2023年度「東大世界史」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)

大問3題の構成で、論述問題が中心である。

  • 第1問は大論述であり、論述字数は2022年度と同じ600字であった。
  • 第2問は小論述集合であり、総論述字数は330字であった。また、2022年度と同様に単答問題も出題された。
  • 第3問は例年通り単答集合であった。
  • 全体の総論述字数は930字であり、2022年度の1020字からやや減少した。
  • 全体的な難易度は例年並みであった。

2023年度入試の特記事項

2023年度の第1問や第2問では、2020年度以降見られなかった史資料を使った問題が出題された。

  • 第1問は1770年前後から1920年前後までの時代について出題された。第2問は古代から近世までを中心に出題された。第3問は古代から現代にかけて幅広く出題され、文化史からの出題が目立った。総じて、各時代からバランスよく出題された。
  • 第1問はヨーロッパ、南北アメリカ、東アジアの広い地域から出題された。第2問は中国や西アジアを中心に出題され、ヨーロッパからの出題は見られなかった。第3問はヨーロッパ史・アジア史からバランスよく出題された。

合否の分かれ目はここだ!

  • 第1問の大論述では地図が2つ提示され、2020年度以来となる史資料を用いた出題であった。但し、解答内で地図について言及する必要はなく、提示された指定語句は2022年度と同じ8つであった。例年通り、正確かつ多角的な知識や、問題文・指定語句から設問の要求を的確に読み取り、論旨が通った解答にまとめあげる論理的思考力・文章表現力が不可欠であったほか、資料を活用する力も必要であった。
  • 第2問の小論述集合では、概ね標準的な内容であったが、一部学習の盲点となりがちな事項も出題された。単答問題は、複数の用語を解答する必要があったが、いずれも平易な内容であった。
  • 第3問の単答集合は、問題文を読み違えやすい出題や教科書とは異なる視点からの出題も見られたが、概ね平易な出題であったため、確実に得点すべきであった。
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大問別のポイント

 第1問  

  • 1770年前後から1920年前後までのヨーロッパ・南北アメリカ・東アジアにおいて、諸国で政治の仕組みがどのように変わったか、およびどのような政体の独立国が誕生したかを論じる問題であった。問題文に記述がある通り、各地で成立した国家の政体の変化について、憲法や議会、国民の政治参加などに触れつつ論じよう。
  • 地図が2つ提示されたが、2020年度とは異なり解答内で史資料に言及する必要はなかった。指定語句の数は2022年度と同様に8つであった。地図の注目すべきポイントがつかみづらく、読み取った情報の活用に苦労した受験生もいただろう。
  • ヨーロッパ・南北アメリカ・東アジアという広い地域について論じることが求められており、教科書の内容を網羅しておく必要があった。
  • 「1770年前後から1920年前後まで」と、年代が具体的に指定されているため、論述の始点・終点となる事項を見誤らないようにしよう。
  • 広い地域を対象とするほか、約150年間とそれなりに長い時期について論じる必要があり、想起できる事項が非常に多かった。そのため、要求に沿った事項の的確な取捨選択が重要であった。

 第2問  

河川をテーマに出題された。2022年度に引き続き、小論述問題のほかに単答問題も出題された。一部の問題で、解答にやや細かい知識が必要となり、制限字数を埋めるのに苦労する問題が見られた。設問の要求と制限字数のバランスを見極め、手持ちの知識を総動員して、臨機応変に対応できる文章表現力が肝要であった。

2020年度以降続けて出題されていた制限字数4行の問題は出題されず、2022年度と比べて第2問全体の総論述字数は減少した。第1問では地図の読解も必要となったので、第2問は各小問に時間をかけすぎずに手早く処理したかった。

  • 問(1)-(a)は基本的な単答問題である。時代によって呼称が変わる都市は、どの時代について問われているのかを冷静に判断して解答したい。問(1)-(b)は近世中国史からの出題であった。経済史であるが、頻出な内容なので確実に得点しておきたい。
  • 問(2)では、イスラーム世界に関する史料が提示された。(a)は、史料の読み取りも含め平易な問題だった。(b)は、マムルークの特徴と果たした役割について論じる問題であった。特徴は容易に想起できたであろうが、果たした役割については学習の盲点であったかもしれない。(c)は、文化的変容について述べる必要があり、学習が手薄であった受験生もいたかもしれない。「言語面を中心に」とヒントがあったため、落ち着いて関連する事項を想起したい。
  • 問(3)はナイル川周辺の地図を用いて出題された。(a)は、農業の特徴を簡単に説明しただけでは制限字数に満たないため、主要作物にも言及しておきたい。(b)は、学習の盲点となりがちな用語を深く掘り下げる必要があり、難しかった

 第3問  

医学の発達をテーマに、オーソドックスな単答問題が10問出題された。読み違えやすい問い方をした問題も見られたが、概ね平易な内容であり、取り組みやすかった。

  • 問(2)は、中世ヨーロッパの文化史から出題された。著作の内容まで把握しておく必要があったが、東大受験生には押さえておいてほしい内容であった。
  • 問(8)は、古代の南アジア史から出題された。問題文を読み違えやすい出題であったため、解答を取り違えないように注意したい。
  • 問(10)は、古代中国の文化史から出題された。教科書とは異なる視点から問われたため、戸惑った受験生もいたかもしれない。

 攻略のためのアドバイス

東大世界史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 第3問は磐石な知識力が必須!

ほとんどが基本的な知識に関する出題であるため、合格のためには9割以上の得点をめざしたい。但し、文化史や現代史など学習が手薄になりやすい範囲からの出題も見られるので、注意が必要である。

●要求2● 第2問は「正確な知識」「設問の要求に応じた記述」がポイント!

概ね基本的な内容から問われる一方で、知識が不正確だったり設問の要求を意識できていないと、大きく減点されてしまう。日頃から、知識の正確さや、年代や“意義”・“影響”などの設問の要求に正しく応えているかを意識して、端的に解答を作成する練習を積みたい

●要求3● 第1問は「読解力」「論理的思考力」「文章表現力」を鍛えよ!

東大世界史第1問の攻略には、盤石な知識はもちろん、問題文から要求を読み取る「読解力」、解答を組み立てるための「論理的思考力」、600字でも筋の通った解答を作成する「文章表現力」が必要となる。

こうした力は一朝一夕で身につくものではないので、早期から論述対策を始めよう。第三者に添削してもらうことにより、表現力を磨き、文法的にも正しい文章を書けるようにしておきたい

Z会で東大対策をしよう

Z会東大世界史担当者からのメッセージ

2023年度の第1問は、2020年度以降見られなかった史資料を用いた出題でした。形式はやや見慣れないものでしたが、必要とされる能力は大きく変わりません。日常の問題演習から「読解力」「論理的思考力」「文章表現力」を意識して鍛えておきましょう。

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