東大国語

2023年度「東大国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 分量は、大問ごとに多少の増減はあるものの、文系・理系ともに全体としては2022年度と同程度。
  • 全体の難度は、文系・理系ともに2022年度よりやや易化したものの、解答で求められる内容を整理して端的に表現する記述力が問われる出題であり、過去問を含め東大国語に照準を合わせた演習を積んでいるかどうかで差がつく、東大国語としては標準的な出題であった。

2023年度入試の特記事項

  • 【文科】4題、【理科】3題の出題構成に変化はない。すべて記述式で、1行約14センチ(書けるのは30~35字程度)の解答欄で1~2行の問題が中心。第一問(現代文)では100字以上120字以内という字数制限のついた記述問題が出題されるのも例年と同様。
  • 第一問(現代文)では2017年度以降、2行解答欄の説明問題の出題数が3問、全5問の構成が定着している。
  • 第三問(漢文)は、2017~2022年度までと同様(一)の現代語訳の傍線部が3箇所、設問数は文系4問/理系3問(枝問も含めると文系6問/理系5問)であった。

 

合否の分かれ目はここだ!

第二問の古文は、話の展開がわかりやすく設問もオーソドックスであるため、取組時間の短縮が可能。設問指示を見落とさず、必要な解答要素を盛り込んで確実に得点したい。また第三問の漢文も明快な論旨であるため、解答の方向性を見誤ることのないようしたいところ(今回の問題文で大きく文章を読み違えてしまうと厳しい)。
古文・漢文において取組時間を短縮し、現代文の解答の精度を高めるためにどれだけ時間を確保できたか、で差がつくだろう

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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第一問(文理共通現代文) 出典:吉田憲司「仮面と身体」

  • 仮面が「異界」と自分自身とを可視化し、制御するための装置であるということを論じ、人類の普遍的・根源的な思考・欲求について分析した文章からの出題。内容も明確で読み取りやすい文章であった。「近代」「自己と他者」「文化」といった現代文頻出ジャンルの読解・演習経験を多く積んでいれば、より内容の見通しを立てやすかったと思われる。
  • (一)~(三)の2行記述問題は、いずれも傍線部の内容説明問題。意味段落ごとに各設問で問われている内容を押さえることができ、比較的シンプルでスタンダードな出題であった。
  • (一)は、冒頭の二段落分の内容を端的にまとめる。(二)は、「仮面のありかたの歴史的変化」に即して説明する。(三)は、「顔」と「仮面」の違いを押さえたうえで、〈自分からも他者からも可視化され、固定された新たな像ができる〉ということを説明する。
  • (四)の120字記述問題は、「本文全体の趣旨を踏まえて」とあるので、傍線部の内容説明のみに留まらないよう注意したい。(二)(三)を踏まえて「仮面」という装置について説明したうえで、(一)の「人間のなかにある普遍的なもの、根源的なもの」という観点でまとめる必要がある。
  • (五)の漢字の書き取りはいずれも基本的な出題であり、満点を確保したい。

 第二問(古文)  出典:『沙石集』

  • 鎌倉時代の仏教説話からの出題。例年と比べ分量はやや増加したが、2022年度に見られたような和歌に関する出題はなく、注も多いため、内容把握に苦労はしないだろう。設問も易しいものが多いため、短い時間でミスのない解答を作成できたかどうかがポイントとなる。
  • (一)の現代語訳はいずれも基本的な語句・文法が問われている。ここでの失点は避けたい。
  • 文系のみの(二)は「何れも」の内容を補いながら現代語訳をする。傍線部直前に内容は書かれているため、難しくはない。
  • 文系(三)/理系(二)の理由説明は、傍線部直前にある、耳を売った僧の思っている内容をまとめる。
  • 文系のみの(四)は、設問条件を踏まえ、ここまでの状況を踏まえて現代語訳をする必要がある。「申す」という表現から、主語が神主の家族であることを押さえるのが第一。一行の解答欄に合わせ、かつ現代語訳になじむように、状況を簡潔に説明するのがやや難しい
  • 文系(五)/理系(三)は、本文全体の内容を踏まえ、耳を売った僧が〈布施に執着し、欲深くなった〉点をまとめる。設問条件に合わせ、心の卑しさを具体的に説明する必要がある。

 第三問(漢文) 出典:『貞観政要』

  • 2022年度に続き、政治に関する文章からの出題。前史において賛美されている逸話について、太宗がそれを批判するという内容だった。世間で称えられている逸話が否定されるという展開はやや珍しいものの、内容は明快でわかりやすい。東大受験生レベルであれば混乱することはないだろう。
  • (一)は例年同様、漢字の解釈がカギ。文脈も踏まえてその漢字を用いた熟語として適切なものを考えること。a「美」は〈賛美〉の意。c「直辞」は、直後の「正諫(=諫め正す)」という単語から「辞」=〈言葉〉、「直」=〈率直・正直〉の意と捉える。d「佐」は「たすク」と読む。読み方がわからなかった受験生がいるかもしれないが、前後の文脈から《補佐》の意で用いられている点に気づきたい。
  • (二)は「爾」に「なんぢ」と読みが示されているためわかりやすい。ここでは話の聞き手である何曽の子・劭のことである。また、「猶」に返り点がついていないことに注目。再読文字ではなく、副詞の用法である点に注意しよう
  • 文系のみの(三)は「後言」の内容を説明する問題。「何曽の逸話」について述べられている箇所なので、何曽の発言に注目してまとめる。
  • 文系(四)/理系(三)は本文の趣旨を踏まえて、傍線部が言おうとしていることを説明する問題。まずは傍線部を現代語訳にして意味をつかむこと。そのうえで、「顚」「不扶」が指し示す内容がなにかを何曽の逸話と照らし合わせて導けばよい。

