「東大世界史」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)

大問3題の構成で、論述問題が中心である。

  • 第1問は大論述であり、論述字数は2021年度と同じ600字であった。
  • 第2問は小論述集合であり、総論述字数は420字であった。また、2021年度と同様に単答問題も出題された。
  • 第3問は例年通り単答集合であった。
  • 全体の総論述字数は1020字であり、2021年度の990字からやや増加した。
  • 全体的な難易度は例年並みであった。

2022年度入試の特記事項

2020年度の第1問や第2問では史資料を使った問題が出題されたが、2022年度は、2021年度と同様に史資料の提示はなく、東大世界史のオーソドックスな出題形式であった。

  • 第1問は8世紀から19世紀までの展開について出題された。第2問は古代から現代にかけて幅広く出題され、教科書の内容以上の知識を要する問題も見られた。第3問も古代から現代にかけて幅広く出題され、中にはやや細かい知識を必要とする問題も見られた。
  • 第1問は内陸アジアから出題された。第2問はヨーロッパ史・アジア史からバランスよく出題された。第3問では、アフリカや東南アジアなど、学習が手薄になりやすい地域からの出題が見られた。

合否の分かれ目はここだ!

  • 第1問の大論述は、2021年度と同様に指定語句が7~8つ提示されるオーソドックスな形式であった。例年通り、正確かつ多角的な知識はもちろんのこと、問題文・指定語句から設問の要求を的確に読み取り、論旨が通った解答にまとめあげる論理的思考力・文章表現力が不可欠であった。
  • 第2問の小論述集合では、一部の問題でかなり踏み込んだ知識を必要とする出題が見られた。単答問題はいずれも平易な内容であったため、落ち着いて取り組みたい。
  • 第3問の単答集合は、学習の盲点となりがちな範囲からの出題も見られたが、概ね易しい出題であったため、確実に得点すべきである。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

  • 8世紀から19世紀までの時期におけるトルキスタンの歴史的展開について問われた。問題文に記述がある通り、トルキスタンの支配をめぐって進出してきた勢力や、トルキスタンに勃興した勢力などを軸にして論じよう
  • 2020年度のような史料の提示はなかった。また、指定語句の数は2021年度から1つ増えて8つであった。
  • 内陸アジアについて論じることが求められており、教科書の内容を隅々まで理解しておく必要があった。内陸アジアは、世界史では周辺史として扱われることが多い地域であり、1つの文章にまとめあげるのが難しい。それぞれの事柄を整理し、1つの文章にまとめる文章構成力が必須となった。
  • 8世紀から19世紀までという長い時期を論じる必要があるため、時系列順に書くべき事項を整理しながら、解答を組み立てよう。

 第2問  

法や制度の基盤となる理念や思想、運動をテーマに出題された。2021年度に引き続き、小論述のほかに単答問題も出題された。解答にかなり踏み込んだ知識が必要となり、制限字数を埋めるのに苦労する問題が散見された。設問の要求と制限字数のバランスを見極め、手持ちの知識を総動員して、臨機応変に対応できる文章表現力が必要であった。

2021年度と比べて小論述の問題数が増加し、第2問全体の総論述字数が増加した。各小問に時間をかけすぎずに手早く処理し、第1問に使える時間を十分に確保できるようにしたい

  • 問(1)-(a)は論述問題では頻出の事項である。制限字数も妥当な量であるので、着実に解答したい。問(1)-(b)はイスラームに関する単答問題である。文化史であるが、平易な内容なので確実に得点しておきたい。問(1)-(c)はイランの白色革命について論じる必要があった。戦後史からの出題であったほか、かなり踏み込んだ内容まで記述する必要があり、苦労した受験生も多かったと思われる
  • 問(2)は中世~近世のヨーロッパから出題された。(a)は、マグナ=カルタが作成された経緯についての出題であった。4行と制限字数は多いが、「課税をめぐる事柄を中心」と補足されており、書くべきことは容易に想起できる問題であった。(b)は、マキァヴェリの主張に関する出題であった。想起できる事項に比べて制限字数が長く、字数を埋めるのに苦労したかもしれない。
  • 問(3)は日清戦争後の中国で起こった改革運動について出題された。(a)は、基本的な単答問題である。「日本に亡命した」という情報で戸惑ったかもしれないが、落ち着いて解答したい。(b)は、改革運動の主張とその経緯を論じる問題であった。論述問題では頻出の範囲であるが、制限字数がやや長く、教科書内容の盤石な知識が必要とされた。

 第3問  

戦争や軍事的な衝突をテーマに、オーソドックスな単答問題が10問出題された。やや紛らわしい問い方をした問題も見られたが、概ね平易な内容であり、取り組みやすかった。

  • 問(1)は、古代のアフリカに関する問題であった。手薄になりがちな範囲であり、間違えやすい用語も多かったが、問題文に書かれたキーワードから正確に判断したい。
  • 問(2)は、問題文で挙げられている事項は教科書には掲載されておらず、やや難であった。13世紀末にシリア地方を統治していた王朝を思い浮かべて解答しよう。

 攻略のためのアドバイス

東大世界史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 第3問は磐石な知識力が必須!

ほとんどが基本的な知識に関する出題であるため、合格のためには9割以上の得点をめざしたい。但し、文化史や現代史など学習が手薄になりやすい範囲からの出題も見られるので、注意が必要である。

●要求2● 第2問は「正確な知識」「設問の要求に応じた記述」がポイント!

概ね基本的な内容から問われる一方で、知識が不正確だったり設問の要求を意識できていないと、大きく減点されてしまう。日頃から、知識の正確さや、年代や“意義”・“影響”などの設問の要求に正しく応えているかを意識して、端的に解答を作成する練習を積みたい

●要求3● 第1問は「読解力」「論理的思考力」「文章表現力」を鍛えよ!

東大世界史第1問の攻略には、盤石な知識はもちろん、問題文から要求を読み取る「読解力」、解答を組み立てるための「論理的思考力」、600字でも筋の通った解答を作成する「文章表現力」が必要となる。

こうした力は一朝一夕で身につくものではないので、早期から論述対策を始めよう。第三者に添削してもらうことにより、表現力を磨き、文法的にも正しい文章を書けるようにしておきたい

Z会で東大対策をしよう

Z会東大世界史担当者からのメッセージ

2022年度の第1問は、教科書では周辺史として扱われがちな範囲からの出題でした。周辺史の論述は1つの文章としてまとめ上げるのが難しく、苦労した受験生も多かったかもしれません。日常の問題演習から、設問の要求に応えつつ論旨の通った1つの文章とする練習を行い、「文章構成力」「文章表現力」を鍛えておきましょう。

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