりやや難化したが、解答で求められる内容を整理して端的に表現する記述力が問われる出題であり、過去問を含め東大国語に照準を合わせた演習を積んでいるかどうかで差がつく、東大国語としては標準的な出題であった。

2022年度入試の特記事項

  • 【文科】4題、【理科】3題の出題構成に変化はない。すべて記述式で、1行約14センチ(書けるのは30~35字程度)の解答欄で1~2行の問題が中心。第一問(現代文)では100字以上120字以内という字数制限のついた記述問題が出題されるのも例年と同様。
  • 第一問(現代文)では2017年度以降、2行解答欄の説明問題の出題数が3問、全5問の構成が定着している。
  • 第三問(漢文)は、2017~2021年度に引き続き(一)の口語訳の傍線部が3箇所となり、設問数は文系4問/理系3問(枝問も含めると文系6問/理系5問)であった。

 

合否の分かれ目はここだ!

まず、頻出の文章展開のため読解の難度としては標準的なものの、各設問の解答作成の際には字義を外さずに適切な表現で説明することが求められた第三問の漢文で、確実に点数を取ること。ここで大きく文章や解答するべき内容を読み違えてしまうようでは厳しい。その上で、今回の出題の中で一番難度の高かった第二問の古文で、「終始『中納言』の視点から状況や心情が描かれている」という点に気づき、敬語や語彙に注意して適切に問題文の内容を読み取ることができれば、他の受験生に対して大きなアドバンテージを作ることができたと思われる(逆に、古文が苦手な人は、この大問に時間をかけ過ぎて他の問題で取りこぼしをしないように注意する必要があった)。

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大問別のポイント

 第一問(文理共通現代文) 出典:鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」

  • 筆者が海外で経験した事柄をきっかけに、日本のナショナリズムがもつ分断・排除の力学と、国民としての「生まれ」の「同一性」が持つ仮構性(実際にはない、作られた概念であること)を論じた文章からの出題。「現代社会」「自己と他者」「言語」といった現代文頻出テーマが多く絡んだ文章であり、こうしたジャンルの読解・演習経験を多く積んでいれば内容の見通しを立てやすかったと思われる。
  • (一)~(三)の2行記述問題は、いずれも傍線部の内容説明問題。いずれの設問も文中の表現の切り貼りだけでは解答としてまとまらず、必要に応じて自分の言葉で言い換えながら、内容を肉付けしてまとめる必要がある。
  • (一)は筆者が経験した事例における「甘さ」の内容を端的に説明する。(二)はナショナリズムによる分断・排除の力を〈外〉向き、〈内〉向きそれぞれに即して説明する。(三)は本来の「自然」な状態が、後から名付けによって帰属対象として分断されることを説明する。
  • (四)の120字記述問題は、書くべき内容そのものはとらえやすかったと思われる。「安心はできない」=〈所属集団から分断される危険を常にはらむ〉点について(一)~(三)でまとめた内容も参考にしながら、背景・理由も含めて字数に収めて説明できるかどうかで記述力が問われる。
  • (五)の漢字の書き取りはb「滑稽」がやや難しかったものの、いずれも基本的な出題であり、満点を確保したい。

 第二問(古文)  出典:『浜松中納言物語』

  • 複雑な設定の作り物語からの出題で戸惑った受験生もいたかもしれないが、リード文から中納言が帰国を前に后との別れを悲しんでいる場面であることをつかんで読解すればよい。中納言の心中描写が中心であることを押さえ、主語・敬語の敬意の対象を正確に把握して丁寧に逐語訳していく必要がある。
  • (一)の現代語訳は文脈を踏まえて重要語彙をわかりやすく訳出する必要があり、基本的な演習を積んでいるかどうかが問われる出題。
  • (二)は和歌の表現の大意を問う設問。傍線部の「見る」という重要語および反語表現を正確に解釈したうえで、和歌のやり取りを踏まえてまとめる必要があり、記述の難度は高い。
  • 文系のみの(三)は、設問条件を踏まえ、傍線部を口語訳したうえで傍線部直前の内容を押さえてまとめる。「人やりならず」を適切に解釈できたかで差がついただろう。
  • 文系のみの(四)は、傍線部直前の心内語の内容を踏まえてまとめればよい。
  • 文系(五)/理系(三)は、傍線部が中納言の后への思いを表している箇所であることを押さえ、傍線部直前の内容を踏まえてまとめる。傍線部自体の正確な解釈が難しかった受験生もいただろうが、問題文全体が中納言の心中描写が中心であることを踏まえて読解できるかどうかで差が開く。

 第三問(漢文) 出典:『呂氏春秋』

  • 政治に関する文章からの出題。オーソドックスな展開で、しっかり漢文対策をしたかどうかで差がつく出題となっている。大まかな内容はつかめても解答にまとめるのが難しかった、という受験生もいただろう。
  • (一)は漢字の解釈が重要となる出題。文脈も踏まえて設問ごとに訳し方を工夫したい。a「所以」の意味と文系c/理系b「不用」の訳出に注意が必要である。「威」は〈威光・威厳〉と〈脅威・威力〉、どちらの意で取るか設問ごとに考えるとよい。また、文系d/理系cは送り仮名がないため、逆接の文構造をきちんととらえられたかで差がついただろう。
  • 文系のみの(二)は、まずは「人主」、「不肖」の意味をとらえること。そして「此」が指している第一段落の内容を簡潔にまとめる。難しくはないので、ここは確実に得点したい。
  • 文系(三)/理系(二)は比喩の内容を説明する設問。「託」の解釈に悩んだかもしれないが、傍線部以降の文章から大意をとらえてまとめればよい。
  • 文系(四)/理系(三)は問題文全体をふまえて、殷王朝・夏王朝が滅亡した理由を説明する設問。「塩」の比喩や「威」と「愛利之心」の説明から、「威」を過剰に行うと国の滅亡を招くという問題文の主題を理解できたかがポイント。

