「東大日本史」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)

  • 例年通り、第1問-古代、第2問-中世、第3問-近世、第4問-近・現代という出題構成であった。
  • 小問数は7問で、2021年度と同じであった。
  • 総字数は660字で、2021年度から30字増加した。
  • 2021年度と同様、小問の最小字数は60字、最大字数は150字であった。
  • 例年よりやや易化した2021年度と比べるとやや難化したが、全体的な難易度としては標準的であった。

2022年度入試の特記事項

  • 第1問〜第3問は従来の提示文型であり、第4問ではグラフと史料が提示された。
  • 第4問でグラフが出題されたのは、2016年度以来である。
  • 2021年度に続き、昭和戦後期からの出題は見られなかった

合否の分かれ目はここだ!

  • 取り組みやすい第1問と第3問では高得点をねらいたい。その上で、第2問と第4問での失点を最小限に抑えることが、合格へのカギになる。
  • 例年、知識の比重が高い第4問に加えて、2022年度は第3問も知識の比重が高かった。教科書レベルの学習に漏れがあると失点につながり、出来に差がついてしまう
  • いずれの大問も、一見すると見慣れないテーマのように感じられるが、出題の根底には東大頻出テーマが存在した。過去問研究ができている受験生は、解答の方向性が見出しやすかっただろう。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

A:中央政府から諸国への命令伝達(2行:60字)

  • 律令制下で、中央政府から諸国へどのように命令が伝達されたかが問われた。
  • 提示文(1)(2)から読み取った情報を解答にまとめればよい。

B:民衆への命令伝達(4行:120字)

  • 律令制下で、どのように民衆へ中央政府の命令が周知されたかが問われた。
  • 提示文(3)(4)から読み取った情報を中心に、解答にまとめればよい。

設問A・Bともに、提示文と設問の対応がわかりやすく取り組みやすい問題であった。

 第2問  

朝廷の経済基盤の変化と室町幕府の対応(5行:150字)

  • 室町時代に後土御門天皇から3代の天皇が譲位を果たせなかった理由が問われた。
  • 5つの提示文から読み取れる情報を踏まえて解答の骨子を組み立てたい。解答の方向性は比較的わかりやすいが、留意点にも答えながら解答をどうまとめるかでやや苦戦した受験生もいただろう

 第3問  

A:17世紀後半の鉄砲統制策(3行:90字)

  • 17世紀後半に、江戸幕府が村々で鉄砲の所持・使用を認めた理由が問われた。
  • 「理由」については提示文から読み取れる。あとは、刀狩とこの時期に関する知識を盛り込みつつ、解答をまとめればよい。

B:元禄期の社会的価値観の変化(2行:60字)

  • 提示文(4)に見られるような、けが人への手厚い対応が行われるようになった背景が問われた。
  • 知識を中心に解答をまとめていくが、1680年代に生類憐みの令や服忌令が出されたことで、生命や死に対する社会的な価値観が変化したことにも気付けるとよい

 第4問  

A:1880年代半ばから1890年代の労働生産性上昇(3行:90字)

  • 1880年代半ばから1890年代における労働生産性上昇の要因を考えるが、問題文や史料から読み取った情報を踏まえれば、解答の方向性は見出しやすい。求められる知識は基本的なものであり、十分対応できる問題であった。
  • 産業革命が進展して新しい技術や機械が導入されたこと、学校令により義務教育が普及していったことに注目したい。

B:第一次世界大戦期以後の労働生産性上昇(3行:90字)

  • A同様、問題文や史料から読み取った情報をもとに解答の骨子を考え、関連する知識を挙げていく。ただし、史料の2つ目の使い方に悩むだろう。また、解答をまとめる際に苦戦した受験生も多かっただろう。
  • 第一次世界大戦期の工業については、2019年度入試でも出題されているので、過去問演習をしていれば、工場原動力の蒸気力から電力への転換を書くことができただろう。

 攻略のためのアドバイス

東大日本史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 全時代・全分野についての正確な知識・理解

当然だが、日本史についての知識・理解があることが問題を解く上での前提となる。学習の際には、歴史事項の正確な意味内容や、事項の流れに加えて、律令制や幕藩体制といった、各時代を考える際の本質的な事項の理解の両方を身につけることを心掛けよう。

●要求2●提示文・設問文の把握

東大日本史では、与えられた提示文や史・資料すべてをうまく活用すること、設問文の要求や意図を読み取ることが重要になる。東大型の問題演習を通じて、提示文を利用し、設問の趣旨にあった解答を作成する力をつけていこう。

●要求3● 要求された字数に応じて論をまとめる記述力

東大日本史で出題される字数は30字~180字と幅広い。そのため、設問の要求だけでなく、各設問で指定された字数に合わせて、情報を取捨選択し、論旨をまとめる高度な記述力が必要である。定期的な論述演習で、設問の要求を満たした論を作成する力を養っていこう。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大日本史担当者からのメッセージ

いずれの大問も、東大頻出テーマに関連した出題であり、過去問研究を行っていたかどうかでも差がついたと考えられます。

東大日本史では、各設問での少しずつの失点を防ぐことが、高得点を取るためのカギになります。2022年度は、第1問と第2問が提示文の読み取り、第3問と第4問が知識に比重が大きい出題でした。過去問演習を通して東大特有の形式に慣れるとともに、教科書を精読するなどして、基本的な知識・理解の習得も怠らないことが重要です。

東大日本史は特徴的な出題形式であり、一般的な論述問題の演習を積むだけでは対応しきれません。東大日本史の出題に慣れること、さらに頻出テーマについて理解を深めておくことが、合格への近道です。

「Z会の通信教育 [本科]東大コース日本史」では、東大日本史を解けるようになるために取り組んでほしい問題や、東大日本史の出題形式や設問の傾向、頻出テーマを踏まえた問題を豊富に出題しています。Z会オリジナルの、東大日本史に即した問題演習を積み、個々の解答に応じた添削指導を受けることで、東大日本史への対応力を着実に養っていきましょう!

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