Z会の東大コース担当者が、2020年度入試の東大文系数学を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、東大文系数学の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2020年度の「東大文系数学」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
解くべき問題で、着実に得点を重ねよ。
大問ごとの難易差は例年以上であり、解ける問題の見極めは難しくありません。しかし、解くべき問題が易しいわけではなく、論証力が必要だったり、状況把握が難しかったりする箇所があり、実力差が得点に現れる出題でした。
合否の分かれ目は?
受験生の答案データを見てみると…
大問 | 合格者 平均 |
不合格者 平均 |
差 |
---|---|---|---|
第1問 | 13.6 | 10.7 | 2.9 |
第2問 | 4.6 | 3.1 | 1.5 |
第3問 | 9.5 | 7.4 | 2.1 |
第4問 | 4.1 | 1.7 | 2.4 |
上の表は、再現答案をZ会で分析した採点基準に照らして採点した結果です。
まず、2020年度の特徴として、大問間の平均点の差が大きいことがあげられ、平均点が高い第1問と第3問が「解かねばならない問題」といえます。これを試験場において問題を解く中で察して、決断することが大事だったことがうかがえます。
各大問においては、合格者平均と不合格者平均で、ほぼ同じくらいの差がついています。
- 第1問では、格子点の候補を見抜いた後、必要条件を立てるところで差がつきました。これができないとこれ以降の部分点が見込めないので、ここでの差が大きいです。
- 第2問は合格者、不合格者とも得点できても(1)のみであることがほとんどであり、重複をきちん把握・処理できるかできないか、で差がついた形となっています。
- 第3問は(1)での差が大きいですが、(2)でも(条件)を立式しやすいように読み替えられるかでも差がついています。
- 第4問は、得点できても(1)のみであり、合格者において(1)が解けている答案が多く、それが差となって表れています。
⇩
差がつく一問は
≪第3問≫
差がつく一問の注目ポイント
解かねばならない問題である第1問と第3問はいずれも、不合格者の得点も比較的高く、手がつけられないという問題ではありません。いずれの問題も「東大受験生として知らなければならない定石的な考え方」を問う出題意図があるためです。
しかし、それだけでなく、+αの力も試されています。第3問では、問題解決のために、必要な情報を抽出し適切な方針を立てられるか、という姿勢や思考力が問われています。
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
一見、解答欄びっしりに解答が書かれていて、点数がしっかりとれそうな答案に見えます。しかし、Z会が採点した結果は、20点中9点。Z会が設定した目標点である12点には届きませんでした。

それでは、この答案には、「どんな要素が足りなかったのか」「どういう対策をしていれば目標点に届いたのか」を詳しく見ていきましょう。
目標点とのギャップをどう埋める?
両設問とも大筋は理解できていると判断できますが、不十分な部分があり、大きく減点されています。原因は「条件の見落とし」ではありますが、見慣れた問題であるため、1つの解法が浮かぶと「図を書く」「実験する」といった問題に応じた基本的な考察が少なくなり、結果的に条件の見落としにつながっていると考えられます。
例えば、(1)では、通過領域だから「方程式の実数解条件に帰着」という定石は正しいですが、本設問では、半直線OPは常に原点Oを通るので、通過領域を図形的に把握することが容易であり、方程式の実数解条件を持ち出すまでもありません。これは「図を書く」という基本姿勢があれば回避できたはずです。そして、これらの基本姿勢があれば、ミスに気づきやすくなり、目標点に到達できたものと考えられます。
受験生全体の解答傾向は?
まず、少ないとはいえ第3問にほとんど手がつけられていない答案もありました。通過領域の問題は大学入試としては典型的であり、基本的な処理の仕方は東大受験生としては知らなくてはいけません。
しかし、ここで終わらないのが東大です。実際に再現答案では、(1)はできていても、(2)は方針が立たず手がついていない答案や、条件が不足している答案が目立ちました。この一歩を踏み出せるかどうかが、合否を分ける最大のポイントであり、本問では「普段の演習の姿勢」が大きく得点に結びついていると考えられます。
Z会が独自作成。この大問の採点基準はこちら!
大学から採点基準が公表されていない中、Z会では、実際の受験生の再現答案や得点開示データを毎年収集し、綿密に分析。長年の分析に基づいて作成した独自の「採点基準」で、本番に限りなく近い採点を可能にしています。
「2020年度入試 東大文系数学 第3問」の採点基準
配点 20点
(1)
- 境界となる直線 y=2x が導けて:5点
- 正しく通過領域が図示できて(境界条件も含む):5点
(2)
- 半直線OBとx軸の正の向きとのなす角の範囲が把握できて:4点
- 境界となる傾きが求められて:4点
- 答えを導くことができて:2点
一言コメント:
Z会で分析した結果、以上のように大まかに配点されている様子が見てとれました。
Z会の『過去問添削』で、東大対策を進めよう!
Z会では、特別講座『過去問添削』を開講中です。長年の分析に基づく正確な採点で現在の実力を正確に把握。そのうえで、あなたの答案に寄り添った適切なアドバイスにより、次の打ち手が明確になります。実戦力を効果的に高められる講座です。
Z会東大コース担当者からのメッセージ
数学に限ったことではありませんが、何らかの問題を解決しようとしたとき、自身の知っている知識や経験をフル活用して、方法を模索するところが第一歩です。とくに、誰も知らない最先端の研究をする場合は尚更であり、東大数学だけでなく、さまざまな大学の入試においても、その資質を試そうとしています。
入試が迫ってきている時期は難しい側面もありますが、普段の演習では、ぜひ、試行錯誤を楽しむ時間を少しでも設けてください。結果を求めることも大切ですが、たとえ結果が出なかったとしても、その経験が東大数学を解くときの経験となります。
受験勉強を通じて、考えることを楽しみながら、東大合格をめざしましょう。陰ながら、応援しています!!