 第四問(文系現代文)  出典:武満徹「影絵(ワヤン・クリット)の鏡」

  • 現代音楽の作曲家である武満徹が、信州・ハワイ・バリ島での体験を元に書いたエッセイからの出題。文章としては難しい表現もなく、場面や心情も丁寧に綴られているため、それほど理解しにくいとは感じないはずだが、そもそも言語化しにくい芸術的な抒情について述べられており、内容を言葉で説明するのは簡単ではない。設問は、傍線部の理由説明問題1問、内容説明問題3問の4問構成。例年同様、問題文中で直接説明されていない内容について、どこまで踏み込んで解答すべきかの判断が難しい。
  • (一)ハワイでの体験の説明だが、第二段落の信州での感慨をヒントにまとめるとよいだろう。
  • (二)「周囲の空気」がどのようなもので、ケージが「あたえた」「振動」がどのようなものかを説明すればよいが、どこまで深掘りすべきか(すべきでないか)の判断に迷う。
  • (三)「これ」の指示内容〈=ガムランの響き〉を明確にしながら、〈それを資源として取り扱う西洋音楽家〉という文脈を応用して説明すればよいので、比較的書きやすい。
  • (四)「何か」「そこ」などをある程度明確にして説明するが、これもどこまで深く、あるいは広くとらえるかの判断が難しく、一番書きにくい。

 攻略のためのアドバイス

東大国語を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

東大国語では、専門的で難解な言葉はあまり出題されない。それだけに、受験生として、そして未来の東大生として必須の基本語彙を、現・古・漢において押さえていることが前提となる。語彙の学習が不足している人は、Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』『文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード』などを活用し、積極的に補っておきたい。

●要求2● 文脈を理解する読解力

東大国語でよく出題されるのは、入試頻出のジャンルで、かつ論旨やストーリー展開が明快な問題文である。書かれている内容を自分の主観で歪めずに、制限時間内に正しく読み取れるかが問われている。付け焼刃的な対策では対応できず、さまざまな文章を深く読み込んだ経験の量で差がつくようになっていると言えるだろう。

●要求3●狭い解答欄にまとめる記述力

東大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、解答欄も狭いため、解答すべき内容を、適切に言い改めて説明することが求められる。その理由は東大が国語の知識だけではなく、言葉の運用能力を見ようとしているからだ。詳しくは、東京大学のWebサイトで公開されている「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと【国語】」をぜひ読んでもらいたい。

対策の進め方

受験生の夏までは、多様なジャンルの文章に触れながら、●要求1●と●要求2・3●に対応できる力を同時に鍛えていこう。東大は入試頻出ジャンルからの出題が多いため、Z会の通信教育の本科「東大コース」で現・古・漢の「必修テーマ」を体系的に学習すると効果的である。まずは制限時間を考えずに、読解経験を積みつつ、解答欄を埋められるようになろう。

夏以降は東大即応形式の問題演習を増やしていき、●要求3●に対応する力をさらに磨いていくとよい。受験生の9月からのZ会の講座では、Z会の通信教育・Z会の教室・Z会の映像、いずれも東大対応のオリジナル問題を出題していく。添削指導を受けることで、徐々に解答の質を高めることができるはずだ。最終的には過去問に加えて、東大型の予想問題にも取り組んでおきたい。問題に取り組む際には、大問ごとの時間配分を意識して解くなど、より本番に近い形での演習をするとよい。

「読めるけど書けない」状態からなるべく早期のうちに脱出することが、東大合格の鍵となる。Z会の教材を活用し、さらにZ会によるプロの添削指導を受けることで、東大合格に直結する語彙力・読解力・記述力をバランスよく養成してほしい。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大国語担当者からのメッセージ

2022年度の第一問(現代文)の文章は、〈社会の分断とナショナリズム〉という、現代社会が直面している課題を受験生に突きつけ考えさせる点が非常に印象的な出題でした。2017~2021年度に出題された文章に通底する〈学問・科学に携わる者、今後社会の中核を担うだろう者に要求される基本的な視座や認識〉というテーマと同じく、東京大学で学ぼうとする学生にどのようなことを考えてほしいのか、という大学からのメッセージを強く感じる出題といえます。

2022年度の東大国語では、いずれの大問でも出題の本質的な部分に関する傾向の変更はありませんでした。【問題文を誤りなく読解し、設問で求められる内容を正しく押さえる力】【語彙力・記述力を活用し、読み取った内容を的確にまとめる力】が、これまでと同様に重視された出題だったといえます。
東大国語対策では、東大の過去の出題傾向を十分に研究し、それに対応した問題演習を積むことが非常に重要です。Z会では長年の入試分析をもとに、本科「東大コース」をはじめ、東大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、東大合格をつかみ取りましよう!

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