「東大生物」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 大問数は3題。大問1題当たりの分量は多い。全体のページ数や論述量は2021年度よりも増え、負担感は増加した。
  • 設問の難易度は標準的だが、リード文に示された膨大な情報を処理する必要があり、時間内に解き終えるのは困難だろう。
  • 各大問は分野融合となっており、「遺伝情報の発現」に関わる出題が多い。
  • 用語、正誤判断、論述が中心であるが、年度により数学的な分析や解釈を要する問題も出題される。
  • 解答用紙は、1題当たり横35文字、縦25行程度の文字が書けるように罫線が入っている。論述問題は字数ではなく行数で指定される。

2022年度入試の特記事項

  • 各大問の冒頭には3〜4ページの実験に関する説明があり、文章が長い上に図も複雑なので、理解に時間が取られる出題だった。
  • 計算が必要な問題はみられなかった。

合否の分かれ目はここだ!

2022年度は、2020・2021年度に引き続き、すべての大問でⅠ・Ⅱは関連した話題だった。複数の実験結果を統合して考察する設問が多く、時間配分が難しい。見慣れない図やグラフの検討にも時間を取られただろう。解答に必要な情報を素早く切り抜き、効率よく理解を進めていくことが、点数を重ねるポイントになった。

  • 第1問は、チャネルロドプシン遺伝子の発現するタイミングとそのタンパク質の分布について、A〜Cを踏まえてEに取り組むことで、実験結果を矛盾なく説明できるしくみを見出したい。D・Jの動物の行動に関する知識は、見落とされがちだが教科書に掲載されている内容だった。
  • 第2問のⅠは、1問1問の検討に時間がかかる問題が並んだ。解答の糸口が掴めなさそうな問題は深追いせず、先に進む判断も必要だった。A・B(1)(2)・C・Dはぜひ取り組んでおきたい。その上で、E・Fの検討に取り掛かろう。
  • 第3問は、リード文の長さが目立つ。設問自体は素直なものが多いので、設問に沿って順に内容理解を進めていきたい。A〜D、E〜Gはぜひ解答し、Hで少しでも点数をとれるようにしたい。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

I  恐怖記憶の形成と想起

電気ショックを受けるという恐怖記憶の形成と、青色光により特異的な神経細胞を興奮させるしくみによって恐怖記憶を想起させる実験が題材だった。

  • Dでは動物の行動に関する見落としがちな知識が問われた。
  • E〜Gの検討にはチャネルロドプシンの実験に関する正確な理解が必要だった。

II 空間記憶の形成と想起

直線状のトラックを往復した際の神経細胞の活動頻度を調べる実験結果に絡めて、ハチやマウスの空間記憶の形成について考察する。

  • Lでは、神経細胞の活動頻度と行動の長さを関連付けて、恐怖記憶が想起された際の「すくみ行動」の長さの原因を分析する問題が出題された。

 第2問 

I  光合成生物の光環境の変化に対する生存戦略

  • Aは、同化の「エネルギーを吸収して単純な物質から複雑な物質を合成する」という定義から考える。
  • Eは、野生型では植物体全体に光を照射をした方が気孔開度の増加が速いこと、気孔閉口に働くアブシシン酸の移動を阻害するとその効果は失われることから、他の葉からのアブシシン酸の移動について考察する。
  • 各設問の解答には複数の実験結果を読み取る必要があり、難度が高かった

II 光合成生物の栄養条件の変化に対する生存戦略

  • G〜Iまでは比較的取り組みやすいので、時間をかけずに解き進めよう
  • Iは、生体膜の成分の違いに着目してまとめたい。

 第3問  

I  ノッチシグナル伝達の活性化

  • リード文が非常に長く、説明に用いられる図も複雑である。
  • 設問を解くのに必ずしも全ての情報が必要ではないので、設問で問われている部分を順に追いながら、理解を深めていきたい。

II ノッチシグナルの張力依存性仮説

  • E〜Gまでは、実験3・4の結果をもとに、時間をかけずに解き切りたい
  • Hは、ノッチタンパク質とデルタタンパク質間の張力と送り手細胞で起きるエンドサイトーシスを関連づけて考えよう。

       攻略のためのアドバイス

      東大生物を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

      ●要求1● 正確な 知識力

      各大問の前半に知識問題が出題されることが多い。ハイレベルな勝負になる東大生物では、知識問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく、関連する生命現象とあわせて、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。

      ●要求2● 素早く要点をおさえる 読解力

      問題の分量が多いので、リード文はすばやく的確に読み解く必要がある。そのためには、内容を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルのリード文を読む訓練から始めて、徐々に東大レベルに近づけていこう。

      また、解答時間を意識しながらの演習は、スピードアップに効果的。また、問題演習などで表・グラフをみるときは、大小関係や変化の様子をつかむことを意識しよう。

      ●要求3●読解力と知識力に基づく 考察力+論述力

      基本となる見慣れない考察問題攻略のコツは、実戦演習を重ねる中で、仮説→実験→結果→考察という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけること。また、論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。独りよがりな答案になっていないか、添削をしてもらうとよい。

      対策の進め方

      なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏を目指そう)。とくに、「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので、計画的に学習を進めよう(2021年度は出題がなかったが,例年は数問の出題がある)。Z会の本『生物 知識の焦点』は、高校生物の全範囲について、教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので、知識力完成に役立つだろう。

      次のステップとして、入試形式の演習問題になるべく数多くあたり、●要求2●●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育[本科]「東大コース」でも、東大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。

      最後に、問題の分量が多い東大生物では、なるべく全部の設問に手をつけられるよう、問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して、時間配分にも気を配った演習を積もう。

      Z会で東大対策をしよう

      Z会東大生物担当者からのメッセージ

      時間をかければ解ける問題が多く、時間配分に迷った方が多いのではないでしょうか。「もう少しで解けそう」という問題に次々取り組むと、時間が足りなくなってしまいます。迷う問題は後回しにするなど、時間を意識しながら解き進めましょう。

      東大入試の記述問題では、100文字程度で伝えたいことを抜けもれなく、かつ素早く書く必要があります。読み手に意図が伝わる文章になっているか、不安な場合にはZ会の通信教育[本科]「東大コース」を活用して、添削指導を受けることがおすすめです。論述力は一朝一夕には身につきませんから、早めの対策を行っていきましょう!

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