 第四問(文系現代文)  出典:長田弘『詩人であること』

  • 詩人の長田弘のエッセイからの出題。〈自分自身の言葉〉と〈社会全体で使う言葉〉について、詩人らしい個性的な比喩を多用して述べられており、こうした文章に慣れていない人にとっては読みにくかったと思われる。設問は、すべて傍線部の内容説明問題の4問構成。例年同様、問題文中では直接説明されていない内容をどこまで説明するかの判断が難しい
  • (一)「錠剤のように」という比喩表現の説明が鍵になると思われるが、〈効能がはっきりしている〉をはじめとするさまざまなニュアンスが想像できるものの、文中に直接ヒントとなるような表現がなく、まとめにくい。まずは傍線部全体の意味の大略を、傍線部上に並列されている「誰もが知ってて誰もが弁えていないような」から汲んだ上で、そこに「錠剤」に結びつきそうなニュアンスを含ませるとよいだろう。
  • (二)「自律」とは〈自分を制御すること〉だが、ここは〈ある言葉を自分自身で自由に使えるような主体性〉といった意味でとらえるとよい。筆者が多用する「一人のわたしの」という言葉については、〈自己の具体的な経験・自分固有の方法に基づいた〉といったニュアンスを含めたい。
  • (三)「口吻」は〈言い方〉。「合言葉」については「敵か味方かという一線を……引いてしまうような言葉」とあるので、〈仲間内で通用する言葉だけを認めるような狭い考え〉を指摘すればよい。
  • (四)「そこ」は直接的には「一つの言葉」を指し、筆者にとって「言葉」とは「他者と出会う場所」だという。それはつまり〈他者との関係を構築する場所〉であり、そのための手段は〈自分と他者との差異を認識すること〉である。

 攻略のためのアドバイス

東大国語を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

東大国語では、専門的で難解な言葉はあまり出題されない。それだけに、受験生として、そして未来の東大生として必須の基本語彙を、現・古・漢において押さえていることが前提となる。語彙の学習が不足している人は、Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』『文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード』などを活用し、積極的に補っておきたい。

●要求2● 文脈を理解する読解力

東大国語でよく出題されるのは、入試頻出のジャンルで、かつ論旨やストーリー展開が明快な問題文である。書かれている内容を自分の主観で歪めずに、制限時間内に正しく読み取れるかが問われている。付け焼刃的な対策では対応できず、さまざまな文章を深く読み込んだ経験の量で差がつくようになっていると言えるだろう。

●要求3●狭い解答欄にまとめる記述力

東大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、解答欄も狭いため、解答すべき内容を、適切に言い改めて説明することが求められる。その理由は東大が国語の知識だけではなく、言葉の運用能力を見ようとしているからだ。詳しくは、東京大学のWebサイトで公開されている「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと【国語】」をぜひ読んでもらいたい。

対策の進め方

受験生の夏までは、多様なジャンルの文章に触れながら、●要求1●と●要求2・3●に対応できる力を同時に鍛えていこう。東大は入試頻出ジャンルからの出題が多いため、Z会の通信教育の本科「東大講座」で現・古・漢の頻出テーマを体系的に学習すると効果的である。まずは制限時間を考えずに、読解経験を積みつつ、解答欄を埋められるようになろう。

夏以降は東大即応形式の問題演習を増やしていき、●要求3●に対応する力をさらに磨いていくとよい。受験生の9月からのZ会の講座では、Z会の通信教育・Z会の教室・Z会の映像、いずれも東大対応のオリジナル問題を出題していく。添削指導を受けることで、徐々に解答の質を高めることができるはずだ。最終的には過去問に加えて、東大型の予想問題にも取り組んでおきたい。問題に取り組む際には、大問ごとの時間配分を意識して解くなど、より本番に近い形での演習をするとよい。

「読めるけど書けない」状態からなるべく早期のうちに脱出することが、東大合格の鍵となる。Z会の教材を活用し、さらにZ会によるプロの添削指導を受けることで、東大合格に直結する語彙力・読解力・記述力をバランスよく養成してほしい。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大国語担当者からのメッセージ

2023年度の第一問(現代文)や第四問(文系現代文)の文章は、〈自己と他者との関わり〉という、現代社会においてそのあり方が多様化し、今なお大きく変化し続けているテーマに関するものでした。受験生にとっても身近な話題であったと言えます。東大国語では、〈自らの体験に基づいた主体的な国語の運用能力〉が重視されます。自己の体験総体を媒介に考えることを求める、東大らしい出題といえます

2023年度の東大国語では、いずれの大問でも出題の本質的な部分に関する傾向の変更はありませんでした。【問題文を誤りなく読解し、設問で求められる内容を正しく押さえる力】【語彙力・記述力を活用し、読み取った内容を的確にまとめる力】が、これまでと同様に重視された出題だったといえます。
東大国語対策では、東大の過去の出題傾向を十分に研究し、それに対応した問題演習を積むことが非常に重要です。Z会では長年の入試分析をもとに、本科「東大講座」をはじめ、東大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、東大合格をつかみ取りましょう!

Z会は東大合格に向けて全力でサポート!

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