「東大生物」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 分量:大問数は3題。それぞれに2つの中問が含まれる。論述量は2020年度よりも減少して、2019年度と同程度に。負担感は減少した。
  • 難易度:難易度は標準的であった。
  • 出題分野:各大問は分野融合となっており、「遺伝情報の発現」に関わる出題が多い
  • 形式:用語、正誤判断、論述が中心である。

2021年度入試の特記事項

  • 教科書の最後の大分野である「生物の進化と系統」からは2021年度は出題がなかった
  • 大問3は、性を男性か女性かの二者択一で捉えることへの疑問を投げかける文章だった。このような通俗的な話題から入る主題は珍しい
  • 2021年度は知識を直接に問う問題の割合が2020年度よりも減少し、2019年度と同程度になった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 2021年度は、2020年度に引き続き、すべての大問でⅠ・Ⅱは関連した話題だった。複数の実験結果を統合して考察する設問が多く、時間配分が難しい。検討に時間がかかる設問はこだわりすぎずに先へ進むことが、点数を重ねるポイントになっただろう。
  • 第1問のⅠは、Cで遺伝子A〜Cの発現の仕組みを押さえれば、最後までスムーズに進める。Ⅱは、H〜Iの検討に時間をかけすぎないように注意しよう。
  • 第2問は知識を直接に問う問題も多いので、ここは確実に取り組もう。その後で、CやG〜Hに手をつけたい。Bは、考える要素や比較するグラフが多く手間がかかる。また、Ⅱで取り上げられたカルシウムイオン濃度の測定法は、これまでに同様の手法や考え方に触れたことがあるかどうかでも、時間的な余裕に差がついただろう。
  • 第3問は、標準的なレベルの問題が小問集合的に続くため、比較的取り組みやすい。最後まで確実に手をつけることが重要だった。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

I  クマムシの乾燥耐性獲得と遺伝子発現

  • 2種のクマムシの乾燥耐性獲得の仕組みと、耐性獲得に関わる遺伝子A〜Cの役割を、変異体や阻害剤を利用した実験から明らかにしていく。
  • Cは、刺激に直接応答する初期発現遺伝子と、調節タンパク質を介して発現する後期発現遺伝子について、転写阻害剤や翻訳阻害剤の影響を考察する問いだった。翻訳阻害剤の影響が、初期遺伝子と後期遺伝子では異なる点に気がつけるかが鍵となる。
  • Eは、Cでの理解が正しくないと解けない

II 線虫の乾燥耐性獲得と遺伝子発現

  • クマムシとは異なる乾燥耐性の仕組みをもつ線虫について、複数の遺伝子の変異体を用いた実験から、乾燥耐性のメカニズムを考察する。
  • Iは、トリグリセリドと基質G1の関係を変異体の実験からわかる範囲で説明するが、2行にまとめるのは難しかっただろう。

 第2問 

I  シロイヌナズナの根の重力・青色光・水分に対する屈性

  • Aで問われた屈性の生物学的意義は頻出の観点である。
  • Bは、仮説が追加実験の結果を受けても矛盾しないか考察する。比較するべきグラフの種類が多様で、手間がかかる。

II タバコの風刺激・接触刺激・低温刺激に対する応答

  • 環境ストレス応答の仕組みに大きく関わるカルシウムイオン濃度変化を、発光タンパク質イクオリンを用いて可視化する実験が題材だった。
  • Hでは、カルシウムイオン濃度を測定しているのが、細胞小器官を含まない細胞質基質であるという点に注意したい。なお、植物細胞では、(教科書にあるような動物の筋繊維と同様に)小胞体が細胞内のカルシウムイオン貯蔵庫として働いている。

 第3問  

I  脊椎動物の性の表現型多様性

  • 半身ごとに性が異なる個体や、雌のような外見をもつ雄、両性の特徴をもつ種、性転換をする種など、多彩な脊椎動物の性が題材となった。
  • Gでは、カクレクマノミの性転換が、視覚刺激によってのみ起こることを証明する実験を構築する。

II ヒトの性と脳機能

  • 「男性脳」と「女性脳」という話題を題材に、ヒトの脳の性差の捉え方について考える。
  • Jは、海馬の灰白質の体積差が生じる要因を推測する問いだった。灰白質は、神経細胞の細胞体が集まる部分であることに注意したい。

       攻略のためのアドバイス

      東大生物を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

      ●要求1● 正確な 知識力

      各大問の前半に知識問題が出題されることが多い。ハイレベルな勝負になる東大生物では、知識問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく、関連する生命現象とあわせて、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。

      ●要求2● 素早く要点をおさえる 読解力

      問題の分量が多いので、リード文はすばやく的確に読み解く必要がある。そのためには、内容を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルのリード文を読む訓練から始めて、徐々に東大レベルに近づけていこう。また、解答時間を意識しながらの演習は、スピードアップに効果的。また、問題演習などで表・グラフをみるときは、大小関係や変化の様子をつかむことを意識しよう。

      ●要求3●読解力と知識力に基づく 考察力+論述力

      基本となる見慣れない考察問題攻略のコツは、実戦演習を重ねる中で、仮説→実験→結果→考察という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけること。また、論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。独りよがりな答案になっていないか、添削をしてもらうとよい。

      対策の進め方

      なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏を目指そう)。とくに、「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので、計画的に学習を進めよう(2021年度は出題がなかったが,例年は数問の出題がある)。Z会の本『生物 知識の焦点』は、高校生物の全範囲について、教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので、知識力完成に役立つだろう。

      次のステップとして、入試形式の演習問題になるべく数多くあたり、●要求2●●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育[本科]「東大コース」でも、東大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。

      最後に、問題の分量が多い東大生物では、なるべく全部の設問に手をつけられるよう、問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して、時間配分にも気を配った演習を積もう。

      Z会で東大対策をしよう

      Z会東大生物担当者からのメッセージ

      時間をかければ解ける問題が多く、時間配分に迷った方が多いのではないでしょうか。「もう少しで解けそう」という問題に次々取り組むと、時間が足りなくなってしまいます。迷う問題は後回しにするなど、時間を意識しながら解き進めましょう。

      東大入試の記述問題では、100文字程度で伝えたいことを抜けもれなく、かつ素早く書く必要があります。読み手に意図が伝わる文章になっているか、不安な場合にはZ会の通信教育「東大コース」を活用して、添削指導を受けることがおすすめです。論述力は一朝一夕には身につきませんから、早めの対策を行っていきましょう!

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