2023年度「東大理系数学」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 難易度は2022年度並み
  • 分量は2022年度並み

2023年度入試の特記事項

  • 第2問の確率が文系との共通問題であった。東大としては珍しく、典型的な問題であった。
  • 確率や立体といった東大で頻出の分野からの出題もあり、適度に難易度差もついた東大らしいセットであった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 大問の難易度には適度に差があるのが通例。また、難しい大問では、手のつけやすい(1)が設けられていることが多いが、2023年度は第1問で(1)と(2)の難易度が逆転していた。大問や小問の順番に関係なく、易しい問題を見きわめて得点を重ねることが重要である。
  • 2023年度では、第1問(2)、第2問、第3問(1)、第4問(1)(2)、第5問(1)を確保した上で、残りの問題のうち第6問以外から部分点をとり。全体で5割以上得点したい。
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大問別のポイント

 第1問  

  • 第1問に出題される数学Ⅲの微積分としてはやや難しく、しかも(1)の初手が難しいため、焦った受験生もいるだろう。
  • (1)は定積分に関する不等式の証明。示すべき不等式が「ある不等式の辺々を積分して得られたもの」であることは想像できるが、その不等式がつくりにくい。そもそもsin(x²)という式が扱いにくいのだが、扱いやすくするために置き換えをしてみると、示すべき不等式の形に近づく。このように試行錯誤の過程で証明の方針が見えるようになっている。
  • (2)は定積分の極限を求める問題。(1)で示した不等式の利用の仕方や区分求積法を用いる方針はつかみやすい。

 第2問  

  • 確率からの出題で、玉を取り出して横一列に並べるシンプルなもの。2022年度に引き続き漸化式ではないタイプであった。また、東大の問題にしては題意がつかみやすく、「n」も登場しないため、取り組みやすい。ただし、場合分けや処理量が意外に多いので、重複やモレに注意して解き進める必要がある。
  • (1)は「隣り合わない」並べ方に関する問題で、東大受験生であればすぐに解けるレベルである。
  • (2)は条件付き確率の問題で、「赤玉どうし、黒玉どうしが隣り合わない並べ方の数」が求まれば、(1)を利用して計算できる。1色ずつ順に考えていくことになるが、どのような方針をとるにしても、慎重な場合分けや処理が要求される。

 第3問 

  • 放物線と円、接線に関する問題である題意の読み替えや処理の工夫ができるかどうかがポイントである。
  • (1)は放物線と円の位置関係を問うもの。円の中心と放物線上の点の距離を調べるか、または放物線と円の方程式から1文字消去し、判別式を考えればよい。
  • (2)は円の接線が放物線によって切り取られてできる線分の長さに関する問題。異なる接点に対し接線の長さが等しくなることがある、ということをうまく読み替える必要がある。また、接点の座標を媒介変数で表すか、接線の傾きをおくことになるが、いずれにしても工夫せずに最後まで計算するのは難しく、文字の置き換えが必要となる。

 第4問 

  • 空間図形の問題で、空間内の三角形と球面の位置関係(包含関係)を考えるもの。ベクトルによる計算だけでなく、図形的考察もカギになる、東大らしい空間図形の問題である。
  • (1)、(2)はベクトルの基本問題であり、落とせない。
  • (3)は、(1)の条件や(2)の結果から、各点の空間内における位置関係を把握することが第一歩。とくに、OP⊥平面OAB、PH⊥ABからOH⊥AB(三垂線の定理)がわかると見通しがよい。あとは、三角形OHBの周および内部の点で、球の中心Qに最も近い点、最も遠い点を考えればよい。

 第5問 

  • 多項式(整式)の除法に関する問題であり、東大がこれをメインテーマとするのは珍しい
  • (1)は二項定理を用いて余りに関する性質を示す問題。整数分野で同じような問題を解いた経験があるだろう。
  • (2)2次式h(x)を7乗してf(x)で割った余りを、7乗してf(x)で割ると余りがh(x)になる、という構造であり、(1)の結果を用いるとh(x)の49乗をf(x)で割った余りがh(x)になることがわかる。あとは数値の代入や微分の利用により、a,bの組を絞り込めるが、これでは必要条件を求めたに過ぎないので、十分性をチェックすることが必須である。

 第6問 

  • 立方体や球によってつくられる図形の体積を求める問題。このような問題では適当な平面による切り口を考え、その断面積を積分することで得られることがほとんどだが、本問は(1)でその解法が難しく、図形的に考えて解くことになる。柔軟な発想と図形的な見方が問われる問題であった。
  • (1)立方体の表面・内部および外部で点Pが動き得る範囲を捉えるのが第一歩。立方体の外部では球の一部分になることは想像がつくが、無理に積分で求めようとすると行き詰まってしまう。図形的な見方と方針の転換が重要であった。
  • (2)まずは(1)との違いをつかむことが第一歩。すると、(1)で考えた図形に含まれるすべての点Pが(2)の条件をみたすことがわかるので、(1)の図形から「はみ出る」部分の体積を求めることが目標となる。最終的に回転体の体積を求めることになるが、その判断に至るまでの図形把握が難しい

 攻略のためのアドバイス

東大理系数学を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 高度な思考力

特別な知識は要求しないが、高いレベルの思考力、発想力を試す問題が多く出題される。他の大学では、一目で典型問題だとわかる出題が多いが、東大では出題の仕方がかなり工夫され、すぐには問題の解法が浮かびにくいものが多い。初見の問題に色々な面からアプローチして、解法を決める力が求められる。確率、整数の問題で主にこの力が問われる。

●要求2● 早く正確な処理力

例年、処理量の多い問題が出題され、比較的処理量の少ないものでも、1問あたり20~30分くらいかかるものもある。とくに積分の問題で、ハードな計算を要求するものが多い。また、やや高度な出題も見られるが、処理力重視の問題は、方針が立てやすい。数式処理力の差は直接得点差につながりやすいので、速く正確に処理できる力を充実させておきたい

●要求3●解ける問題を見極める力

例年、5割程度取れれば合格ラインといえる量とレベルであり、全問を解く必要はなく、解く問題の選択が合否を分ける。過去問演習などで完答できる問題を見きわめる力を養おう。それ以外の大問でも、解ける小問はもちろん解くべきである。

対策の進め方

まずは、苦手分野があれば、遅くとも受験生の夏休みまでには克服したい。ただし、基本的なことばかりやっていては、高度な思考力を要求される東大入試には太刀打ちできなくなる。
受験生の秋以降は実戦的な演習を行い、得点力アップを図ろう。また、答案を作成する力の養成も意識したい。
共通テストが終わったあとは、東大入試に即応したZ会の問題で、最後の総仕上げをしよう。解答を作成する時間や、採点者にきちんと内容の伝わる答案作りを意識し、実戦力を完成させよう。
Z会の講座では、上記の各段階に応じて、東大対策を無理なくこなせる設計になっている。Z会の講座を活用して、ライバルに差をつけよう!

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Z会東大理系数学担当者からのメッセージ

東大理系数学では、パターンを覚えているだけでは解くことができない、思考力を要求される問題が出題される。このような問題を本番で解けるようにするためには、日頃から自分で考える必要のある難しい問題に取り組むことが大切。Z会の「東大講座」の問題は、この演習にうってつけだ。

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